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Dub Phizix & Strategyを聴いてきた

5月24日金曜夜、渋谷Circus Tokyoで開催された"Dub Phizix & Strategy japan Tour 2019 supported by Cocalero"に遊びに行ってきました。ドラムンベースを聴き始めてからずーっと、いつか生で聴いてみたかったアーティスト。2年前に来日したときは何かの用事で行けなくて、今回ようやく念願叶った。行ってよかった。激ヤバかった。

わたしとDub Phizix

Dub Phizix(ダブ・フィジックス)は、イギリスはマンチェスター出身のアーティストで、20年以上のキャリアを持つ生粋のドラムンベースDJ/トラックメーカー。その作風は極めて特異で、一言でいうと、ダークで硬く、音数は少なく、ミニマルで渋い(全然一言じゃない)。抑鬱的かというとそうではなく、あくまでパーティーミュージックなんだけど、とにかくカタくてかっこいいのだ。

ドラムンベースには様々なスタイルがあって、それこそ30秒のブレイクのためだけのEDMみたいなテンションのものから、ソウルフルなジャジーなものがあったり、ウェアハウススタイルのジャングルがあったり、ダークで激しいおどろおどろしいものがあったりする。そのなかでDub Phizixは、なんというか、Dub Phizixっぽい曲を作り続けている。例えばこれ!

すごくない? パッと聴いてみるとスッカスカなんですよ。ものすごく音数を減らして、辛うじてドラムンベースのビートの骨組みだけを残したようなめちゃくちゃソリッドなビートの上に、(スマホのスピーカーとかではまったく聞こえない)可聴域ギリギリの超低音のベースがブンブン言っていて、その上にまるでお経のような、粒度の高い催眠的なMCが延々と叩きつけられる。

これとかも。実験的なベースミュージックに近いんだけど、遅いダブステップのグルーヴでも、フットワークのビートでもなくて、あくまで170bpmオーバーのドラムンベースなのです。

Dub Phizixはプロジェクトのなかで様々なMCをフィーチャーしていて、なかでも大きい役割を果たしているのが、長年連れ添い今回のツアーにも同行しているStrategy(ストラテジー)。

この、奇妙な喋るバッファローがStrategyです。極限まで削ぎ落したカッチカチのビートに、妙に癖になるこの…熟練の噺家のような…声を枯らした八百屋のオヤジのような、溢れ続ける滑らかなコトバの羅列! 何を言っているかはまったく分からないけど、めちゃくちゃカッコいい。

わたしは本格的にドラムンベースを聴き始めたのはここ9年くらいなんだけど、買うにしてもDJするにしてもとにかくこのDub Phizixのファンで、いつか来日するなら絶対に聴いてみたいアーティストのひとりでした。だってこの低音と硬いドラムン、そして読経みたいなMC、クラブの爆音で浴びるほど聴いてみたいでしょ。

Circus入り

1時過ぎにCircusに入ると、メインフロアではMetalheadzのDJ Leeがプレイ中。既にかなり良くて、ドラムンベースのパーティーが久々だったのもあって超踊ってしまった。実は個人的に音楽活動が控えめだったここ数年間、テクノの新譜を追うのに手いっぱいでドラムンベースの新曲に全然キャッチアップできていなくて、フロアで聴いて改めてドラムンいいなと思った。

Circusは何度も来ているけど、ここでドラムンベースを聴くのは初めてかも。意外にも相性いいと思ったし、なにより欠かせない低音がビッキビキに出てる。スピーカーからブーンと鳴ると肌を通過して内臓を直接震わされ、足の裏からはビリビリ震えるフロアの振動が重力とは逆ベクトルに、脳に向かって駆け上がってくる。テクノの、いわゆるキックのドンッていう気持ちよさとはまた本質的に違うんですよ。ドラムンの伝わりにくいところって、こういう、体感しないと分からんみたいな部分もあるのかもしれない。

Dub Phizix & Strategy登場

出た! 2時15分からの90分セット。CDJをセットしたブースに立ったDub Phizixは、無精ひげを長く伸ばしたいかにも胡散臭い風体のおっさんで、マイクを握ったStrategyがイメージ通りの声音でひたすら喋りまくる!

ヤバかった。思ったのは、やはりこのDub Phizixの低音ビキビキ高音カチカチの独特なスタイルとヒプノティックな読経MCの組み合わせが完全にアートフォームとして完成されており、一貫したダークな世界観に基づいたマンチェスター生まれのチョークールな唯一無二のショウであるということ。ドラムンベースの超高密度ブレイクビーツを概念として内包しながらも、エッセンスだけを抜き出して、研ぎ澄ませたビートとライムに乗せてDub Phizix印の烙印を押してお出ししてくるのだ。カッコよくないはずがない。

なのでもう、目ぼしい曲は何でも…"Doberman"もやったし、

激ヤバ"Bounce"もやったし(クソMADみたいな雑なMVも最高)、

そして冒頭に貼った"Buffalo Charge"もやってくれた! サイコー!

ラストのほうではStrategyをフィーチャーしたアンセム"Marka"も。
今回全体的にVJも良くて、切れの良いモーショングラフィックとモノトーンの世界観がマッチしており、かと思えばBuffalo ChargeやMarkaのときはすかさずMVが流れたりと、当意即妙のセレクトがハマってた。

StrategyのMCはもちろんトラックに合わせたものから、そうでないときは日本語を交えたフリースタイルで次から次へと言葉が出てくる。事前にオンエアしてたblock.fmでのライブミックスのときもだけど、なぜか「オモテナシ」とか「明治神宮ニイキマシタ」みたいな謎の報告も連発してておもしろかった。「ワタシハ東京ニ住ミタイ」とかの雑なリップサービスもよかった。

いやもうなんか、とにかくカッコ良くてめちゃくちゃ踊っちゃった。素晴らしい体験だった…。今なお余韻を引きずっているような感じ。

朝4時台の渋谷

Dub Phizixの音楽にDJミックスでどっぷり浸かるなら2015年の"Fabriclive 84"(各種配信サイトにある)か、2013年に公式でYouTubeに上げてるStrategyとの音源"Dub Phizix and Strategy - Kmag guest mix"が手軽でおすすめです。

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