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【映画】カメラを止めるな!

8月13日、話題の映画『カメラを止めるな!』を地元の映画館で観てきた。初めはたしか伊集院さんのラジオで聞いたのだったか、とにかくネタバレを避けて早く観てほしいとのことで、そのあとTwitterタイムラインだとかでも徐々に話題が広がり、へ~そんなにおもしろいのか、みたいな。情報の拡散のしかたでいうと、『ターボキッド』とか『バトルシップ』とか『バーフバリ』のときと同じような感じ。

決め手となったのは本兌さんの日報(ポン!|ダイハードテイルズ)でした。あっもうなんか、ほんとに観たほうがいいやつだ、と思って地元で検索したら、ちょうどイオンシネマが月曜の安い日で、昨晩のうちにネット予約。席もけっこう埋まり始めていて、いざ今日行ってみたら観たい回は満席で、次の回もほぼ埋まっていた。そんなに人気とは!

超絶おもしろかった

結論から言って、めちゃめちゃおもしろかった。これほどハードルを上げていったのにもかかわらず…。確かにこれはネタバレを避けておもしろさを伝えるのが難しい。最後に超どんでん返しがあるとか、そういうのではないんです。全体の"構造"がおもしろいので、そのおもしろさに言及しようとすると説明しないといけない。そういうことを避けて溢れ出るこの感情を未見の人に伝えようとすると…もう「ポン!」としか言えない(ちなみにこの「ポン!」には振り付けがあります)。

でもねえ、難しいんだけど不可能ではない。結局これってゾンビ映画というフォーマットを踏襲してはいるけれど、ものづくり賛歌であり、人間賛歌なのです。みんなで力を合わせて作品を作るのって、超大変だけど最高だよね! みたいなことをすごく思う。出てくるキャラクターはひと癖もふた癖もあり、人間的には欠点だらけなんだけど、それでもいいじゃん、輝けるポイントがあるよみたいなことなのだ。そのために、一回きりのカメラを止めてはいけない=キープ・ローリン、なのだ…。

なので、これはけっこう普遍的な話であり、ええ~ゾンビ映画ぁ~みたいないことで敬遠する必要は全然ない(どっちかというと私もそうなのですごく分かる)。そしてやっぱり、変にネタバレや事前情報を入れてしまうより、とにかく先に観てしまったほうがいいです。わたしはほんと、めちゃめちゃ笑って、笑いすぎてなぜか泣いており、ちょっと恥ずかしかった。でも地元の映画館で、あんなに満席の客が笑っているの初めて見た。言ってしまえば全然無名の監督さんと俳優さんで、しかも邦画で、この映画体験はなんだろうって感じ。

イオンシネマで観たので、映画が始まる前にけっこう予告が長いんですよ。でいて、わたしなんかにしたらもう絶対観たくないみたいな、テンプレスカム邦画の予告が立て続けに流れて、こんなのどこが面白くて誰が観に行くんだ…みたいな絶望的な気分になる。なるんだけど、『カメラを止めるな!』がこれじゃないですか。完全インディーズでこんなにも志の高い映画が、劇場でこれほど熱狂的に受け入れられ、正しく評価されているのって、素晴らしいなと思う。希望がある。

そういうわけで、愛と笑いと希望の映画『カメラを止めるな!』おもしろかったよ。おすすめです。

■ ■ ■

【ここから先はネタバレありの感想をちょっと書くので、未見のかたはスルーしてください】

















"HOW"を紐解く

でね、まあ、メタフィクションなわけじゃないですか。観る前からわりとそういう仕掛けっぽいなとは気づいているし、その仕掛け自体は珍しいものでもなんでもないわけです。前半パートでも「このカメラを回しているのは誰なんだ…?」みたいな想像を自然と喚起させるような演出になっていて、しかも不自然な間とか台詞とか、印象に残る「引っかかり」をたくさん散りばめている。それを後半パートで、ひとつ残らず丁寧に回収して全部笑いに変えて行く…。「どうやって」の謎解き自体がすべて笑いに変わるの、ほんと魔法のようだなと思った。同じキャラクターによる同じ場面が、カメラの視点が変わるだけでこんなにも別のものになるって、すごいことだよ!

そして私がこの映画で一番好きだなと思ったところって、エンドロールなんです。前半パートが「作中番組」、後半パートが「作中番組の撮影風景」、でエンドロールが「作中番組の撮影風景の撮影風景」じゃないですか。後半パートで、あんなにも悲喜こもごもの作品作りの楽しさを見せておいて、その作品(つまりこの映画『カメラを止めるな!』)を作るのにもきっと人間ドラマがあって、それはもっと大変でもっと楽しいんだろうなという、メタ的なテーマの拡張を自然にやっている。こんなにも希望あふれるメタフィクションはそうそうないなと思うわけです。

さっき読んだこのへんのインタビュー記事も良かった。いろんなことが腑に落ちた。なんかすごく、真面目な映画ですよね。純粋にコメディーであり娯楽作品だけど、芯がある感じ。

というか映画制作のこと全然知らないんだけど、この映画撮影も役者さんも、めちゃくちゃテクニカルなことをさらっとやっていませんか? 37分のワンカットもそうだけど、そもそもそこにメタ撮影班が映り込んではいけないし、役者さんも作中人物の作中演技を演じないといけない。知恵と工夫とともに、さりげない職人芸的な技術の高さをひしひしと感じた。

伏線の貼りかたも鮮やかで、ラストの監督が台本に貼り付けてた娘との写真、ウワーッとなりました。だってこう、確かクライマックスで娘がバリバリ仕切ってるシーンで写真貼り付けた台本がちらっと映るけど、そのときはアル中のオッサンが寝てたとこでもあるからその台本かなと思う。でも最後に娘が写真をハイって見せるとこであれが監督の台本で、監督が娘の写真見てさめざめ泣いてたシーンがフラッシュバックして、あ~そこ繋がるんだみたいな。しかも父娘がお互いどう思っているかみたいなことをセリフで一切言わせないじゃないですか。脚本にそういう野暮がないのも好みでした。

今年は本当にいい映画多いですよね。本作を直接間接的に勧めてくださった方々ありがとうございます。あと、ネタバレを伏せていてくださったこともありがとうございました。

このシーンのみんなの笑顔が最高によかった

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