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こんまりさん

しばらく前から、たまにNetflixの"Tidying Up with Marie Kondo"を観ている。近藤麻理恵さんによるお片付け番組だ。これ、意外におもしろい。思っていた感じのと全然違った。本兌さんがDHTマガジンのこの記事(「スパークジョイ|ダイハードテイルズ」)で仰っているように、実際に観てみれば確かになるほどと思わせるところがあったのだ。

まず『KonMari ~人生がときめく片づけの魔法~』っていう邦題が良くないと思うんですよね。わたしなんかだと、またぞろ意識高い外国文化かぶれのセレブな感じの人がキラキラしたラディカルな価値観を押し付けてくるブルシットなやつでしょう、とか思ってしまう。何度もレコメンドに出てくるけど、こんなの絶対観ない! まで思っていた。

かわいい変な日本人

じゃあなんで観始めたかというと、大好きでYouTubeチャンネルを購読しているCBSのスティーブン・コルベアの"The Late Show"にゲストで出ていたのです。この時点でこの方のことはまったく知らなかった。

動画を見てみてわかるのは、すごい変わってるんですよこの方。日本人が見ても「変な人!」と思うくらいなので、アメリカ人からしたら相当ショッキングだし、エキゾチックなのだと思う。床に手をついてお家に感謝するくだりとか、えーって感じなんですよ。スティーブン・コルベアは、この変わり者の日本人女性に対してジョークを交えながらも終始リスペクトを保ちジェントルに対応しており、それだけでも好感度が上がる。

でもねこの近藤麻理恵さん、ひとつひとつの所作がとっても美しいのです。ちょっとオーバーアクションではあるんだけど、それが作ってる感じじゃなくてわりと"素"のキュートな品の良さで、なんというか、こんな日本人が外国で評判ならけっこういいじゃん、嬉しいじゃんと思うのだ。

なので、こんなかわいい変な日本人がやっているのは一体どんな番組なのかと気になって、Netflixのシリーズも観始めた。と言ってもまだ全部観たわけじゃなくて、今のところ飛び飛びで3話まで。

観ていてストレスがない!

番組は、いわゆるリアリティショウの一種。片付けができずに途方に暮れている様々なタイプのアメリカ人のご家庭に、近藤麻理恵さんと通訳の飯田さんが飛び込んでいって、色々と片づけに関する実践的なアドバイスをする。カメラは一ヶ月以上にわたってその家族の片づけ作業に密着し、最終的にこんなにキレイになりましたよというのをビフォア・アフターで見せる、というもの。そう、2,3日ちょっと掃除にトライしてみるとかじゃなくて、リアルに40日間とかかけて、家のなかの部屋という部屋、棚という棚を片付けるガチのやつなのです。

登場する家族は、それぞれに呆れるほど片づけができない人たち…そもそも片づけの概念が分からなくてお手伝いさんを雇って解決している奥さんだとか、視聴者が観てて「うちはここまでひどくない」と思うような人たち! なんだけども、共通しているのはみんな初めから近藤麻理恵さんの(著書の)ファンで、異文化に出会う驚きはあれど、意見の衝突みたいなものがまったくない。当の麻理恵さんはなんだかずっとニコニコしているし、出てくる家族もみんな幸せそうで、ストレスなくぼーっと観れるのだ。

何より、自分が手を動かしたり頭を使うことなく、他人の家がテキパキ片付いていくのって、それだけでまあまあのカタルシスありますよ。

普通のことを言っている

意外だったのは、こんまりさんが番組の端々で解説する片付けのメソッドというのは、日本人からしたらすっごい普通のことなのです。子供のころから日常的に教わってきたようなこと。こういうのは全部捨てろとか、非人間的なまでのミニマルさを強要するみたいな極端な思想では全然なかった。

例えば、衣類だったら衣類、持っているものを全部一か所に集めて、手に取ってみてときめくものとそうでないものを分け、持っておくものは小さく畳んで縦に並べて詰める…という、言ってしまえばそれだけ。なーんだ、みたいなことなんですね。作業が停滞するから思い出品は必ず最後に手をつける、とか、あ~そうだよねみたいなことも出てくる。

わたしは片づけ自体は嫌いではないけれど、苦手だ。まず好きなモノを集めてしまうというオタクの悲しい習性があり、かつ、ある程度のケオスが自分にとってはかえって好ましい、みたいな、見かけよりも生活感を優先してしまいがちなところがある。そしてあらゆるものに愛着が発生してしまうので、なにしろ捨てられない。かわいそうになってしまう。

そんなだから、捨てると決めたものを手放すときは感謝の言葉をかける、みたいな無生物を生物に見立てた一見突飛な物言いも、精神的にわかる。共感する。それに、そういうエモな部分がアメリカ人にも伝わるのが(もちろんテレビ番組なわけだし、演出上の脚色は大いにあるにしても)、なんだか嬉しくなってしまうんですね。

スパークジョイ

それにしても、近藤さんがほとんど日本語で話しているのに対して、当意即妙にニュアンスを伝えていると思しき通訳の飯田さんが只者ではない感じがめちゃくちゃ出ている。スティーブン・コルベアの番組のコメントでもこの人はヤバイみたいなこと言われている。

近藤さんの仰ることのなかでなるほどと思ったのは、ときめくかときめかないかを選別するセンス…感覚の鋭さは、数をこなすことによって磨かれていくってこと。そうそう、何につけてもそうだと思う。スパークジョイ、磨いていきたいよね。


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