見出し画像

憂鬱と好奇心のあいだ(胃カメラ体験記)

胃カメラ…正確には「上部消化管内視鏡検査」をこの歳になって初めて受けたので、感想とかの覚え書きです。経験済みの方も多いかもしれないけれども、私は私でこの新鮮な興奮を誰かに伝えずにはいられない。

検査を受けることになった顛末

昨年から喉の調子がいまいち良くなくて、内科・耳鼻咽喉科など複数の病院を受診していました。具体的には、痰が絡むような不快感がずっとあるというような症状で、咳が出たりとか食事がしにくいというようなこともなく、気にしようとすれば気になる程度のものでした。

去痰薬、うがい薬、アレルギーを抑える薬、漢方薬等々、処方されたものをひと通り試しても一向に効果がなく、とはいえ症状が軽微で緊急性も感じなかったので、なんとなくそのままになっていました。ひとつ引っかかる点として、時期を同じくして胃もたれが起こりやすくなったと感じるようになったこと。逆流性食道炎なども疑われるのはと思い、機会があれば噂に聞く胃カメラなどの検査してみるのもいいかなと。

なにしろ自営業なもので、会社で定められた定期健康診断というものがない。市健保の「特定健康診査」も40歳からなのでまだ早く、健康診断も自費で受けることになるわけですが、その通常メニューにも基本的に胃カメラはない。

そんな折、地元の歩いて行ける距離に、いつの間にか新しい内科・消化器内科の病院が開院していたことを知りました。若くて腕のいい先生であるとのクチコミや、内視鏡検査の経験が豊富なことが売りみたいな説明をWebサイトで読んで、喉の件の相談もしてみたいし、まずは行ってみることにしました。

で、行ってみるとこれが非常に丁寧に、ロジカルに説明をしてくださるタイプの自分に合った先生で(なぜそう診断したか、どういう可能性が考えられてそれに対してどういう治療を行う方針かを素人にも分かるように説明してくれる先生が好き)、どうあれ検査してみましょうということで、すぐに翌週の内視鏡検査を予約しました。話が早い。検査に必要な事前の採血のみ行って、その日は帰宅。料金は初診料・血液検査諸々で3割負担で1,920円。

検査を受けるまで

とはいえ噂に聞く胃カメラですよ。口から、もしくは鼻から管を通されて、直接胃の奥までグリグリされて写真を撮られまくるなんていうのは、想像するだにウェーとなる。

ただ、以前耳鼻科でファイバースコープによる検査は経験済みだったので、その延長だろうなというのはなんとなく予測できていました。そのときはやはり鼻孔からカメラのついたファイバーを通されて、喉の奥を通って声帯に至るまでの鮮明なリアルタイム動画を見せられて、たいへんなカルチャーショックを受けた。それも去年とかの話。

でまあ、今回も事前説明では同様の鼻からの検査とのことだったので、言うほどナーバスになることもなく、半分くらいは好奇心があって、とはいえ検査は検査だしなにか見つかったらやだなあというような憂鬱もあって、複雑な心境の数日を過ごしました。

検査の前日、夜9時以降は原則飲食禁止、検査当日ももちろん朝食はとらずに少量の水くらいは飲んでもOKという条件。さらに事前に渡された説明同意書に署名しておく。これでもう気分はまな板の上です。

検査を受けてみて

いやー、胃に管を通されるってああいう感じなんですね。これは確かに経験してみないとわからない。めちゃくちゃ解像度の高いカラーの自分の内臓の映像を見せられて、内心ものすごくテンションが上がってしまった。

言うほど検査中の辛さはなかったです。個人差や検査機器の違いや医師の経験の差もあるのだろうけど、全然、脅かされるほどじゃなかった。まず最初に胃の中の泡を消す液体の薬を紙コップで飲み干して、体制を変えたりして胃に浸透させて5分ほど、次に鼻腔内に噴霧するタイプの麻酔薬を5~10分くらいの時間を空けて3回に分けてやってもらったら準備は完了。

左半身を下にして横になり、鼻からスルスルと管を通される。お医者さんに指示されるままに息を止めたり吐いたりすると、それに連動してモニターのなかの自分の穴が閉じたり開いたりする…。まあ、ここまでは以前耳鼻科で受けたファイバースコープと同じ。

いよいよ食道のなかをカメラが通るときには、うわ、本当に行くんだね、行ったー!みたいな謎の感動があり、同時に映像のほうも狭い管をかき分けるようにしてキューッと進んでいく。そして食道と胃は壁の色がはっきりと分かれており、ここから胃ですよ~みたいなことを説明されながらバシバシとシャッターを切っていく。

なんというかね、自分の内臓をリアルタイムで自分で観察する体験ってやっぱちょっとだけ価値観が変わる感じがする。普段私の自我はどこか不動のところで自分の身体をすべて把握しているという感覚はありながらも、しかし実際は確かに牛や豚のモツと同じような臓器で構成されており、しかも散々慣れ親しんでいるはずのそれらとは映像では初対面なわけです。

でね、内視鏡のライトで照らされる赤みがかった肉壁はグロいんだけど、めちゃくちゃ美しいなと思いました(自分の胃をこんなふうに褒めるのも変な話だ)。しわしわの洞窟を満たす半透明の胃液のなかに、まるで潜水するようにゴボゴボと潜って行くとその先は十二指腸、戻って、通ってきた胃の入り口のほうを振り返って一枚(スコープ自身の管が見える)、胃液を一度吸い出してまた何枚か撮る。

こんなことされている最中も、特段の痛みや気持ち悪さはなく、強いて言えば自分の意志に反してげっぷが出るのが恥ずかしいというくらい。時間にして10分に満たない検査ですが、濃密な体験をしたなあという感覚が残りました。

検査の結果

結論から言って、胃は全然何ともなかった。食道炎も潰瘍の類もピロリ菌もなさそうで、健康そのもの。唯一、食道と胃の境界の状態から言って食道裂孔ヘルニアであるとのことで、まれに感じる胸焼けはそのためのようです。

なので、そもそもの喉の不調の原因は少なくとも胃にはなさそうで、それが明確になっただけでも検査してもらった甲斐はあった。この日の料金も3,700円で、当初思っていたほどの費用はかからなかった。検査の負担の軽さも含めて、意外なほどにこんなもんか~という感じ。

ともあれ、よかった。何もなかったからこそ言えることだけど、新鮮な体験をしました。この記事のヘッダーの写真は、病院に隣接するスタバでとった朝食ですが、ほんとはSNS用に胃の高解像度写真もらいたかった。チョーキレイだったのほんと。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?