6-a 種火


種火という言葉がある。
その意味を知っているひとはおおいと思うけれど、種火という言葉ではなくて、ほんものの種火を見たことがある人はすくないとおもう。


日本の一般の家庭用の台所で、実際の「種火」というものをわたしはみたことがない。
種火がなんのためにあって、どんな様子をしていて、それと人がどんな風に関わり合って生きているか?


わたしがそれを肌で感じて過ごしたのは、20台半ばの頃に渡った、アメリカのバーモント州にある、小さなコミュニティファームだった。
 
わたしがアメリカに渡った当時は、文字通り規模の小さな家族経営のファームだったが、わたしがアメリカを発つころにはそこには常に何十人もが出入りする、大きなコミュニティになっていた。
 
台所は年々増築され、地域の食生活を担う役目のその場所には、業務用の5口くらいのガスコンロが横に並んでいて、いつも煌々と小さな種火が灯っていた。
 
 
種火というのは、文字通り、火の種となる火のことをいう。

日本の台所についている、ガスコンロのことを英語で、ストウブという。それが正式名称なのか通称なのか、そのコミュニティで使われていたことばなのかよくわからないけれど、そのストウブの火をかける中心に、直径1センチくらいの青白い火がいつもついたままになっている。

それは、ストウブのつまみをカチッと回して大きな火を燈して料理をして、使い終わってつまみをまた回して消すと、なぜか消えなかった。

消えることなくそれはずっと、ついていて、たとえばその上に洗いたての空の黒いダッチオーブンを置いたままにする。洗剤で洗わないとされる黒くて重たい鋳鉄のかたまりは、つかっていないときも、戸棚にしまわれることなくつねに油でツヤっと光っていて、ストウブの上に置いてある。

直に手をおくと、じわっといつも温まっており、いわゆる空焚きみたいな状態が保たれているのだ。


ただそれは、種火というだけあって、とても小さい、「準備中」の火のことであり、ストウブの仕組み上、その種火が消えると、一から火をつけるのにひと手間がかかるらしい。

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松永 まい

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NYでベジタリアン料理人〜スピリチュアルセラピスト。

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