【映画】犬ヶ島

ウェス・アンダーソン監督の新作アニメーション映画『犬ヶ島(Isle of Dogs)』を25日の公開初日に観てきました。またけったいな邦題をつけて…と思ったらこれ、国内の配給会社がつけたわけじゃなくて、正しく原題の一部なのですね。

同監督は『グランド・ブダペスト・ホテル』で知り、そのあと『ファンタスティック Mr.FOX』ですっかり好きになって、わりと最近Netflixで『ムーンライズ・キングダム』を観たところです。完全に好みが分かれるところかもしれませんが、わたしは基本的にウェス・アンダーソン監督の作風のファンで、今回も第一にそれを期待して行きました。

いつものやつ!

で、完全にいつものウェス・アンダーソンなのでした。徹底してシンメトリカルな画面、左右のパンニングや俯瞰カットの多用、ダイアローグのテンポ、計画の立案と実行シーケンス、地図のモチーフなどなど、いつものやつ全部入りでした。この偏執的なこだわりようは作家として素直に尊敬する。

舞台は20年後の日本、ウニ県メガ崎市。独裁的権力を誇る小林市長は、蔓延する犬関連病の対策として、市内すべての犬をゴミ埋め立て島送りとする法案にサインし、自らが養子とするアタリ少年の護衛犬スポッツすらも追放してしまう。12歳の小林アタリ少年は、スポッツを取り戻すため単身「犬ヶ島」に潜入するものの、そこには数々の冒険と困難が待ち受けていて…というお話。

今回の楽しみは、何と言ってもこの独特な「ちょっとズレた日本」の表現です。ウキヨエ、スシ、オスモウ、ヤクザ、フロ、カブキ、ハイクと、これでもかというほど作り込まれた小ネタが怒濤のように押し寄せてくる。いちいと笑ってしまうんだけど、それでも一回見ただけでは拾いきれないかもしれない…。しかもなんか、コンピュータは磁気テープ装置ついてるしテレビはブラウン管だし、妙に古いんですね。ニンジャヘッズには絶対観てほしい。

映画なのか映像作品なのか

ウェス・アンダーソン作品ってこう、間違いなくメチャクチャ面白いんだけど、映画として面白いかというと答えるのが難しい。例えば『マッドマックス』や『バーフバリ』や『ブレードランナー』と比べてどうみたいなことが全然言えない。ステーキと花瓶を比べるみたいな感じ。

別に前衛的とか難解というのではなくて、ストーリーはチョー明快だし、観るときは普通にこの後どうなるんだろうとわくわくしながら観る。でもそれがこう、AからB、BからC、Cの前にB'があって、だからDがEになって…と、ものすごく説明的に、淡々と展開するのです。テンポの緩急も情緒も、なんなら感動的な場面もたっぷりある。なのになんだかこう、敢えてキャラクターの誰にも感情移入させずに、箱庭を外から観察するような作りになっている。なんというか、普通の映画の語法とまったく違うのです。

一方で、映像が細部まで徹底的に作り込まれている。ストップモーションアニメだから余計にそう感じるのかもしれませんが、まるで精巧に作られた時計の機械仕掛けを観るような感じの、脳に気持ちいい映像(と音)がずーっと連続する。映画の随所に挿入されるテキスト(テロップ)のタイポグラフィも現れたり消えたりするタイミングも、いちいちかっこいい。映像作品として麻薬的な魅力があります。

犬かわいい

なので、面白い映画だよといって誰彼なくおすすめするかというと、わたしの場合はちょっと違う。お腹ペコペコの人に「この花瓶キレイでしょう!」とは言えない(花瓶に夢中になって空腹を忘れることはあるかもしれないけれど)。

ただ『犬ヶ島』の場合、とにかく犬が生き生きと動いてカワイイ。これがすごく分かりやすい。人と犬とのコミュニケーション描写についても、ある道具によって成立しているのですが、犬好きには分かりやすく刺さると思う。

ウェス・アンダーソン作品、ストップモーションアニメ、トンチキ日本、犬のどれかに興味があるならぜひ観てみてください。単純にファストペースなコメディとしてもふふっとなる笑いどころが多くて楽しめます。


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