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【21】「安住紳一郎の日曜天国」放送後記(ゲスト編)

2023年7月23日のTBSラジオ「安住紳一郎の日曜天国」ゲストコーナーにお招きいただきました。今回が5回目。こんなに長いおつきあいをさせていただけるとは……ありがたいことです。

落ち着いてる? あわててる?

毎回、放送後には多くの方から「落ち着いてしゃべってたよ」とフィードバックをいただくのですが、本人としてはあたふたわちゃわちゃで頭の中は大騒ぎです。もともとのメンタルが低温すぎるから、ちょっと興奮したぐらいが「平熱よりちょっと低め」に落ち着く、ということなのでしょう。

緊張すると頭も口も回らなくなり、本番中はつっかえたり、言い間違えたり言わずもがなのことを言ったり、動物の生態について不正確な表現をしたりの連続。スタジオを出ると深い自己嫌悪の沼に飲み込まれ、TBSの一階ロビーで座り込んだまま、数十分は立ち上がれなくなります。

まあ、後で聴き直すとそこまでひどくはないんですけどね。安住さんのウィットと、アシスタントの中澤有美子さんのサポートで、楽しいトークになっていました。安住さんの、「チンパンジーの話って、聞けば聞くほどチンパンジーがちょっと嫌いになるんですよね」はあらためて聴いても吹き出してしまいます。

とはいえチンパンジーに献上された「政治をするサル」という冠って、それだけの社会的な知性がないとできない営みですから、研究者目線だと「すごい」ことなんですけどね。安住さんとお話しすると、そういう文脈からひょいと離れたコメントが出てくるので、実に楽しいです。

つくづく、サルの世界って面白いですよね。とくに、人間に近いチンパンジーやボノボなどの類人猿は、人の写し鏡だなあと思います。

そんな話をしていたらあっという間にゲストコーナーの時間終了。タンザニア、コンゴ民主共和国、ウガンダと3カ国を周ってそれぞれに動物の話をするはずだったのが、ウガンダまでたどりついたかつかないかのところで終わってしまいました(笑)。

仲本千津さんの本『アフリカで、バッグの会社はじめました――“寄り道多め”仲本千津の進んできた道』の話も駆け足になってしまったので、また、ウガンダとハシビロコウと仲本さんの話でお邪魔することができたらうれしいなと思っています。

わたしがはいている「高い下駄」の正体

この番組にお邪魔すると毎回、「ライター江口絵理」の評判が爆上がりするのですが、それは、本番では安住さんに、そして準備段階ではディレクターの方に「高い下駄」をはかせていただいているからです(断言)。

ディレクターさんは毎回、事前に丁寧に勉強されます。今回は、「旅の話がメインで本や仲本さんの話は少しだけ」と決まっていたんだけど、それでもディレクターさんは本を読んだ上でわたしとの打ちあわせの場にいらっしゃいました。その誠意がうれしいですよね。

わたし自身にもじっくりヒアリングをして、どのエピソードを取り上げるか、全体をどんな構成にするとうまく進むかを考えて進行台本を作成。本番前に、安住さんのご意見も反映されて完成台本ができます。

この進行台本が、面白さの源です。話すことを全部決めておく台本ではなく、あくまで「流れ」と「トピック」を示したもの。わたしが出ただけじゃ、面白くならない。安住氏+ディレクター氏という鉄人的料理人の腕あってこその「ゲスト de ダバダ」なのです。


ひとり反省会、開始します


さてさて、ここからはひとり反省会です。七面倒くさいうだうだを繰り広げていますので、お急ぎの方はどうぞ上の線までで終わりにしちゃってください。

動物ライターとしては、いかに緊張していたとしても不正確な表現をしたくはない。のだけど、くるくるとアクロバティックに様相を変えるトークの中で、十分に正確に話すのは至難の技。というかできなかったです。

たとえば、いま自分が話しているのが高崎山の「ベンツ」という一匹のニホンザルがとった行動なのか、高崎山という特殊な環境に生きているニホンザルの社会に特有の話なのか、ニホンザルという種全体に当てはまる話なのかをちゃんと区別して話したいんだけど、あわてているせいでごっちゃになってしまったり。

たとえ話で基本的な概念を説明するのと実際に見られる状況とはまた違うんだけど、そこまで説明しきれないことも多々ありました。

たとえば、

・ニホンザルの社会は序列がきっちり決まっている(これは基本的に正しい)
・だから1位と2位などの上位だけでなく、167位と168位というような下位の間にも厳然とした上下関係が存在する(考え方としてはそうなんだけど…)

たとえ話としての「167位と168位」はOK。でも自然界では、そこまで下位の個々の関係性は確認できないでしょう。高崎山でも、餌場の中心に出てくるのは上位のオスだけなので、下位のオス同士の序列を確かめるテストはしにくい。ただ、ちょっと昔の資料ですが、かなり下位の順位まで把握されている表を見せていただいたことがあります。

そういう話が多々あるんですよね。

ボノボのパートでも、「餌がたくさんあって興奮したりすると、あちこちで性行動が始まる」という話をしました。これは、飼育下でサトウキビなどをドーンと真ん中に置いたときに起きる光景です。

自然界ではそこまで極端に食べものが現れる状況はほとんどないですが、たとえば森の中で隣の群れと出くわして緊張が高まったときなどに性行動が起きます。そして、チンパンジーでは考えられないような平和的な出会いが実現します。

また、性行動は争いを収めるためだけでなく、絆を確かめ合うというような、挨拶代わりに使われることも多い。

そんなことも話したかったんですが、こうやって書いてみると、端的に言うにはそうとう場数を踏んでないと無理ですね。精進します。


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