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災害発生時こそパチンコホールの出番

北海道のパチンコホール「ひまわり」の対応を見て、とある原稿を思い出しました。

https://twitter.com/callaway__777/status/1037535513958264833

東日本大震災発生後に行われた、日本遊技関連事業協会(日遊協)の作文コンクールへ提出した原稿。賞の獲得は成りませんでしたが、今回の度重なる自然災害を見て、恥ずかしながら公開することにしました。

パチンコ業界団体に対して送った応募原稿なので、業界に対して我田引水になっている部分もあります。その点はどうぞご容赦ください。

また、応募原稿ゆえ写真やイラストがなく、読みにくい点をお詫びいたします。


1・常識を見失った日

「節電しても意味はありません。関東と関西は周波数が違うんですから」

「24時間の地震報道で辟易している人は多いのです。被災者より、従業員の給料、機械代の支払い、そして私の儲けの方が大事です」

「西日本で遊技場を経営しています。先ほど、切羽詰った顔をした若い社員が、明日以降ネオンを消してほしいと言いに来ました。私はこの社員に『ダメ社員』の烙印を押しました。青臭い奴は必要としていません。当社の社是は『何人も経営者目線で』ですから(笑)」

信じがたい意見だが、全て私のブログへ書き込まれたものである。3月13日、菅総理大臣、海江田経済産業大臣(いずれも当時)が、日本中に節電を呼びかけた夜、このようなセリフがホール経営者から飛び出していたのだ

そんなホールもある中、全日遊連は33億円を被災地へ送った。とりまとめた方々の苦労は並大抵ではなかったろう。金額面で十分誇れる内容となった。しかし、バッシングは続いた。パチンコ業界は感謝されなかったのである。

感謝されたくて義援金を送っているわけではない、と反論する人もいるだろう。それは正しい意見だ。無償の愛という言葉があるように、対価を求めない貢献は尊い。

しかし、バッシングされてしまうなら話は変わる。義援金の原資は日々の営業であり、バッシングにより顧客減少となったら、義援金どころではなくなるのだ。せめて、貢献しても叩かれない状態にしたい。


2・被災地のホールで何が起こっていたか

4月上旬。福島県南相馬市にあるホールの社長を訪ねた。当時の南相馬市原町区は屋内待避区域。街に人影は一切無い。ホール事務所を開け出迎えてくれた社長は、地震・津波・原発・風評の四重苦にあえぐ現状を語ってくれた。

業界関係者はおろか、自衛隊の緊急車両以外は誰も近づかない震災直後、彼は行動に出る。数時間かけて給油し、山を越え、水・食料を買い、店舗へ戻り、その物資を破格値で提供したのだ。原発から避難することもできたのに、彼は食料と共に戻った。

南相馬市の桜井市長が、「兵糧攻めにあっている」と、YoutubeでSOSを発したあの時期に、一軒のホールが、普段パチンコをしない人達の命を救っていたのである。

一方で、心ない人達に荒らされたホールもあった。津波の引いた翌日の、宮城県石巻市。地元の不良中学生は徒党を組みホールへ向かった。彼らはバールで自動ドアをこじ開け、店の売上だけでなく、お菓子やジュース、自動販売機内の現金を盗んだ。

南相馬の例は、地域を救うホールのあり方を。石巻の例は、犯罪を未然に防ぐ必要性を教えてくれている。震災発生時の防災と防犯。口で言うほど簡単ではないだろう。何よりコストがかかる。そこで、以下の方法を考えた。


3・分散備蓄

1.目的
震災発生時の防災・防犯に役立ち、近隣住民の命を救い、かつ費用負担の少ない方法で、地域社会へ貢献する。
2.今までの問題点
公的な避難施設となるためには、備蓄品目、備蓄量、トイレ、毛布など、自治体ごとに厳しい取り決めがあり、予算面から実行しにくい。
3.分散備蓄とは
各ホールが1品目だけ備蓄する。Aホールは水、Bホールはカロリーメイト、Cホールはポータブル発電機と携帯充電器、複合施設のDホールは毛布や寝袋といった具合だ。

食料品は、賞味期限前に一般景品として出せるため、在庫の組み替えのみで対応でき、追加費用は発生しない。発電機や毛布もそれほど高価ではなく、経費として落とせ、かつ年単位で長持ちするため費用負担は小さい。
4.事前準備
各ホールの備蓄品目と数量、賞味期限を組合が集計し、リスト化。各ホールへ配る。同時に、役場の防災化、消防本部などへも配っておく。
5.震災発生
社員、スタッフはホールへ向かう。関係者がいれば、上述したような不良中学生は強盗しにくいため、防犯につながる。集まってくる地域住民に対しては4のリストを元に「Aホールへ行けば水があります! 家が壊れた方はDホールへ!」と誘導できる。

また、店舗の自転車や自動車を使い、ホール間を移動して不足分の融通も可能だ。「電話が不通でも自動的に動き出す震災ネットワーク」となる。
6.補完機能
大規模な避難拠点は小中学校が多い。逆に、パチンコホールは学校のそばへ「建てられない」。つまり大規模防災拠点の隙間を埋める形で存在しているのだ。

特に郊外型ホールは丈夫な構造をしており、屋根があり、数多くの椅子があり、保管倉庫もある。

また、NEXCO東日本や中日本ではサービスエリアの防災拠点化を進めているが、立地特性上、インターチェンジ付近は手薄になる。パチンコホールは、インターチェンジ付近に林立しているではないか。

分散備蓄ネットワークにより、大規模拠点へたどり着くまでの中継地として、パチンコホールは機能できるのである。


4・私達「だから」できることがある

先日、仙台市役所、仙台市消防局、日銀仙台支店等を訪ね、分散備蓄案を話してみたところ、極めて好意的な反応を得た。

仙台市消防局・防災安全部の佐藤消防指令はこう語る。
「避難が長期化すると求められる物は変わります。アルファ米ではなく温かいご飯を。乾パンではなく甘いお菓子を。水ではなくお茶やジュースを。アレルギー対応食品なども必要とされます」

店舗間の距離で備蓄内容を変えたり、店の倉庫を開けられなかった場合に備えるなど、各種工夫は今後必要になるだろう。しかし、お菓子、ジュース、パックご飯。どれもパチンコホールの景品棚にある物ばかりではないか。発生直後の緊急食料は避難所へ任せるとしても、その後の「喜ばれる品」は十分提供できそうだ。

分散備蓄は、震災発生と同時に自動で動き出すネットワーク。大規模防災拠点の隙間を埋め、徒歩圏内に住む住民の命を守る。手間も費用も小さいため、社会団体への寄付と並列して行えるのも魅力だ。

東日本大震災から1年となる。バッシングはもうたくさんだ。震災が起きたらホールへ行けと言われるような、社会から必要とされるパチンコ業界へ生まれ変わってほしい。そのためならば、私も業界人として全力で協力したい。


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