【映画】パシフィック・リム:アップライジング

今でこそ映画の感想文なんかを書くようになりましたが、私が映画を観るようになったのはせいぜいここ5年くらいの話。そのきっかけというのが、何を隠そう2013年の『パシフィック・リム』なのです。30代にして初めてひとりで映画館に観に行った作品であり、初めて監督の名前を覚えた作品であり、初めてBDを買った作品であり、初めてサントラを買った作品であり…。映画に対する食わず嫌い、いわば自分のなかの「壁」をぶち壊すほどのパワーを感じた作品で、もちろん今もそれなりに思い入れがあります。

なので、監督もメインキャストも交替しての続編『アップライジング』については、つとめて過度の期待を抱かないようにしてきました。トレイラーを見る限りでは、映像的にはデル・トロさんの作家性は完全に失われてしまったように見えたし、凡庸なロボット映画になってしまうのならいっそ観ないほうが…でも気になるし…みたいな。

そのような葛藤もありつつ、でもやっぱ観ないわけにはいかないってことで、公開4日目に立川シネマシティの極上爆音上映で観てきました。

なんだー、面白いじゃん!

これね、ものすごくイケイケの、アッパーな巨大ロボットバトル映画でした。元気出る。前作は、言ってみれば「滅びゆく世界で枯れた男たちが最後にもう一花咲かせる話」であって、デル・トロさんの超ダウナーな世界観がロボットや怪獣と奇跡的な化学反応を見せていたわけですが、本作はそれとは好対照。まだ何者でもない若者たちが未来のために戦い、いろいろ大変なこともあるけど最後は勝った!やったー!終わりっ!みたいな、あっけらかんとした無邪気さが前面に表れていました。まずそこが良かった。

なんて言うと、前作の良さがまったくスポイルされてしまったように思われるかもしれない。でもこの場合、方向性をガラリと変えたからこそ中途半端にならず、デナイト監督の描く世界が魅力的に映ったように思います。どっちつかずが一番良くない。

だってこう、シナリオに関しても、えっ待って!そこまで行っちゃうの!みたいなドライブしている感じが常にあり、振り返ってみても、よく思い切ったなあというポイントがいくつもあったのです。盛り盛りだった。だからこそ、お話についてはぜひネタバレを避けて観てほしい…。この、予想を超えてくる思い切りこそが本作の最もチャレンジングなところであり、また評価されるべきポイントだと思うからです。みんなTLで積極的にふせったーとかを使ってくださって、今日までネタバレをしないでいてくれてありがとうという気持ち。

無論、減点法でいまいちなところを探せばたくさんある。『アップライジング』は完璧にブラッシュアップされた非の打ち所のない作品では全然なくて、とてもいびつで舌足らずな映画だった。次々に起こる出来事を噛み締める間もなく次のシーンに進んでしまうし、パイロット候補生たちやイェーガー各機体の説明に割く尺も少なすぎて、本来あるはずの魅力が描き切れていないように感じました。

でもそもそも『パシリム』って、加点法で5億点!(100点満点)みたいな映画だったし、そういう揚げ足取りはこの際別にいい。それより何より、本作においてもロボットと怪獣のバトルがめちゃくちゃにかっこよく、一切妥協を感じなかった点が素晴らしかったのです。懸念していたイェーガーの「サイズ感」や「重量感」も、重機をそのまま拡張したかのような前作ほどではないにしろ確かにあって、全然大丈夫だった。いやむしろ、今の日本ではおそらくとても集められない予算やスタッフを集めて、ハリウッドさんはよくぞこんな映像を作ってくださった…という感謝の気持ちしかない。スーパークールな巨大ロボットと怪獣のバトルを、これでもかというほどたっぷりやってくれる。

ってわけで、私は十分に楽しめました。『アップライジング』というサブタイトルがまたアゲアゲな作風に合っていて、これしかないって感じ。ここまで割り切って違うテイストの作品にするのであれば、他にもっと違う切り取りかたをした作品をいろんな媒体で展開して、シェアードワールドみたいになっても面白いかもしれない。まだまだ色々できそうだなあという可能性を感じました。

ひとまず以上です。
で、ここから先はネタバレありの感想を思いつくままに…





いやでもほんと、思っていたより全然良かった。よくぞあの続きのお話をこんなふうに面白くしてくれた…。だって、前作でみんなで頑張って閉じた裂け目がまた開いて怪獣出て来ちゃいました~なんてお話だったら、あんまり徒労でかわいそうじゃあないですか。観る前は、続きをやるならいっそ前日譚のほうがよかったな、とかも思っていたのです。

まずスクラップヤードから始まるポスト・アポカリプス的(アポカリプスはキャンセルされたわけだけど)な冒頭シチュエーションが好みでした。無許可のイェーガーをPPDCのイェーガーが取り締まるなんてのはパトレイバーを彷彿とさせるし、それを言ったらイェーガーを着込んだ怪獣とかいうのもまんま廃棄物13号でしたね。奇妙なゾンビーのように上半身を180度回転させるオブシディアン・フューリーは暴走エヴァのようだったし、あのアラスカのバトルは全部かっこよかった。

デカイほうが強い、という価値観をひっくり返す…柔よく剛を制すみたいな明快なモチーフの繰り返しも良かった。スクラッパーとノーベンバー・エイジャックス、アマーラとヴィク、ジプシー・アヴェンジャーとメガ怪獣。そのあたり、例えばイェーガーが合体して大きくなって倒すとかだとテーマが揺らいでしまうわけだけど、捨て身の創意工夫でナントカするってところが、いかにもパシリムっぽかった。

プロットで面白かったのは何と言ってもニュートの裏切りです。あれはその前の自室でアリスちゃんとドリフトをキメてるニュートが最高の爆笑シーンで、そうだこいつはこういう狂人だった…と思わせてからのアレなので、前作主要キャラとはいえ有無を言わせぬ説得力があった。これならしょうがないか~みたいな。彼を必死で救おうとするハーマンのキャラも立ってましたね。

マコちゃんはまあ…メタ的には物語上の役割を終えたという感じなのかな。彼女は幸せになれたのだろうかとか、深く考えていくと悲しいはずなのに、作風の強み(?)で悲壮感を噛み締めるとこが全然なかった。バーチャル遺影が並ぶシーンで、チェルノのパイロットのアレクシスさんが映ったの嬉しかった。いやそこ、センターに3人並ぶんだったらハークじゃないの!みたいな。

リーウェン社長のキャラづけもテンプレだけど良かった。同じレジェンダリーの『キングコング:髑髏島の巨神』でも妙に目立っていたけど、今回は出るカットごとに衣装替えてお色直しみたく出てきたものだから笑っちゃった。で最後、スクラッパーを操縦して来ちゃうでしょ。序盤のブルゾンちえみみたいなヘリ登場シーンからは想像できない、あの、戦いが終わったあとの汗だくのタフな表情!

もちろん、アマーラやジェイクの人間ドラマをもっと観たかったというのはある。ネイトもジュールスも、パイロット候補生たちも。アマヴィク…。というか、せめて誰が何に乗って何を求めて戦っていて、というののドラマの手がかりくらいは欲しかった。ノベライズを読んだらもうちょっと色々あるのかな。

しかし映像っていうかCGに関して全然粗さがなくて、普通にかっこよく普通にワクワクしたので、監督以下本作のスタッフさんたちは全力を尽くしたのでしょう。デル・トロさんと違うのは、これはもう技術や能力ではなくて、芸術的センスの方向性の違いでしかないし、同じものを目指しても仕方ない。前作が5億点ならまあ…1億点くらいはあげてもいいんじゃないでしょうか(100点満点)。


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