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わたしがハマったVの者たち

人並みにバーチャルYouTuberが好きで、空いた時間とか寝る前とかにテレビ・ラジオ代わりにだらだら観ています。もっぱら有名な方しかフォローしていないので、詳しいとかでは全然ないし、だいいち今配信者の総数でいうと何千人? とかいるらしいのでとても追いきれない…。

それでも思うのは、才能がある方ってのはどんな世界にもいて、それぞれに魅力的だなってこと。急に思い立ったので、いま現在わたしが追っかけてる人々について少しだけ書いておこうと思います。なお、せっかくなのでバーチャルYouTuberとかを普段全然見てない人向けのつもりで書きますね。

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Vの者たちとは

バーチャルYouTuber(VTuber)、あるいは配信プラットフォームをYouTubeに限定しないという意味ではバーチャルライバー、総称してVの者とも言うらしい。ざっくり言うと「オリジナルの二次元キャラクターのアバターを使って、そのキャラクターとしてのお喋りを、動画コンテンツとして配信する人たち」のこと。

その形態はさまざまで、キャラは2Dのことも3Dモデルのこともあるし、配信機材を揃えて凝ったモーションキャプチャー環境を構築していたりスマホだけだったり、声を変えてたり素の声のままだったり、短い編集動画だったり長時間のライブ配信だったり…。いろいろです。そして、演者さんにもプロがいたりアマチュアがいたり、企業が大きな予算を投じた企画もあれば、才能とアイデアだけで細々とやっている個人もいる。

わたしはVTuberの前段階ともいえるYouTuberやニコ生配信などの文化にほとんど触れずに来たんだけど、個性や配信スタイルが様々なのはおんなじだと思うんですよ。じゃあそれらとなにが違うのかっていうと、程度の差こそあれ、VTuberは二次元アバターに己の魂を仮託した理想のキャラクターのロールプレイであるってとこなのだと思います。実際の社会的ロールや外見や声や、そういう物理的なものをすっ飛ばして、魂が形をとったらどうなるかってことを実践している。人類初の試みであると言えるかもしれない。

わたしもはじめは、2017年のVTuberムーブメントをわりとドライな感じで見ていました。たしかキズナアイちゃんやミライアカリちゃんの動画をちらっと見て、すっごく慣れている感じだったので、要はセミプロの声優さんみたいな芸達者な子がかわいいキャラクターの声を当てて、YouTuberと同じようなことをやっているんでしょう、と思っていた。

そんなだったので、最初の衝撃はやはり「のじゃのじゃ~」の人でした。

バーチャルのじゃロリ狐娘YouTuberおじさん(ねこますさん)

PANORAのインタビュー記事(なぜオッサンはかわいいに憧れるのか 「バーチャルのじゃロリ狐娘YouTuberおじさん」独占インタビュー(前編) – PANORA)を読んで、これはヤバイと思って動画観て超ハマって。もともとVRに興味はあったから、技術畑からこのなんか…ボイスチェンジャーも使わずに素のトーンで性癖てんこ盛りの自作キャラに声当ててるのが斬新で、しかも普通にかわいいんですよね。でもう、かわいい女の子にかわいいおじさん(といってもお兄さんくらいなものだろうけど)が入ったらめっちゃかわいいじゃん! みたいなのに気づいて。初めてこれはおもしろいかもって。

既に、バーチャル(中略)おじさんとしての表立った活動はもうほとんど行っておられないねこますさん。彼の場合、キャラデザや高めの地声でのたどたどしい語り口も魅力的なんだけど、結局のところ、技術に対する真摯な態度や研究熱心なところが応援したくなる感じで、つまりはキャラの「ガワ」にあたる部分すらもきっかけにすぎないのだと気づきました。その「魂」のファンになるのだ。

輝夜月ちゃん

で次にスゲ~と思ったのが輝夜月(かぐやるな)。かわいらしいキャラデザを逸脱したヤンキーっぽいハイテンションな喋りを、異常に細かいカット割りで短時間に濃縮してぶつけてくるハイカロリーコンテンツです。

わたしが最初に連想したのは、初期の篠原ともえ(シノラー)みたいだなって。誰も干渉しなくても、一人語りのなかに確固たる自分の世界があって、その子が喋り出すと辺り一帯がその子ワールドになるみたいなエゴの強さ! もちろん、首絞めハム太郎だとかストロングゼロの擬人化とか言われた強烈に個性的な声にも魅力がある。

月ちゃんは、よく知らないけど、関わっているスタッフが優秀でプロデュース体制もしっかりしていて、にもかかわらず本人の好きにやらせているっぽいところがチャレンジングだ。そして回を重ねるごとに、絵がめっちゃ上手いだとか本人の才能の非凡さみたいのがポロポロ出てきて底が知れない。

感心したのが、今年2月4日のニッポン放送「ミュ~コミ+プラス」にゲスト出演した回。大体、地上波のラジオにバーチャルYouTuberが出るってすごくない? 声だけなんだよ! 

番組Twitterではこんなふうにしているけど、ぶっちゃけ中の子がニッポン放送のスタジオに来てて、普通に輝夜月として喋ってるんですよ。でもう、こうなるとロールプレイにガワがあるとかないは関係なくなっちゃって、声だけがあれば、誰が何と言おうと月ちゃん本人なんですよね。

わたしは10月に出るfigmaを予約してしまいました。VTuberさん、みんなfigmaになればいいのにね。

電脳少女シロちゃん

シロちゃんの動画は初めは敬遠していたんです。声もキャラも思いっきり「作って」いるし、ねこますさんや月ちゃんのような素のトーンのおもしろさがあんまり出ていないんじゃないかと思って。でもそれは違ったのだ。

当初、かわいらしいキャラなのにPUBGとかの暴力的なシューティングゲームが上手いみたいなミスマッチさで話題になっていたシロちゃん。いくつか見ていくうちに、この人は確かにシロちゃんを「演じて」はいるんだけど、ない要素を作っているんじゃなくて、あくまで自我をデフォルメした状態で表現しているんだなと思って。

白眉がこのあだ名命名回。途中で「偉人伝を読むのが趣味で図書館で週30冊借りてて…」とか語り出すのもすごいし、織田信長に「被謀反マン」というあだ名を即興でつけるセンスもずば抜けてて、この動画で完全にファンになりました。表現しているキャラクター性は幼いんだけど(幼児退行みたいなカワイイの表現)、それでも隠しきれない地頭の良さやインスピレーションの豊かさがにじみ出ている感じ。

ほぼ毎日動画を投稿していくという驚異的ハイペースに加えて、ショウとして見応えのある手の込んだ編集で飽きさせない。とりあえず流れてくるやつの気になったのだけちょっと見てみる、みたいな感じでも気軽に楽しめる。ライトなインディーゲームの実況動画はだいたいおもしろいんだけど、『Beat Saber』のVRプレイ動画は、3時間の特訓のあとものすごい上達しているのは素でカッコ良かった。努力家だな~とか思っちゃう。

のらきゃっとさん(のらちゃん)

中身が男だとか女だとかのジェンダーを超越して表現したいキャラクターになりきる魅力は、ねこますさんの事例で十分に分かっていたつもりだったけど、その概念を更に推し進めたのがのらきゃっとさん。元々はニンジャスレイヤー紹介動画を作っていたことから興味を持って、次第に虜になった。

彼女がどういうことをやっているかというと、モーションキャプチャーデバイスを通じて女の子っぽい所作(kawaiiムーブ)を表現しつつ、発声した音声さえもリアルタイムに機械音声に変換して、その在りようのすべてを、演者(ノラネコPさん)とは別の「のらきゃっと」というアンドロイドの自我の表出として表現している。世界観が完結しているんですね。

もちろん、今はまだ技術に限界があるから、何もかも完璧にとはいかない。音声認識によるリアルタイム音声変換も、例えば、「よいしょ」と発音したのが「ゆうちょ」と変換されてしまう…といった誤認識は日常茶飯事。だけど、それをご認識なんて言ってポンコツアンドロイドの特性のように表現するものだから、もはやそれ自体もキャラの魅力の一部になってしまっているのだ。

「ご認識」に無理やり辻褄を合わせて桃太郎を読むというこちらの動画は、のらちゃんのポンコツさと頭の回転の速さ、そして熟練のkawaiiムーブを、初めての視聴者にも分かりやすく伝えてくれます。

で更におもしろいのは、彼女はVRChatを通じて、のらきゃっと本人としてVR空間に現れて、ユーザーとコミュニケーションを取っているらしい(らしい……というのは私がまだVRCをやったことがないため)。つまり、動画コンテンツのなかのキャラクターではなくて、自我を持った一個人がそのキャラとして目の前にいてコミュニケーションが取れる状態だったら、それはもうそのキャラ本人じゃん、みたいなことなのだ。

その一端を垣間見ることのできる動画のひとつが、先日開催されたVR即売会「バーチャルマーケット2」をのらちゃんが案内してくれるというもの。

これ本当にすごいですよ! 彼女自身がカメラを操作して、同時に案内人として、VRのなかに構築されたお店をひとつひとつ紹介してくれる。VRってこんなこともできるんだ、という新鮮な驚きがある。しかもこう、お店のセットや売りものを使ったのらちゃんの即興のパフォーマンスが、いちいち多彩でかわいくて、見てて飽きないんです。

他にも、のらちゃんが運転する車の助手席に乗る回だとか、VRテクノロジーの最先端の夢をいつも見せてくれて、わくわくしますね。

日雇礼子さん

ここまでとは全く別のベクトルで、VTuberのおもしろさを教えてくれたのが日雇礼子(ひやといれいこ)さん。白鳥麗子をもじったインパクト強いネーミングでもう優勝なんだけど、そのうえ動画の切り口が「大阪・あいりん地区の日雇い労働者の目線で地元を紹介する」というガチなものだから、他に誰も真似できない。

3Dキャラクターのモーションは編集での後付け、声はいわゆるゆっくりボイスというVTuberとしては最小限の環境ながら、昭和感のある死語を交えた鋭い言葉選びのセンスと、地元民ならではのツッコミの容赦なさ、そしてほのかな悲壮感とノスタルジーが魅力的です。

映像だけでいうと、それこそショート・ドキュメンタリーなんですよ。ドヤ街文化とは無縁な一視聴者としては「マジか…」みたいな驚きもあるし、でもご本人にとってはそれは決して興味本位ではなくて、日常生活と地続きのルポだからこそ笑いにできる、みたいな。これもまた、姿かたちをアバターに託したVTuberだからこそ可能な表現のひとつ。

一時期活動を休止されていましたが、最近またPixiv FANBOXなども活用しつつ精力的に活動をされていて、常に応援したくなる存在のお姉さんです。わたしもTwitterに上げたファンアートを動画のエンドカードとして一度使っていただけて、すごくうれしかった。

月ノ美兎ちゃん(委員長)

そして、遅まきながら最近になってめちゃくちゃハマったのが「委員長」こと月ノ美兎(つきのみと)さん。バーチャルライバー集団「にじさんじ」の最初期メンバーにして、いまやサブカル清楚系委員長の代名詞でもあります。

委員長を知ったきっかけは、前述のニッポン放送の深夜番組の日替わりVTuberゲストに出ていたことで、このとき初めてトークを聴いたんです。頭の回転の速い、言ってしまえばどこにでもいる普通の早口のオタクの女の子という印象だったんだけど、そもそもラジオ的な文化と相性が良いらしく、AMラジオ深夜番組リスナーのわたしとしてはすごい光るものを感じてしまって。で公式チャンネルを見に行ったら、自分でライブ配信を10分に編集したベスト版を作っていて、あっこれは只者ではないんだなみたいな。

とにかくなんていうか、美兎ちゃんの場合は「清楚系委員長」というロールを演じようとして、かえって素の人間的な魅力が浮き彫りになっちゃう感じで、話を聞いてるだけでおもしろいんですね。

興味があってインタビュー記事を読んだら、これがまたおもしろかった。バーチャルライバーになった成り行きや、配信の特色が網羅されている入門者向けのガイド。2018年4月の記事です。

まずタイトルがいいじゃないですか。「“わたくし“では隠しきれない“私”という魂の輝き」! 委員長の魅力はまさにそこで、もっと言うと、いまこのnote記事で冒頭から度々VTuberさんのパーソナリティーの本質を「魂」と表現しているのは、このKAI-YOUのインタビュー記事の受け売りです。

委員長の動画は、基本的に不定期なライブ配信の録画アーカイブなので、どれも一本が長い。でもこれも、キズナアイちゃんや月ちゃんの作品ようなテレビ的な編集とは対照的な、フリートークが1時間2時間あるラジオ番組的なものと考えるとしっくりくる。

わたしもまだそんなにアーカイブを追えていないんだけど、最近の配信で好きだったのは、この体験レポートシリーズです。なんでも、彼女は普段から「一生のうちに体験してみたいことリスト」というのを作っているそうで、それを実際に試してみて話すという…これってまさにラジオで伊集院さんとかがやってる、体を張ったフリートークそのものなのだ。この回はそれが「サバゲー」と「ストリップショー鑑賞」だった。

でまた、何を話すにしても彼女の独特なサブカル嗜好と絶妙にツッコミたくなるポンコツさが滲み出てしまって、どんどん清楚な女子高生のイメージとは遠いところに行ってしまい、魂そのものの魅力が爆発してしまうのだ。

あと、ここはnoteなので触れないわけにはいかないんだけど、美兎ちゃんはnoteアカウントも持っていて、月~金の平日は毎日、高校生が授業の合間にノートに落書きをしているていで、ちょっとした日記をアップしています。ちょっとおもしろいから見てみて。

これもまたロールプレイの延長であって、実在する月ノ美兎というバーチャルライバーの世界観を形作るのに一役買っています。わたしはもう委員長から目が離せない。

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Vの者の誕生と別れ

以上、わたしが現時点で追いかけている主なVTuber/バーチャルライバーさんたちについてつらつらと書いてみました。これ以外にも(あんまり書けるほど詳しくないけど)キズナアイちゃんとかマグロナおじさんとか、何人かいます。人気ある方っていうのは、見ればやっぱその理由がわかるよね。

最近こんな記事を読んだんです。

先日引退したあるバーチャルライバーさんに関する3人のファンの鼎談記事で、話している内容はディープすぎて半分も分からないんだけど、それなりに思うところがあった。

VTuberとかもまあ、2017年にわっとメジャーになって、じき2年とかだから、その間に始める人もいれば辞める人もいる。でも普通のタレントなんかと違って、Vの者の引退とは何かっていうと、ロールプレイの停止であって、すなわちキャラクターの死なのだ…。

それって、好きで追いかけているファンにとってはどういう感覚なんだろうと思っていたんだけど、この記事のなかで一人の方がその喪失感を「飲み屋でいつも話してた常連が海外転勤で居なくなる感覚」と表現していて、なるほどなあと思った。

個人運営だったり企業傘下だったりとそれぞれに事情の違いはあるものの、Vの者ってたぶんうまくやればこれからもずっと息の長いプロジェクトになると思うんです。アバターは物理肉体のような老化という制約を受けないし、テクノロジーの進歩と普及に応じて、きっとどんどん多彩な表現ができるようになる。

そのなかで、今はまだ一対多のコンテンツとして、有能な一握りのパフォーマーだけが手にしている魂の形というものを、もし自分だったらどんな形にしてみたいかなとかいうことも、時々ちょっと考えたりもします。

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