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熱海こがし祭りに行ってきた

熱海にヘンな祭りがある、と聞かされたのは去年のこと。たまたま祭りの時期に当地を訪れていた友人が出くわしたのだそうだ。曰く、電飾で彩った派手な山車(だし)や版権ギリギリアウトの創作山車が街中に次々と現れ、海岸の目抜き通りを「熱海にこんなに人がいたのか」というくらいの大勢の地元民が埋め尽くす、というもの…。

熱海といえば、一時期の"終わった昭和の観光地"みたいなイメージからはそれなりに盛り返して、今や駅前の再開発が進んだりとか若い人向けの洒落たお店ができたりしている。でもまあ、そうはいっても、平時は落ち着いた…悪く言えば閑散としている印象だった。しかも、何度か遊びに行っているのにそんなエキセントリックな祭りを毎年やっているなんて聞いたことがない! おもしろそうなので、今年はその祭りの日程に合わせて仲間で熱海を訪れることにした。

7月15日日曜の午後5時過ぎ、町に繰り出すと、さっそくありえないものが路地からぬうっと現れた。

なにー! これー!

なんとゲーム『スプラトゥーン』をテーマにした山車だ。しかも、この緑のハリボテのイカが可動式で左右にグングン動く。この乗り物の2階部分に乗った子供たちが太鼓や笛やカチャカチャした鳴り物を響かせながら、周りのハッピのおっちゃんたちが誘導している。なんだこれは。

さらに海側に向かって道を下っていくと、あちらこちらに個性的な山車が現れる。沿道は祭りの関係者と思われる老若男女と地元民と観光客でごった返し、山車の上では夕日をバックにお兄さんが仁王立ちしている。

このお祭りは「熱海こがし祭り」といって、熱海を代表する神社、來宮(きのみや)神社の例大祭の一環として行われているそう。一般的な御神輿のほかに、熱海市の各町内がそれぞれの町名を冠して制作した山車…いわば改造トラックを引いて、最終的にその出来栄えを競うというもの。そう、これは由緒正しい神社のお祭りであり、同時に各町内会による改造デコトラ30数基のガチバトルなのです。

メイン会場は熱海サンビーチ沿いの国道135号で、時間が来ると熱海のあちこちから順繰りに山車を引いた熱海っ子が集まってきて、審査会場の前を通ってひとしきり大騒ぎし、めいめいの町内会の拠点に帰っていく。

我々はサンビーチ南端のジョナサンの前付近に陣取って、次々に現れる山車を撮る。それぞれの山車がそれぞれのリズムを鳴らし、ハイテンションの子どもたちが踊り狂う。おっちゃんおばちゃんがそれに付き添って飲みながら歩く。

ビーチを臨むレトロな喫茶店がこの日ばかりは特等席になる

ちょっとやんちゃなノリの少年少女たち

スモークがヤバイ

この交差点では頻繁に山車が交錯する。別に押し合ったりして戦うわけではないけれど、お互いにチャカポコ鐘や笛太鼓を鳴らし、声を枯らして祭囃子をコールする。山車はLED電飾を使った現代的でド派手なデザインにもかかわらず、音楽がスピーカーを使った流行歌やダンスミュージックではなく、あくまで古典的でオーガニックな生の土着のリズムなのが、かえって熱い。異様な興奮がある。

版権モノの扱いがなんだかユルめなのも特徴的で、さっきのスプラトゥーン山車もそうだし、こんな巨大なネコバス山車も堂々と道を行く。これとかはまあ、すごくよくできているし、何ならジブリに許可とっているのかなと思うくらい。

ただ、この魔女宅のキキのギミックがひどくて、山車の後方でビールを飲みながら歩くおっちゃんが紐をぐいぐい引くと、そのたびにキキのスカートがワーオみたいにしてめくれるのだ。ハハーン、これは許可とってないね。

目がキマっているミッキー

しかしそれでも、参加者の方々がこの日のために相当な時間をかけて準備してきたのは明らかで、何より彼ら自身が祭りという非日常を楽しんでいるのが伝わってきた。これは大変に見応えがありました。

熱海こがし祭りおよび山車コンクールは、あくまで來宮神社の例大祭の一環として行われるもので、必ずしも平日でない日に当たるとは限らないそう。2018年はたまたま日曜日に当たったこともあり、しかもコンクールが第50回(!)というアニバーサリーだったこともあってか、すごい人出でした。まさしく、熱海にこんなに人が集まることってあるのか…みたいな感じ。

熱海銀座商店街を抜けて帰っていく山車
お疲れさまでした!

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