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「じぶん編集」の授業

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美術大学で学生に伝えている、デザインにおける考え方やコミュニケーション、健やかに生きていくための思考方法のまとめ。「じぶん」を再発見する為にどんなことを普段授業でしているかをご紹… もっと読む
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#デジクリ

「またご飯でも!」を、もうひと押しすると関係が進展すること。

「今日の授業は、ちょっといつもと違うことを話しますね。みなさんは、人とばったり会う、人とネットで久しぶりに何かしらやりとりする、ずっとお話したいと思っていた人と話せる機会ができた、なんてときの別れ際、もしくはやりとりの最後の部分で『またご飯でも!』なんていう挨拶をしたことありませんか?」 僕の問い掛けに対して学生が答えます。 「ごはんには誘わずに、シンプルに『またね』と挨拶することが多いかもです」 「確かにみなさんは『またね』の方が多いかもしれませんね。 でも社会人にな

妄想の解像度が上がると、人は行動に移りやすい

「例えば、これからお昼ご飯を食べに行くとします。ラーメンにしようかなぁ、蕎麦もいいなぁ、と2つの候補が出てきた時、どっちを選びますか?」 唐突にこんな質問を学生にしてみます。 「えーっと、美味しい方を選びます」 「そりゃそうです。僕も美味しい方に行きたいです(笑)その美味しい方というのはもっと具体的にいうと、頭の中でどんなイメージでしたか??」 「ラーメンは、いつも行く京都駅近くのラーメン屋さんの、チャーシュー麺が出てきました。醤油ベースのさっぱりスープでチャーシュー

自己紹介は、じぶんのキャッチコピー選手権

僕は京都精華大学でずっと2年生を教えています。年齢にすると19、20歳の学生です。毎年4月に新しい学年が始まるのですが、授業の初日は僕の自己紹介のあとに、学生に自己紹介をしてもらうのが恒例となっています。 さて、ここで面白いのが「自由に自己紹介をしてください」というと、何故か毎年みんな同じ形式で自己紹介をしてしまうことです。 「わたしの名前は◯◯◯◯です。△△△(出身都道府県)から来ました…」と、同じフォーマットを繰り返すだけの時間が訪れます。 うーん、せっかくみんなを

後ろ向きにマクドナルドまで歩く授業

最近新しく始めたことって何かありますか? だいたい、年初め、年度初め、誕生日なんて日から何かを改めたり、始めたりする方は多いと思いますが、ぜひその際は知識を得るだけの行為ではなく、体験、行動を伴うようなことを始めていただきたく思います。 学問なき経験は経験なき学問に勝る、といいますが、これに僕は心底同感します。 机上対現場、どちらの方が人の記憶に残るかというと、圧倒的に後者ですし、実際に自分の学生時代の記憶を呼び起こしてみても(じぶんが聡明でなかったせいもあり)座学よりも、

いいね!と思う人と悪いね!と思う人は同じ数いる説

1.「自信がないんです」 2.「怖いんです」 3.「実力がまだないんです」 どうして自身の作品ををアピールしないのですか?と美大生に聞いたときの返答は、だいたいこの3つです。今日は「称賛と批判」についての授業です。 「さてみなさん。1.自信がないことと、2.怖いことは批判されることへの恐怖ですね。ここでひとつ確認をしたいのですが、この考えのベースには、自分の努力次第で批判より称賛を得られるという考えを持っていませんか? 例えば、10人に何かしらのアプローチをかけて、はじ

じぶんカメラの話(2)

今回は、前回の授業の続きです。 『じぶん自身を見るカメラ』に続く、『世の中を見るカメラ』の話です。 - - - 「コミュニケーションって、憑依(ひょうい)することだと思うんです」 はい。憑依という言葉が強すぎるのがわかっていながら、そういう表現をいたずらに使いたいだけです。とはいえ、学生の怪訝な表情を察知すると『通じないとマズいぞ』と弱気になり、すぐさま別の言葉で言い直します(笑) 「違う言い方をすると、他の人の視点、すなわち他人のカメラをハックすることとも言えます」

じぶんカメラの話 (1)

人は写真に写るとき、ちょっとでも良く写ろうとします。 笑顔をつくったり、顔が小さく見えるようなポーズをしてみたり。 あれって、誰のための、何のための演出なのでしょうか。後でじぶん以外の人に見られて恥ずかしくないように、なんて対外的な理由として、じぶんを納得させてしまいがちですが、本当はじぶんの写っている写真を見返すのは、本人がいちばん多いのではないでしょうか。 となると、より良く写りたい願望というのは、未来のじぶんが写真を見返したときに、過去のじぶんを肯定したいという気持

面接官に入れ替わる。彼氏に入れ替わる。

数年前、学生が就活をしている時期に、2年生の時に教えていた女の子から連絡がありました。なんでも、その日の午後に東京の大手企業の最終面接があるのだけれど、何を話していいのか、どのように話していいのかが全くわからなくなり、軽くパニックになっているので、できれば会って話を聞いてほしい。ということでした。丁度そのとき僕も東京にいたので、お昼ごはんを食べながら話そう、ということになりました。 「ものすごく緊張してるし、本当に何を話していいかわからないんです。 どうやったら会社に気に入

いい学校、いい会社、いいデザイン。

「小学校、中学校、高校、大学と、みなさんは16年間も勉強しますよね。どうしてそんなに勉強するのでしょうか?」 「いい学校に入って、いい会社に入るため。それで、いい会社に入っていいお給料をもらうため」と学生。 「なるほど。では、いいお給料は何に使うのですか?」 「家を買って、家族を養って、一生お金に困らないよう生活をするためです。 あ、あと自分の趣味のために使いたいからです」 「リアルー。現実生きてますねー(笑)それが、みなさんの勉強をする理由ですか?それ以外の考えをお

うまくやる

熊野 森人(くまの もりひと)と申します。 広告の企画会社である株式会社エレダイ2の代表をつとめる傍ら、京都精華大学でデザインにおける考え方やコミュニケーション、健やかに生きていくための思考方法を教えています(詳しい前書きはこちら)。 * * * 僕の授業では、絵を描きながら講義を聞いている学生がたくさんいます。そんな彼らにこんな話をしました。 「いま、僕が話している最中に絵を描いている人がいますよね。僕は別にいいと思ってるから『描かないで』とはいいません。 みな

まえがき

はじめまして。熊野 森人(くまの もりひと)と申します。 東京で広告企画、ブランディングの会社を営む傍ら、京都の大学で講師をしています。僕は28歳の頃から京都精華大学という美術大学で非常勤講師をしており、今年で40歳になります。もう少し細かくお伝えすると「デザイン学部ビジュアルデザイン学科デジタルクリエイションコース」(長いですね) というところで、デザインにおける考え方やコミュニケーション、健やかに生きていくための思考方法を教えています。 このnoteでは、新しいものの