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春日井駅から春日井駅に乗り換える

「足柄駅乗り換え」というものがある。
冗談で作られた下のネタ画像を実際に歩いてみる試みのことをいう。同じ名前ながら所在地が異なるJR足柄駅と小田急足柄駅、その間、距離は約25km。道中には足柄峠が控えるハードな道のりだ。

歩いてみた例

同名なのに所在地が異なる、似たような駅が近所にもある。愛知県春日井市にあるJR春日井駅と名鉄春日井駅だ。両者の距離は約5km。足柄駅より楽そうなので歩いて乗り換えてみた。



出発 JR春日井駅

名古屋駅から中央線で郊外へ20分。そんな位置にJR春日井駅はある。
1日の平均乗車人数は約15000人。列車は平均8/1h程度でやってくる、郊外のそこそこ利用されている駅だ。 少し前まで木造駅舎だったのも今は昔、改修で近代的な見た目になった。改札横のベルマートで食料を買い、北口から出発。

全国有数の生産量を誇るサボテンが元気

駅前は比較的大きめのロータリーで路線バスやタクシーが行き交う。進んでいく一画は水商売のお店が多くてミニ歓楽街な印象だったけれど、通ってみるとあまり面影がない。コロナのせいなのか日中だからなのかよくわからない。駅へ向かう人と逆に進みながら、名鉄春日井駅を目指して北西の方向に歩く。川(地蔵川)を渡り、住宅街の中へ。

確かに水の透明度が上がった。昔は洗剤の泡とか浮いてた気がする。

1km

住宅街を通り抜け、市役所の大きな建物を目指す。道中ユニオン劇場の横を通った。成人映画館だ。都会ですら珍しいものがここに残っているのはすごい。気骨を感じる。

この辺りにいわゆる下街道が通っている。名古屋城下と中山道をつなぐ昔ながらの道で、よくよく見ると街道らしい雰囲気の残り香が漂う。往時は賑わっていたようで、今も商店を続けている家も見受けられる。映画館があるのも人が多かったということなのだろう。

下街道を渡るとすぐに市役所が見える。ここまでで30分。図書館や市民会館もまとまった位置にあり、ここが春日井の行政の中心部となっている。広場の謎オブジェを尻目に先を急ぐ。

市役所
図書館と謎オブジェ

2km

市役所の裏は国道19号。ザ・春日井という光景が広がる。なんだかんだこの町でいちばん栄えているのは19号沿いだろう。今回は車ではないのでさっさと横断してしまい、また住宅街を抜け朝宮公園の近くまで行く。しばらく歩いた道はそれなりに交通量があったが、歩道があるので安心して歩くことができた。ちょくちょくパトランプのついた喫茶店を見かける。東海らしい光景。

ポケットパークの調圧槽

開始から45分、少し疲れてきた。体力がない。休憩場所を探してキョロキョロしていたら塔のようなものが見えた。浄水場のはしが小さな公園になっている。ベンチがあったのでしばし座らせてもらうことにした。塔のようなものは調圧槽で、施設の改造工事の際、取り壊したのを記念に縮小復元したものだという。1930年代ぽいデザインだなと思ったら昭和8年築でビンゴだった。

3km

またひとつ川(八田川)を越えた。奥に見えるこんもりとした緑が朝宮公園らしい。あんまり行ったことはないが競技場などのある大きな公園だ。その昔は尾張の殿様が鷹狩りに来る場所で、休憩用の御殿がこの界隈にあったという。このあたりでだいたい1時間が過ぎた。

4km

突然の生産緑地

また住宅街に入る。家々の間に急に田んぼが現れたりしている。人はあまりいない。たまに行き会うのはご老人だ。うっすら思っていたが春日井では歩いている人が少ない。みんな何かしらの車両に乗っている。ありとあらゆる人間が車に乗るため車通りが激しく、車に乗らない人間も自転車を使う。
そうこうしているうちに西部ふれあいセンターの交差点に出た。「西部」とついているので春日井市の真ん中から西のほうまでやって来たらしい。

5km

名鉄春日井駅が最寄りというエリアに入ってきた。だんだん道が細めになる。ちょっと昔っぽい道だ。前を通った春日井小学校の門がやたら古めかしかったので、後から調べると明治時代から続く由緒ある小学校ということがわかった。 かなり広い田畑を潰して住宅地の造成をしているらしく、細い道を重機が通り過ぎてゆく。しばらく歩くと県道27号とぶつかった。少し先に踏切が見える。ゴールが近い。

到着 名鉄春日井駅

名鉄春日井駅に着いた。小さな無人駅だ。
改札は自動、券売機が1台ある。1日の平均乗車人数は1000~1500人程度。ダイヤは平均4/1h程度で、朝夕ラッシュ時はもう少し本数が増える。自分が着いた時には数名のお客さんが電車を待っていた。周りには畑と住宅が広がりのどかな眺め。駅のすぐ先には小牧の飛行場があり、自衛隊の飛行機が飛んでいくのが音でわかる。
乗り換えは14:21の列車に間に合った。JR春日井駅の出発が12:40過ぎだったので、自分の場合のコースタイムは1時間半ちょっと。理論上はこの時間で乗り換えが可能でした。

春日井駅はなぜ二つあるのか

乗り換えは無事終了したが、そもそもなぜ同じ市内に同名の駅ができたのか。二つの駅の来歴を少し調べてみた。

名鉄春日井駅
「春日井駅」としての元祖はこちら。1931年(昭和6年)に名岐鉄道という会社により開業し、のちのち名鉄小牧線になった。駅名はこの界隈の昔からの地名「春日井」から取っている。シンプルな由来。

JR春日井駅
駅として年上なのはこちら。ただ、当初は「春日井駅」という名前ではなかった。
今のJR春日井駅は1927年(昭和2年)に国鉄「鳥居松駅」として開業。このころの中央線は勝川~高蔵寺間に駅がなく、鳥居松村を中心とした地元民の間で誘致活動をして新駅ができた。村々が春日井市として合併した後、鳥居松駅は1946年(昭和21年)に「春日井駅」と改名して現在に至る。
改名の詳しい経緯はよくわからなかったが、1943年(昭和18年)の春日井市発足を経て、市の中心部に近い鳥居松駅が代表として「春日井駅」というネーミングになったような雰囲気がある。名鉄とのダブりが気にされていたかは不明。

感想

  • ちゃんと5kmある。実用的な乗換は無理。

  • とはいえ平坦で苦労のないルート。思ったより早く終わった。

  • 基本的にずっと市街地なので安心。ポイントを押さえておけば飲食やトイレで悩むこともない。歩道のない道で車がビュンビュン走るようなところだけ注意。

  • 家しかない。永久に宅地が続く。この家々がなかった頃はどこまでも野原だったのだろうと思う。

  • 楽しい行程かといわれると微妙。健脚かつどうしようもなく暇な方の娯楽として。

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