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【97回】レジ打ちで価格の読み上げは「安心」のためにある(190322)

学生時代、バイトで、スーパーのレジをしていた。
「1つ1つの商品の値段を必ず読み上げること」
そう教わった。
確かに、お客様がいらっしゃって、商品を打つ時、「100円、198円」と読み上げて、「3,428円になります」というように、請求額を伝えた。

ところで、最近。スーパーのレジでは、「商品の値段を読み上げない」店員を少なからず見かけるようになった。特に、若者は、読み上げない。

読み上げない理由を考える。

1つ目。
読み上げるのが恥ずかしい。商品の値段を言いながら打つのは独り言である。慣れないと恥ずかしい。

2つ目。
「1つ1つの商品の値段を必ず読み上げること」を、今の店員は、教わっていないのか。しかし、よく顔を見かける勤務年数が長い店員は、みんな「値段を読み上げている」のだ。

3つ目。
「読み上げるのは無駄」と解釈し、単に読み上げることをサボっている。つまり、「読み上げる意味」を考えていない。


レジの人に値段を読み上げてもらってほしい一人である。なぜ読み上げてほしいか。「安心」のためなのだ。

「100円、198円」
「200円が5点」
このように読み上げてくれることで、僕は何をしているか。
大体の商品の値段と、購入個数を聴覚で確認しているのである。
例えば、ポテトチップが98円だったとしよう。レジで打ったとき、138円と読み上げられた。ならば、「あれ、ポテチ98円だったと思ったけどな」と疑問を持つ。そのうえで、レジスタッフに確認、または購入後レシートを見て、サービスカウンターに聞くことができる。
読み上げがなければ、疑問を持つことができない。
購入後、即、レシートを確認するクセがあればいいが、忘れているときもある。
ゆえに、客としての自分が、安心して購入するために、「読み上げ」は必要な聴覚刺激なのである。

では、読み上げがないときはどうしているか。実は不安なのだ。「あれー、きちんと提示された金額で購入できているのだろうか」「あれー、個数は大丈夫なの」という不安。
いやいやいや。読み上げがなくても、客側にきちんと、商品をスキャンしたときに、モニターに価格が出ているじゃないですか。それを見たらどうです?
なるほど、視覚情報。モニター確認が得意な人はそれでいい。
しかし、僕はモニターを見ていない。どこを見ているか。
レジスタッフが商品をスキャンしているところを見ている。かごの中に商品が残っていないか、今何をスキャンしているかを見ている。その上で、聴覚で、価格を確認しているのである。

もちろん、逐一、商品の正式な価格など覚えていない。ただ、おおよその価格が頭に入っている。だからこそ、「あれー、そんな値段だったっけー」という確認をすることができるのだ。

まさに「安心」なのだ。


読み上げは、レジスタッフ側にとっても「安心」がある。
何をどれだけスキャンしたかを、モニターの価格だけではなく、音声で、視覚と聴覚の両方の刺激で確認することができる。
すると、脳の中で情報を強化することになる。
読み上げることで、「よし、この商品、スキャンOK」と確認作業をしているのだ。ミス防止の役割があるのだ。


もしも、スキャンの間違いがあったとする。読み上げないことで、間違いが後で発見された。サービスカウンターへ行く。その対応でいいではないか、という意見があるかもしれない。
もしも、間違いが多かったら?サービスカウンターで間違いを指摘する客が増えたら?
そもそも、レジでのスキャン間違いの責任は、店長やレジチーフだけではない。レジスタッフの対応にある。
ならば、レジスタッフが対応すべきではないか?どこが間違っていたのか、スキャンした本人が一番探しやすいはずだ。

読み上げについて、もうひとつ。
読み上げは、客とレジスタッフが安心するために行われる。
大げさかもしれないが、実は、読み上げは、客とレジスタッフのコミュニケーションなのではないか。
レジスタッフから送られてくる情報を受けて、客は安心し、購入することができる。

ただ、忙しい人が多いのも事実。もしや、読み上げが「うっとうしい」と思う人がいるかもしれない。
「読み上げなくてもいいから、さっさとやってくれ」と言う人がいる…のだろうか。わからないけれども、そういう人がいたら、「ミス防止のために読み上げておりました。了解しました」と言いながら、さっさとスキャンしてしまっていいだろうな。自分の経験では、2年ほどレジスタッフであったが、「読み上げやめてね」という苦情は聞かなかった。

読み上げは、レジでは行われてきたこと。
読み上げの意味を考えてみよう。
少なくとも、聴覚優位の僕にとっては、安心して買い物をするための、ありがたい情報源である。
あくまで僕にとってはだけど。必要なのです。頼みます。読み上げてください。

今度、読み上げてくれないレジスタッフに当たったら、「耳から値段を確認しているので、読み上げていただけますか」とお願いしてみるかな。