見出し画像

「余はここにおるぞー!」Vketウォークで感じた本物のパラリアル

原宿のざわめきの中、私は一歩一歩を踏みしめる。しかし、私は一人ではない。遠く離れた場所から、共に原宿を歩くVRユーザー『シャムス』さんがいる。彼女はVRの世界にいるが、確かに「ここにいる」のだ。


Vketウォークとは?

「Vketウォーク」とは、2023年12月16日~17日に開催された「Vket 2023 Real in シブハラ」のイベントだ。
現実の人間がモニターを背負い、そのモニターにバーチャルの人を映し、バーチャル側からの指示で街を歩いてもらうというもの。

Vketウォーク装着時の様子

現実とバーチャルが協力して作り上げる体験

私はVketウォークの一員として、『シャムス』さんという名のVRユーザーと一緒に歩く。初めてお会いする方だったが、明るくて気さくな、とてもかわいいケモの方だった。

当初、私は自分自身の存在を消し去って、VR空間の『シャムス』さんにフォーカスが当たるよう振舞おうとした。しかし実際に交流をしてみると、現実にしか出来ない役割があることに気付く。

交流してくださった方々

例えば、『シャムス』さんが実在するユーザーであることなど、パッと見で分かりにくいことは、担ぎ手からフォローしてあげた方が反応が良い。
興味があるけど遠巻きに見ている人がいれば、少しでも『シャムス』さんと交流してもらえるように、積極的に声をかけるようにしていった。

面白いお店があったら積極的に情報共有!

また、今歩いている場所がどんな場所か、周囲にどんなお店があるのか、積極的にバーチャル側に伝えるように心がけると、カメラの映像だけでは伝わり切らない原宿の空気感を共有することが出来る。

通信トラブル発生!!

そうこうしているうちに、原宿の大通りに出た。
たくさんの人と交流をするために、人の多い場所に来てみたわけだが、ここでトラブルが発生する。通信が混雑したことで一時的に回線が切断されてしまったのだ。

ReginaArcadiaさんとのお別れ

すぐに復帰して『シャムス』さんとの音声通話はできるものの、画面が復旧しないため、スタッフと相談して拠点に戻ることにした。そのため、それまで一緒に行動していた『ReginaArcadia』さんとはお別れし、それぞれ単独行動となった。

トラブルを経て紡がれる一体感

ここまで、『シャムス』さんと原宿の人が交流する体験を作ることに必死だったが、私が抱えているのはただの真っ黒な画面になってしまった。

だが、カメラの映像と音声は『シャムス』さんに伝わっており、スピーカーを通じて会話をすることが出来る。急いで拠点に戻る中、2人でいろいろな話をした。

真っ暗な画面を背負うただの不審者

『シャムス』さんが今日のイベントを楽しみ過ぎて前日寝れなかったこと、翌日私が原宿で展示すること、Vketの他イベントやコラボメニューのこと、途中のオシャカフェ行列のこと、見かけた風景のことなどなど・・・。

その後、無事に拠点に戻り画面は復活したため、またVketウォークを続けることが出来たが、トラブルという体験を共有したことによって、イベントを一緒に作り上げる仲間として一体感が生まれたように思う。

余はAIなどではない!余は、ここにおるぞー!

復活した後も二人で話しながら原宿を歩き回り、外国人やカップル、Vket参加者など様々な人と交流することが出来た。
その中で、強く印象に残っているシーンがある。

すれ違った歩行者が「あれってAI?」と呟いた言葉を聞いて、『シャムス』さんが
「余はAIなどではない!余は、ここにおるぞー!」
と明るく叫んでいた。

バーチャルだが原宿に存在している

多分、呟いた歩行者も『シャムス』さんにも他意はないと思う。けれど、ここまで大勢の人とバーチャルの垣根を越えて交流してきた中で自然に発せられた存在証明の一言だと私は感じた。

私はこの言葉を聞いたときに、心からVketウォークに参加してよかったと感じた。

「そこにいる」が作り出すリアリティ

私はXRにおいて一番大切なことは、映像の綺麗さやインターフェース(2D、3D、VR)などではなく、体験するユーザーの主観だと考えている。つまり、自分や相手が「そこにいる」実感である。
そういった意味で、今回のVketウォークは現実の世界で互いの存在を確認し合う、新しい形の共有体験だった。

この感覚は、単に視覚や聴覚によるものではない。共有される空間、時間、感情。それらが組み合わさり、互いの存在を肯定する。Vketウォークは、私たちに「共にいる」ということが物理的な距離によってのみ定義されないことを教えてくれた。

これこそが、本物のパラリアルだと私は思う。
本当に素晴らしい経験であった。

※参考:キズナアイやkzも出演したSECRET SKY MUSIC FESTIVAL 2020
1次元(線)でも大勢の人と「そこにいる」を共有できる私の原体験

私がこれからやりたい事

実は私も1年前にVketウォークに近い取り組みをハッカソンにて作成したことがある。新宿の街中に存在する広告サイネージをバーチャルと現実をつなぐポータルにするという作品である。

目指したのは、常設による空間のポータル化だが、常設を想定すると自然な交流が生まれにくく、様々な工夫が必要だとわかった。Vketウォークの経験によって、人が介在することの重要性に気付かされたので、自分なりに工夫して再挑戦してみたい。

最後に楽しかった感想など

ついXRについて語ってしまったが、Vketウォーク純粋に楽しかった!

拠点に戻るときに『シャムス』さんと2人で「デートみたいだったね」と話して笑いあったのが印象的で、最初はただの重たいディスプレイだと思っていたものが、終わるころには大切なものを抱えている感覚になったのは新鮮だった。

バーチャルとリアルという違いがあるからこそ、お互いがどんな状況かを思い遣りながら行動できたのだと思う。

拠点での再会、バーチャルの2人が現実空間での対面

楽しかったから、今度はバーチャル側も体験してみたい。
あとは、日本一周徒歩Vketウォークとかも実現出来たら面白そう。

バーチャルの人が行きたいところにVketウォークで行って一緒に思い出作る旅番組とかに発展出来たら年中Vketウォークが出来る。
どうですかHIKKYさん??私担ぎますよ!笑

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?