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企画展「大阪の長屋」~変わりゆく町であえて古いものを残す~

Osaka Metro天神橋筋六丁目駅近く、大阪くらしの今昔館の企画展「大阪の長屋」を見てきた。
江戸時代から現代にかけての大阪の長屋の歴史やそこにあった文化について語る展示である。
長屋というのはざっくり言うと、細長い建物で、その長い建物を分割してそれぞれの世帯が暮らしているようなものだ。
Twitterをだらだら眺めていたらたまたま展示についてのツイートを見つけて、4月16日が展示最終日だったので慌てて見に行った。
展示物よりパネルやキャプションがメインの展示だったが、これはこれで面白かった。

まず興味深かったのは大阪は昔から住宅過密都市で、たくさんの長屋が軒を連ねていた場所だということだ。大阪平野にこまごまと長屋が広がる光景は圧巻である。


地図を見ても小さな長屋が細胞のように並んでいて、その間を通りが血管のごとく通っている。
大阪は町人の町、というのは聞いていたけれど、実際小規模な世帯が多かったのだなあとわかる光景である。
長屋の大家はもちろんお金持ちで、芸術や文化の面で大阪を支えていたが、大家と店子の子ども同士で遊ぶなど、完全に階級が分かれていたわけではないようだ。
うちの近所にも「あの人はこのあたりの長屋の大家だった」と伝えられる一家があるのだが、確かにお金持ちだけど殿上人という感じではなかった。時代の流れによって土地を手放したという事情はあっただろうが。
とはいえ店子が家賃滞納したときの差し押さえの話や、それに使われた書類も紹介されているので、このあたりの悩みは現代と変わらないなあと笑ってしまった。というかこういう書類も残しておくなんて、博物館って本当にいろいろなもの持っているよなあ……。

後半になると、長屋文化を後世に伝えるためのリノベーションについての展示になる。
大阪各地のさまざまな長屋がリノベーションされ、住宅や店舗などに使用されている。
私も大阪の人間なので、この建物は見たことあるな、というものもあった。何気なく見逃していたが、歩いている町にも実は多くのリノベーション長屋があったようだ。
長屋の紹介パネルと共にリノベーション後の模型が展示され、部屋の中がどうなっているかも見ることができる。長屋の中は個人の住宅や店舗になっているので気軽に見られない。これは嬉しい展示物である。
長屋らしい外観を崩さないまま、中は結構自由に改築していて、かなり思いきったデザインのものもある。見た目と中身が一致しない宝箱のようで面白かった。


紙と木でできた建築ではあるし、地震のリスクもあるので日本で古い建築物を維持し続けるのは難しい。近所では、数少ない長屋の町も、「南海トラフが来たら全部倒壊するのではないか」と噂されている。
それでもやはり昔の人が暮らした場所を現代の人が引き継ぎ、新しいものを加えるということは大事なのだと思う。
今から新しく「長屋っぽいもの」を作ろうとしても、それは過去の長屋とは別物になってしまう。だからこそ改築してでも今ある長屋を守ることが大事だ。
大阪には建築規制が少ないので、放っておくとどんどん町並みが変わってしまう。そんな中であえて古いものを残し、町の財産にしていこうという人々のことを、私は応援したい。

町に観光客が戻りつつあるのもあり、大阪くらしの今昔館には外国のお客さんも多かった。昔の建物の復元模型や文化の紹介があるので、確かに観光客向きの博物館だよなあ。

帰りに台湾カステラ屋でおやつを食べた。台湾カステラを初めて食べたけど蒸しパンとカステラの間みたいな味だ。
ふわふわで空気を含んでいておいしい。
何かに似てるな……と考えて気づいたけどりくろーおじさんのチーズケーキに似ている。りくろーおじさんのチーズケーキからチーズ要素を抜くとかなり台湾カステラなのでは。


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