見出し画像

「あなたが、必要よ」


どうしても本来の状態が思い出せなくて、泣いたよ

「今更」っていうくらい

愛するって

どんなことだったんだろうって

どうしても思い出せなくて



何が欲しいのか、あなたになにをしてほしいのか

いつまでたってもわからなくて

自分が何を望んでいるのかが

知りたかったの




.

写真を送って欲しいと言ったら送ってくれたじゃない

返事して欲しいって言ったら、返事してくれた



電話してほしいって

だだこねたら


嫌いな電話

かけてくれた





毎日

相手してくれた

忙しい合間に。



困らせるわたしに

「何を望んでるの?」

ってあなたが訊いたとき



わからなくて

本当にわからなくて

もっと戸惑った




いつか出張帰りの出発前にかけてくれた電話

飛行機の時間が来て


泣きじゃくるわたしに苛ついて

「もう切るよ」って怒った声



わたしは、ただ話を聴いて欲しかっただけだったんだけど

怒っているあなたを前に
ひとつも言葉にならなかった



悲しくて、ずっと混乱していて

ただ声を聴いて安心したかっただけなのに



あなたはずっと、怒っていて

怖かった



わたしは自分があなたに何を望んでいるのかわからなくて

混乱していて、



それを一緒に相談したかっただけなの

でも


わたしの中がぐちゃぐちゃのままで

わかるわけないわよね





わたしが話したいって言って

あなたが怒っていたのを見て


わたしは、


自分が不安に感じていることとか
混乱していること

嬉しいことや

幸せなことは


あなたにとって

どうでもいいんだな



興味がないことなんだなって

その時そう思った





いつまでたっても返事をしない私に困ったあなたは

なんども「切るよ」って言いながら切らなくて


空港のアナウンスが響くのが電話越しに聴こえた




あなたの声より大きな

日本人の人が話す英語の音混じり


わたしは、本当はちゃんと優しく


「大丈夫だから、行って

乗り遅れちゃうよ」って


言わなきゃいけなかったのに




喉が詰まって

胸が詰まって

泣くしかできなくて



焦って、早く行ってって思ってたけど

怒っているあなたを前に



ただどうしようもできなくて

なんども「行くよ」っていう低い声に

わたしは早く切らなきゃって

こう言った





「早く切って、行けばいいじゃない!

わたしのことなんてあなたにとって
どうでもいいんでしょ

早く電話を切って、

行けばいいじゃない...」




すごくいやだったでしょ?

あのね、あれはほんとは怒って大きな声で叫びたかったの

でも声にしてみたら



自分でびっくりするほど

震えて、涙声で頼りなくて

ぜんぜんスカッとしなくてかっこ悪くて恥ずかしかった



ますます混乱する私にあなたははっきり、


こう言ったわね




「どうでもいいと思ってたら

電話なんかかけないよ。」





わたしはそれを聞いて

あなたがどんなひとだったか思い出した



電話なんか本来かけるひとじゃないってこと

メールの返事だって

本当はしないってこと



それをずっと

わたしが望んだら

しようとしてくれた





.

このあいだの出来事のあとに

そしてピタリ


あなたからの連絡が途絶えて

いろんなことを想った




あなたの愛情表現や

わたしに対する精一杯の想いを

台無しにしてぶちこわしたのは自分だってわかってたの、ずっと




でもそれでもどうしてもやっぱり

何が欲しいのか、あなたになにをしてほしいのか

いつまでたってもわからなくて


何を望んでいるのか

わからなくて



もう一度

返事をしてくれたら満足なのかとか

電話をくれたら
それで気がすむのかとか


いつかみたいに

「好きって言って」ってわたしが言ったときだけ


無理やり

「好きだよ」って

言わせたら


わたしは幸せなのか?




いつも考えるんだけど

違うのね、

全然





今日、なんだかなにもかもがうまくいかなくて

自暴自棄の骨頂に達して

涙が溢れて

また床にうずくまってね





ひどいでしょ

もう何も、やるきがおこらないんだから



あなたとの関係が崩れた途端に
仕事も、ほかの全部もどうでもよくなって

大事な

大事なたおくんの

お誕生日なのに



ひとりも申し込みがこないの


ひとりもよ。




最高にかっこ悪いでしょ。




こんなださいわたしになんて、誰も見向きをするわけないこと

わかってる


あなたに寄りかかって

やるべきことをせずに、自暴自棄でいるようなひとを

誰も必要とするわけないもの




.

それでね


泣いていたら、タオくんが来て

「まま、どうしたの?」

っていうの



いつからか、喋るようになってね

いまはもう、たどたどしい喃語じゃなくって

本当に大人と同じように

わかった顔して



「まま、どうしたの?」って言うの



たおくん今日、お熱で保育園早退したんだよ。

熱があって、風邪ひいてるのに、

わたしがたおくんをよしよししないといけないのに



たおくんがわたしに

「まま、どうしたの?」って

なんども訊いてくるの




たおくんに、「ごめんね」って謝って

泣いていたらね



「だいじょうぶだよ」だって。

すごいでしょ。



「だいじょうぶ、ままこっちおいで」

って言うの



もう泣けて、

「まま、おいで。ててつないでこっちにおいで」って。



わたしたおくんに手をつないでもらって

リビングまで行ったよ



「おいすがないからもっておいで」って言われて

椅子を持って行って

たおくんの横に座って、



また、泣きながら

たおくんに話した



「まま、もう何もしたくないの」

「○○さんもいなくなっちゃったし、もうママのこといらないんだって

お仕事もだれもままのこといらないんだよ

ママ、意味ないの」



って



たおくん、

「だいじょうぶよ」って

「まま、こわくないよ」って言ってた



かっこいいでしょ?

まだ3歳になる前よ



続きをみるには

残り 2,263字

¥ 522

期間限定 PayPay支払いすると抽選でお得に!

いつも購読・ご購入・サポートどうもありがとうございます!