モチベーション - エモーショナルデザインを考える

私たちが何かを学ぼうとする場合にはモチベーションが欠かせない。でもそのモチベーションがどこから来るのかによって、効果が違ってくるのだ。

Happy learners are better learners.
ハッピーな学習者はよく学ぶ。

外的モチベーションと内的モチベーション

例えばゴールが「かけ算をマスターすること」だった場合に、外的モチベーションを使った場合には「かけ算をマスターしたらこのゲームができる」というようなものだ。ゲームじゃなくてお金でも何でもいい。子供に「ほうれん草を食べたらアイスクリームをあげる」というのと同じだ。

内的モチベーションは「かけ算をマスターする」プロセスそのものが楽しくてやりたくなるものだったり「ほうれん草」そのものが美味しくて食べたくなったり、というものだ。

親業との共通点

私には子供がいるのだけれど、誰か他の人間の親になるのは初めてだったので、親になったばかりの頃に色々と本を読んで勉強をした。その時に学んだことの一つに「賞罰による子育ては効果が薄い」ということだった。これは『親業―子どもの考える力をのばす親子関係のつくり方』(トマス・ゴードン著、1998)という本に詳しいので、興味がある方は読んでいただきたい。

システムを使って何かを効率的に学ばせようとする時に考慮しなくてはいけないのは、内的モチベーションを上げることであり、学んだことによって別の何かの報酬を与えることではないのだ。

ちなみに私自身は「賞罰制」の養育を受けた。そしてその弊害を実感している。例えば試験で上位何人以内に入るとお金がもらえる、といったものだ。しかしこれは例えば自分でアルバイトをして稼げるようになると相当な高額でない限り役立たなくなる。勉強が面白いと思えなかった私は、バイトでお金を稼ぐ方にむかったわけで、色々と学ばずに高校を卒業した(それで卒業させていいのかという疑問もあるが感謝している)。

モンテッソーリ教育との共通点

子供を持ったことでモンテッソーリ教育にも興味を持ったのだが、これもまさに内的モチベーションを上げることに集中している。

モンテッソーリ教育では、教師が何かを教えて、それを試験でランク付けするということは行われていない。学ぶための教具や環境が美しく、ユーザ(この場合は子供)の「使いたい、触りたい」という内的モチベーションを引き出すアフォーダンスを備えているのだ。まさに感情のデザインが組み込まれている教育であると言える。

外的モチベーションは安易なソリューションかつ効果が薄い

外的モチベーションは極端なことを言うと、拷問や虐待の世界になる。痛い思いをしたくないならこれをしろ、あるいは、これをしない限り必要なもの(愛情・食糧・家)を与えないぞ、と言う脅しだ。

虐待や拷問で得られたスキルも役に立たないとは言えないが、そのスキルを活用する時には常にネガティブな感情が付きまとうであろう。ネガティブな感情を持ったまま行われる行為は、効率的ではない。

極端な例になってしまったが、そんなわけで、デザイナーが効果的にシステムを利用してもらおうとする場合、ユーザの中にある内的なモチベーションを刺激するようなデザインをすべきなのだ。家庭や教育においても、ひとびとの内的モチベーションを刺激する環境や言動が大切なのだ。みんなの幸せのために。

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