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「HMC8」の選曲覚え書き

2019年5月18日のニンジャヘッズクラブイベント「HMC8」@秋葉原MOGRAには、同志ノロワレ=サン、ズールー=サン、チャブ=サンとともに4人でバック・トゥ・バック形式でDJするという通称「魔の3時間」枠で出演しました。この企画は、オファーと同時にオーガナイザーのbetty=サンより提案されたアイデアで、計8回にわたるHMCのなかでも初めてという野心的な試みでありました。さすがのチャレンジャーだ。

ブース内のチャブ・マネジメント=サン

4人でなにをやっていたの?

とはいえ、当初提示された条件は「4人で3時間使って何かやってみてください」というものだけで、具体的に何をするかは決まっていませんでした。なので、西荻窪オールドアロウで行われたスタッフ飲み会兼打ち合わせのなかでわたしが提案したのが「ひとり3曲交代で繋いでいく」というルール。

これは急に思いついたわけではなくて、以前自分が企画したイベントで、まさにこの通り「3人が3曲交代で繋いでいくこと」とコンセプトとした『R3LAYTIONS(リレーションズ)』と題するパーティーをやっていたことに由来します。

通常、DJにおけるバック・トゥ・バックという形式では1曲交代で繋いでいくことが多いわけですが、敢えて3曲ずつかけるということで何か変わるかというと、まず、DJの一番の腕の見せ所であるところの曲と曲が混ざる部分を聴かせることができる。そして、3曲の猶予があれば前のDJの選曲を受けて発展させることも、ぐるっと方向を変えることもできる。1曲ずつかけるよりも、明らかに個性を出すことができるんですね。そのことによる化学反応も期待できるし、二手・三手先の読み合いのようなショーギめいた戦略性も出てくる。もちろん、聴いている人もおもしろいはずだと思って。

セッティングとしては、わたしとズールー=サンがCDJ、ノロワレ=サンとチャブ=サンがPCDJ各1系統だったので、ミキサーの4チャンネルにそれぞれ割り当てるような感じで特に問題なくいけました。わたしのDJの準備もUSBメモリ1本だけで、近ごろは本当に楽になりましたね。昔だったら100枚近いレコードを箱に詰めて重いカート引いて行かなければならないところだった。

ノロワレ=サン

事前に(といってもイベント前日にグループDMで)順番だけは決めていました。ズールー=サン→チャブ=サン→R-9→ノロワレ=サンの順。それ以外は、どこで何をかけるとか、どういう流れにするとかもまったく打ち合わせていなくて、完全即興セッションの3時間でした。

結果は当日聴いていただいた通りで、プレイヤー側が言うのもなんですが、なかなか面白い感じでまとまったんじゃないかと思います。端正なミックスではないかもしれないけれど、あの日あの瞬間の空気とか、さらに言えば次に待望のゲストライブ「ザ・リーサルウェポンズ」さんを控える異様なテンションを反映した、あのとき限りの選曲になりました。打ち上げなどで、好意的なご感想をいただけてとっても嬉しかったです。

せっかくなので、3時間で計5周回ってきた自分のターンのなかでどんな曲を選んだかを振り返りつつ、裏話を書いてみたいと思います。枠で囲った楽曲リストは、太字の部分が曲名です。

【ターン1】

1. Anna Kaufen "Who Carez"
2. The Groovelab "Uncut Funk (part 6)"
3. "ローシ・ニンジャ(R-9's HMC3 Remix)"

3時間の出だし、どんなスタートになるのかと戦々恐々としていたのですが、意外と手堅く渋いテクノの流れで始まりました。直前のチャブ=サンの選曲でちょっと跳ねたファンキーな感じに変わったので、Akufenの昔の変名プロジェクトのやつが親しみやすくていいかなと思って選んでみました。

そこからパーカッシブなファンキー系テクノに繋いだら、うまくノロワレ=サンの得意分野に受け渡せるかなと思い、HMCでは何度もかけているドラゴン・ドージョーネタの自作マッシュアップへ。4人のセッションが楽しすぎてニンジャ要素を見失わないように、自分のターンでは「ちょこちょこニンジャに戻す」みたいなことは一応意識していました。

【ターン2】

1. "ラブ王侯"
2. Johan Agebjörn "Mega Man II"
3. 999999999 "X0001000X"

2巡め。ここまでみんな上手くて、流れはスムースだったのですが、けっこう渋めのシリアスな選曲に傾いている気がしたので、あえて左に急ハンドルを切ってみました。ずっとHMCで爆音で『ラブ王侯』聴きたいと思ってたんですよね…。

そのあと、レトロ歌謡つながりでロックマン2ネタをかけました。いわゆる「おっくせんまん」として知られるワイリーステージの曲ですが、このリミックスはそれとはおそらく全然関係ない文脈で出てきた海外発の作品です。原曲をすごく尊重したアレンジで、ほんとにメガマン好きなんだなみたいなのが伝わってくる。

そこからまた一応ちゃんとテクノ路線に戻してから次に渡そうと思って、繋ぎやすそうな派手めのアシッドをかけました。わたしこの曲めっちゃ好きでいつもかけちゃうな。聴いてると脳がぐにゃぐにゃに溶ける。

【ターン3】

1. PBR Streetgang "Downstroke (Deetron Remix)"
2. David Roiseux "I Will Not Fall"
3. Milton Jackson "Randoms"

中盤。さすがにちょっとお客さんも疲れてきたとみえて、比較的足が止まっている時間帯でした。出番でないときはフロアに降りてみて、一歩引いて客観的に聴いてみるみたいなこともできるのが、この4人でプレイすることの醍醐味。こういう時間帯の定石として、4人で示し合わせるでもなく、自然と120bpm台にテンションを落としていく流れにできたのは良かったです。こんなこともあろうかと、わたしもスローなディープハウスをかけた。

DJのあいだで「この曲いいね」みたいなことは言い合っていたんですが、ズールー=サンに気に入ってもらえたのがこのDeetronの曲。

次のDavid Roiseuxはずっと昔から好きなアーティストで、硬めの4つ打ちテクノを基調としながらもエモーショナルなシンセ使いで独自の世界を表現しています。この曲を収録したアルバム『Rebirth』(2010年)は、一般的にはあまり評価されていない、いわば埋もれた名作なので、気になったかたはぜひBandcampで買ってみてください。

【ターン4】

1. Netsky feat. Dynamite MC "The Whistle Song"
2. London Elektricity feat. Elsa Esmeralda "Meteorites"
3. Dub Phizix "Break It"

チャブ=サンからちょっと実験的なビートの曲で回ってきたので、ここで思い切ってドラムンベースにスイッチするチャンスかと思い、カットインで174bpmへ。これはけっこう受けたみたいで、わりと踊ってくれるかたがいて嬉しかったです。

で、ちょうどこの前くらいにTwitterでニンジャスレイヤーのリアルタイム翻訳更新が始まっちゃったんですね。『ギア・ウィッチクラフト』の最終セクション、フェイタル=サンとブラックヘイズ=サンがいい感じのシーンだったこともあり、愛と多幸感あふれるこの曲にするしかないと思って、"The Whitsle Song"をかけました。大好きな曲です。

そのあと"Meteorites"。

これは4年前に作ったユンコちゃんをイメージした自作DJミックス『JUNK-O-MIX』でも取り上げた曲です。

エモい感じの曲が続いたので、逆にこのあとはどういう展開にしてもらっても構わないと思い、比較的カラーが少ないDub Phizixのソリッドなツールトラックを選んでノロワレ=サンに渡しました。そしたら、あんな超いけてる『なんでやねん』のドラムンベースマッシュアップかけるんだもん! ドラムンベースの流れにしてよかった~と心底思いました。最高の流れでした。

【ターン5】

1. "Sushi-Soba Entry"
2. System F feat. Marc Almond "Soul on Soul"
3. "Swan Song"

ラストの5巡め! どんな曲が流れてきてもフジキドのソバ啜り音から強引に流れを変えることができるぞと思って、過去のHMCでも使ったマッシュアップを用意していました。スワンソングネタの曲もそうですね。個人的にはHMCもう散々かけさせてもらったのでいいかなと思いつつ、今回初めてHMCに遊びに来たという方もたくさんいらしたので、結局かけることにしました。このへんの忍殺ネタ自作マッシュアップの完全版はこちらで聴くことができます(リンク先からmp3ファイルのダウンロードもできます)。

System Fの"Soul On Soul"は、トランスの流れになったらかけようかなと用意していた曲のひとつ。いやなんか、改めて聴いていたらソウル・オン・ソウルってめちゃめちゃニンジャスレイヤー的だなって思って。これとかもうわたしにとっては20代前半のころ聴き込んだ懐メロです。

ほかにもいろいろ用意していましたが、ひとまずこんな感じです。ありがとうございました!

関連リンク

ノロワレ=サンとチャブ=サンの選曲ノートです。


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