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シンセサイザーのすすめ

シンセサイザーが好きです。私はまったく楽器ができない…つまり、楽譜が読めない&鍵盤などを弾く技能がない、のですが、そんな人でも音楽作りを100%体験できる夢の機械がシンセです。楽しいですよ。もしかしたらちょっとハードルの高い趣味のように思われているかもしれないけれど、今は高機能で音のいいシンセが安く買えるし、仕組みはたぶん思っているよりもシンプルで、実はものすごく初心者に優しい世界です。

シンセサイザーとは

そもそも、シンセサイザーってざっくり何なのかというと、要するに、音の波形を合成したり加工したりして、好きな音を作ることができる機械のことを指します。なので、キーボードがついていなくても立派なシンセだし、パソコンとかスマホ上で動くソフトウェアのシンセもあります。

シンセっぽい音って、一般的には、たぶん"ピコピコした音"を指して言われることが多いと思うのですが、本当は工夫次第でけっこうどんな音でも作れます。内臓にびりびり響くような太いベース音、フワーッという柔らかいパッドサウンド、ノイズを使った風の音や獣の吠え声のような音、あるいはPCMといって、生楽器をサンプリングしたリアルな音を元にして加工していくこともできます。シンセの最大の魅力は、「それまで世の中に存在しなかった、他のどの楽器でも出すことができない自分だけの音」を作ることができる点にあると思います。そう考えるとわくわくしませんか?

ってことはつまり、メロディーを弾けなくても、最終的に曲を作るところまで行かなくても全然いい。遊ぶだけ!粘土細工と同じで、ああでもないこうでもないとこね回す過程そのものが楽しいわけです。

加えて、シーケンサーという機能があれば自動演奏ができます。これは入力した通りに自動でシンセの音を鳴らす機能で、これがあれば楽器が弾けなくても曲らしきものが作れてしまいます。1小節なり2小節をぐるぐるリピートさせながら、音を足したり引いたりしていく感じですね。これなんかはもうホントに、ろくろを回す陶芸のイメージとほぼ同じかもしれません。

何からどうすればいいのか

もし、まったくのゼロからシンセを始めたくなったらどうするか…。

もちろん、いきなり楽器屋さんに行って「くださいな」って気に入ったシンセを買ってきちゃってもいいんですけど、まずはシンセを使った音作りのイメージを掴むところから始めていくのが手軽でいいんじゃないでしょうか。スマートフォンやタブレット用のアプリ、あるいはDSのソフトだったりというのは、けっこう本格的なものがコルグから色々出ているので、おすすめです。

でも、私に言わせればソフトよりも断然おもしろいのはハード(機械)です。物理的にツマミをひねって音を変化させるというのは、今まさに電子回路の上を走る電気信号に手を使って介入する行為で、それだけでめちゃくちゃテンションが上がります。機械があればぜひハードシンセを触ってみてください。

以下の記事中のシンセは、すべてハードウェアシンシサイザーを指します。

シンセというと、昔は10万円20万円するのが当たり前でしたが、今はざっくり数万円もあればけっこういいものが買えてしまいます。一概には言えないのですが、1~2万円で簡易的なもの、3~5万円でエントリー的な機能をほぼ網羅したもの、6~9万円でかなり充実した機能をもつものが買えます。こうしてみると、なんとなく自転車(スポーツ自転車)みたいな価格分布ですね。

ただ、あまり大きくない町の楽器屋さんに行くと、シンセだと思ったらバンド向けのキーボードしか置いてない、みたいなことも多々あります。いや、正しくはそれもシンセなのですが、そういう商品はここでいうシンセとはちょっと方向性が違って、よく使う音を素早く出すことを目的にしたもので、ゼロから音作りを楽しむ用途には向いていないものが多いのです。電子ピアノの音はすぐ出るけど、音色がだいたい固定されているとかね。

見分けかたとしては、パネルがシュッとしててツマミやボタンが少ないのがバンドキーボード、パネルがぎっしりツマミとかスライダーとかボタンで埋め尽くされていてオタクっぽいのがシンセサイザーです(雑!)。

シンセの選びかた

いろんな基準がありますね。代表的なものをいくつか…。

・音
もしなんか憧れとかがあって「この音を作ってみたい!」というシンセがある場合は、そのシンセを買うべきです。シンセは機種ごとに個性がすごくあって、代わりが利かないのです(だからたくさん買ってしまう)。

・見た目
言うまでもなくシンセというのは機械フェティシズムの結晶です。宇宙船のコンソールのように、パネルを埋め尽くすボタンやツマミなどの操作子!なんだかよくわからない難しそうな文字!見た目にピンとくるかどうか、初見で「ウワーッ!カッコイイ!」と思えるかどうかは超大事です。相性のようなもの。

・メーカーはどれにするか
確かにシンセによって音は様々なのですが、メーカーによってもざっくり音の傾向に違いがあります。初心者に優しいのは、日本の3大電子楽器メーカー…すなわちローランドヤマハコルグです。大きいお店に行くと、他にも通好みの海外のシンセメーカーがたくさんあります。私はローランドびいきです。

・アナログかデジタルか
詳しい説明は省きますが、もともとシンセはアナログしかなかったのが80年代後半~90年代にほとんどデジタルになって、最近またアナログシンセがたくさん出ています。アナログ回路を電子部品レベルでデジタルで再現したシンセ、なんていうのも出ていて、音を聴いただけではわからなくなりました。

・モノかポリか
モノシンセの場合、同時に1つの音しか出ません。つまりコードを弾こうと3つの鍵盤を同時に押しても、そのうち1つの音しか出ないのです(今どきそんなことが…と思うかもしれません)。シンセの音作りはモノシンセでも十分に楽しめますが、複雑な音を作りたい場合は、音源の仕様の「同時発音数」をよく確認して、ポリであることを確認したほうがいいですね。

・シーケンサーはついているか
シーケンサーがあれば、鍵盤が弾けなくても好きなメロディを鳴らせます。実は大抵のシンセにはついているのですが、入力できる長さや入力方式に違いがあります。

・リズムマシンの機能があるか
もし曲作りのようなことがしてみたいのであれば、キックドラムやスネアドラムなどのパーカッションの音が出ると幅が広がります。ドラムの音を作る専用のシンセサイザーのことをリズムマシンというのですが、シンセによってはこの機能が内蔵されていて、オールインワンのものがあります。

・キーボードはついているか
弾ける人にとってはもちろん、弾けなくてもなにかと便利なのがキーボード。ただ、これは変な話あとから足せるのでどちらでもいいです。シンセには万国共通の「MIDI」という規格があって、いま発売されているシンセにはほぼ100%MIDI端子がついています。これと一般的なMIDIキーボードを接続すれば、好きな鍵盤で好きなシンセの音を鳴らすことができます。

・大きさ
これ、けっこう大事なんですよね…。シンセはけっこう場所をとるので、設置や収納が問題になりがちです。かといって鍵盤付きの大きいものばかりかというとそんなことはなくて、例えばコルグのvolcaシリーズはお弁当箱くらいのサイズです。いま小さいシンセはたくさんあるので、サイズ感はお店で実物を見て比較するのが早いかもしれません。

・どこから音を出すか
たぶん初心者のかたの盲点として、ほとんどのシンセにはスピーカーがついていないというのがあるかもしれません。なのでヘッドフォンか別のスピーカーにつなぐわけですが、出力端子がどの形状かは要チェックです。

・新品か中古か
特にこだわりがなければ、中古シンセもおすすめです。シンセの面白いところは、古くなっても単純に用済みとはいかないところで、その機械でしか出ない音というのが必ずあるものです。部品の老朽化などで壊れずに正常動作する限りは、ただ古くなったからと言って価値は失われないので、予算を抑えたければ中古をチェックしてみるのもありです。

うちのシンセサイザーたち

というわけで、うちのこの自慢をします。特にお気に入りのものだけ。

Roland SH-201

10年ちょっと前に初めて買ったキーボード付きのシンセです。いわゆるバーチャルアナログシンセというやつで、アナログシンセっぽい単純明快な音作りができる機械です。一応白と黒の鍵盤はありますがこのゴツいマシンからはピアノとかそういう生っぽい音は一切出なくて、ピーとかブーとかいう基本の波形から音を作っていきます。

このシンセはほんと毎日毎日使い続けた結果、作りたい音を速攻で作れるようになりました。数年間は苦楽を共にした。あまりにも場所を取るのでいまは隠居状態ですが、音もデザインも一番気に入っているシンセ。

Roland MC-303

高校生のときにバイトして初めて買ったシンセです。テクノ少年だった私は、この一台でテクノが作れるという触れ込みを信じて、しばらくこれ一台で頑張りました。グルーヴボックスと呼ばれる、音源とパターンシーケンサーが一体化したオールインワン機材の先駆けとなったマシン。

90年代後半のインターネット上にこのMC-303ユーザーが集まるWebサイトがあって、一緒にコンピCDを作ったりイベントをやったりしました。今は大事にクローゼットで眠っています。

Roland TB-3

3年前に出て発売日に買ったやつ。ローランドの名機TB-303の回路をエミュレートしたデジタルシンセで、ビヨビヨグニャグニャした音を心ゆくまで堪能できます。ほぼプリセット音のみで音作りの幅が狭いところが難点ですが、シーケンサーが大変よくできていて、このシーケンサーで別のシンセを鳴らすみたいな使いかたをよくします。楽しい。

Roland JD-Xi

5万円くらいで買えるオールインワンシンセです。デジタルとアナログの両方の音源を積んでいて、使いようによってはかなり凝った音作りができる。リズムも組めるし、これ一台でかなり遊べます。とはいえシーケンサーがちょっと弱くて、負荷をかけるとヨレたりすることがある。そこもかわいい。

Korg Electribe A (EA-1)

大学に入ったころに買ったシンセ。アナログモデリングシンセなんだけど、ギラついた金属感のある特徴的な音が作れます。モノラル2パートなので、これだけで曲っぽくするのは難しくて、基本的にほかの楽器(リズムマシンとかサンプラーとか)と組み合わせて使います。Electribeシリーズは、コルグ版のグルーヴボックスとして一世を風靡しました。

Korg Monologue

今年2月に買ったアナログシンセ。赤い!このシンセは初めてのかたのファーストシンセにもおすすめです。何より新品で税込3万円を切っている。モノシンセだけに限界はあるものの、音を作っていく楽しさを体感するのには最適です。ミニオシロスコープがついていて、音を聴きながら波形を見るみたいな他にない楽しみかたもできる。

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お気に入りのシンセサイザーとのいい出会いがありますように!

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