【ドラマ】Marvel パニッシャー

昨年11月に配信が始まったNetflixオリジナル連続ドラマ、『Marvel パニッシャー』全13回をようやく全話観ました。超絶おもしろかった!歴史ある同名のアメコミ作品の何度目かの映像化とのことですが、原作知識がまったくない私でも、独立した作品として楽しめました。こんなにハマると思わなかった。

先に書いておくと、『ニンジャスレイヤー』と共通するテーマがあまりにも多いので、Netflixに入ってるニンジャヘッズは絶対観てください!

この力強い予告ですよ。もともと評判がいいのは聞いていて、そこへ何人かのニンジャヘッズのかたが話題にしていたのが気になって観始めたのが昨年の暮れのこと。1話50分程度のドラマ形式なので、手が空いたときに自分のペースで進めていって、なんだかんだ一ヶ月くらいかけて完走しました。

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全てを奪われた男の壮絶な復讐譚

ドラマは、元海兵隊員フランク・キャッスルが無慈悲な復讐者パニッシャーとして、妻子を殺した憎き敵に復讐を果たした6ヶ月後からスタートします。死を装い、偽名を使ってビル解体工として再出発した彼はしかし、過去の強烈なトラウマから解放されることはなく、やり場のない怒りをどうすることもできずに、まるで亡霊のように無心にハンマーを振るい続ける日々を送る。

ある夜、いつもの悪夢を振り払うため解体工事現場に居たフランクは、とあるささいなリンチ事件を目撃する。弱者を踏みにじる理不尽な暴力!トラウマを克服するため抑えようとしていた闘争心に火が付いてしまった彼は、咄嗟に行動を起こす。ところが、オーバーキルとさえ言えるその行動は思わぬ結果を招き、封印された真実…己が復讐を果たすべき真の敵へとフランクを導く…!

このように、まずツカミとしての第1話が非常にコンパクトで力強く、一気に引き込まれました。2話以降はここから意外なスケールの話に発展し、過去のエピソードと並行して展開するという巧みな構成を交えつつ、すべてを奪われた男の復讐劇へと発展します。そして連ドラとして重要なのですが、この話は13話でキレイに完結する。「シーズン2へ続く」みたいなダラダラした終わり方にならず、すべての伏線を回収して納得できる形でズバッと終わるのです。

なお、物語の性質上、暴力表現がかなりあります。銃撃戦も刃物も拷問シーンもあるし、血がめちゃくちゃ出る。でもそれらは本作に必要な表現です。

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現代のアメリカがリアルに抱える問題に向き合う

アメコミ作品としての「パニッシャー」の原作の初出は1970年代とのことですが、本作の舞台設定は現代のアメリカ。フランク・キャッスルはアフガニスタン帰還兵で、カンダハールで起きたという米兵による架空の捕虜暴行事件がすべての因縁のはじまりとなるというのは、ドラマオリジナルの設定です。

退役軍人のPTSD問題も本作の大きなテーマのひとつ。特に、ルイスという若い青年が抱える苦悩は異様なリアリティをもって描かれ、やがては「アメリカ国内で白人のテロリストが発生する可能性」の緻密なシミュレーションにもなっていくのですが、その苦悩が主人公フランクの抱えるPTSDと随所でオーバーラップするのです。

最終話の最後の最後のフランクのセリフが印象的でした。もちろんここでは伏せますが、この一言ですべてが繋がり、ここからすべてが始まるというような一言。もっと言えば本作『Marvel パニッシャー』とは、フランクがこのセリフを言えるようになるまでの過酷な戦いの記録そのものなのだと思います。

また、作中では、無知でウソつきの典型的な愛国主義者も、反対に美辞麗句ばかり並べる空虚なリベラル(銃規制論者の民主党議員)も、等しく批判の対象になっている。そのなかで、超法規的存在である私刑執行人=パニッシャーの存在がどのような形でなら許されるのか…あるいは、許されないのか。このあたり、現代ならではの切実な問題としてうまく表現されていると感じました。

『ニンジャスレイヤー』と共通するテーマ

ところで、ニンジャヘッズとしては、何と言ってもニンジャスレイヤーとの共通点に触れないわけにはいきません。第1話からして、復讐を果たし終え抜け殻になった男の話なわけですよ。まさしく第3部冒頭のフジキドです。

というか元を正すと、そもそも原作『パニッシャー』については、ニンジャスレイヤー原作者の片割れであるモーゼズ=サンへのインタビュー「インタビュー・ウィズ・ニンジャ」(記事の初出は1998年)において、アメコミ文脈における"復讐型ヒーロー"の代表として触れられています。

また検索したところ、ニンジャスレイヤーとパニッシャーの類似については、既に2011年にhatikaduki=サンが指摘なさっていました(イヤーッ!実際傑作、「ニンジャスレイヤー」!! - ディドルディドル、猫とバイオリン)。妻子を殺された孤独な私刑執行人という立場において、フジキド・ケンジとフランク・キャッスルの間には確かに共通点が多いのですね。

加えてドラマ版の本作では、それにとどまらず、更にいくつか共通するモチーフを見出すことができます。

テーマに関連する側面でいうと、秩序に相対する独自の裁きを行使する存在として"私刑執行人"と"テロリスト"はどう違うのか?、というモチーフ。『Marvel パニッシャー』でフランクとルイスの対比を通して示されたこの課題は、『ニンジャスレイヤー』第3部後半のアマクダリとの戦いにおいて、繰り返し提示されるテーマでもあります。

ルイスに関して言うと、ニンジャキラーことセイジのキャラクター造形とも重なるところがある。パニッシャーにシンパシーを抱くルイスはしかし、セイジと同じように彼にとっての"敵"を見誤り、無実の人々を巻き込むことに思いの至らない卑劣なテロリストに堕してしまいます。対して、フジキドやフランクには弱者・暴力によって虐げられる者への共感が残っており、そこが両者の明暗を分ける。

死者との向き合いかたについても、両作品では似ているところがありました。折に触れ、亡き妻子の写真をもとに真の敵への憎悪を鍛え直すフジキドとフランク。ともに"死者"として闇に潜んでいた彼らは、ついには握りつぶされんとしていた真実を暴露し、宿敵の悪行を世界に知らしめるに至り、逆に大々的に報道され指名手配の対象となってしまう。クライマックスが、(数多くの違いはあるにせよ大筋で)本当にニンジャスレイヤー第3部のシチュエーションと被るのです。「オハカ・エピタフ」とパニッシャー最終話タイトル「メメント・モリ」とか、もう完全に完全ですよね。

キャラクター関連でいうと、油断ならないバディの存在も似ています。フランク・キャッスルの共闘相手は目的を同じくする髭モジャのヘタレハッカー「マイクロ」で、彼のキャラクターはニンジャスレイヤーでいうとナンシー=サンというよりもむしろ第4部のタキに似ています。特にAoM初期のマスラダとタキの、決して慣れ合わないピリピリした関係性。フランクを監視し自分の思う通りに利用しようとしていたマイクロがあっけなく主導権を握られ、速攻で利用される立場になる第2話は超おもしろかった。もちろん、そこから少しずつ信頼関係を築く過程もね。バディものの楽しさが詰まっています。

一方で、ヴィランのビリー・ルッソはかなりフジオ・カタクラですね。美形で無慈悲なリアリストでおまけに孤児!主人公との関係性はかなり異なるものの、クライマックスはだいぶダークニンジャでした。

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にしても、フランク・キャッスルの何がかっこいいって、何ら変身ヒーローのようなスーパーパワーを持たないにも関わらず、鋼の意志と決断的なカラテで、いつだって最短ルートでクソ野郎をボコボコにすること。仕事が速い!

本作にはたくさんのクソ野郎が登場しますが、彼らには必ず、それに相応しい末路が用意されています。パニッシャーが出て殺す!フランク・キャッスルは徹底的にやる。この不動の信頼感が、徹頭徹尾シリアスなドラマながらも最高にスカッとするところです。モヤモヤが一切ない。

フランクは生身の人間なので当然返り討ちに合うこともあり、いつもズタボロの血だらけ。己の目的のために無関係な兵士を殺すことにも苦悩する。ましてや過去の過ち、トラウマは消えることはない。そんな孤独な戦いを続け、復讐をやり遂げたとして、そのあと、フランクは彼の人生を取り戻すことができるのか…?

フランクは答えを見つけ出す。見届ける価値はありました。

Marvel パニッシャー | Netflix (ネットフリックス) 公式サイト https://www.netflix.com/jp/title/80117498

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