見出し画像

【17】後ろ髪を引かれつつ、本文からも、カバーからも手を離します

書名が決まり、カバーデザインが上がった「仲本ウガンダ本」。でもまだ、責了までにはやらなくてはいけないことがたくさんあります。

責了(せきりょう)とは?

出版業界の専門用語です。「これで直しは全部終わり!」という宣言のようなもの。

いま、どんな工程かというと、責了の一歩手前。本文のゲラ(モノクロの試し刷り)や、写真満載の口絵のカンプ(フルカラーの簡易な試し刷り)、カバーや表紙などの色校正(色を確認するための、印刷機で印刷した本格的な試し刷り)を確認しています。

ここで、すべての修正箇所を赤字で指示し終え、その通りに修正した試し刷りをあらためて確認して、「はい、これでこのまま刷ってください」と印刷所に言えれば、それが「校了(こうりょう)」です。校了できれば、もっとも安心です。

しかしなかなか、校了ってできないものなんですよね。そんなに何度も試し刷りは出せないし、出せば出すたびに修正箇所は見つかるもので、ある時点で、「もうこの修正が最終。あとは、印刷所で修正して、指示通りに直っているかどうか確認して、確認できたら刷ってください」と印刷所にお願いします。

つまり、出版社側から見て「あとは印刷所にお任せ校了」が、「責了」です。

印刷所の責任において直してもらうので、あまり複雑で数多くの修正があると、責了にはできません。ごくシンプルな少数の修正になったときに初めて、責了が宣言できます。

この本は、仲本さんのウガンダ渡航(6月22日)より前にどうしても仕上げたい、という事情があったので、制作の最終局面となる6月初旬にはバッタバタの大急ぎになり、ふつうは編集者だけが見る、「本文白焼(ほんもんしろやき)」まで著者のわたしも見せていただけることになりました。

白焼とは、昔は「藍焼(あいやき)」と呼ばれていて実際に藍色だったのですが、いまは白い紙にプリントアウトしたものなので白焼と呼ばれています。ほんとにほんとの、最後の試し刷りです。

左からカバー「色校正」と、口絵の「カンプ」と、本文「白焼」

どんな本でも、これまで何度も何度も読んだのに!なぜ気づかなかった!という要修正箇所がいつまで経っても見つかります。この段階ではよほどの大きな間違いでない限りは、編集者さんから「もう直せません」と言われることも覚悟で「すみません、もし可能なら……」と小さくなりながらお願いします。

本書では、編集者さんは「ここがちょっと不自然な気がして」というレベルの直しでもひとつひとつ丁寧に検討してくださり、最大限、直しに回してくれました。ありがたい。印刷所の方にもご負担をおかけします。よろしくお願いします。

カバーなどの色はなにも問題なし! イラストレーターさんから超高度な間違い探しレベルに微細な直しが入りましたが、そこまでのこだわりを見せてくださったことに感謝しつつ、ようやく宣言です。

「責了〜!」

爽快かと思うでしょう? そんなことないんですよ、ここでは。

う〜、何か大きなこと見逃してないかな、やっぱりあそこ直すべきだったかな、と、後ろ髪を引かれます。

一日おくと、ざわざわ・ふわふわしていた気持ちがようやく落ち着きます。いや、これがいまのベストだ。100%はないのだから、あとは成り行きに任せよう。

神さまお願いします。印刷や製本や輸送が順調に進みますように。

(【17】終わり)



『アフリカで、バッグの会社はじめました――“寄り道多め”仲本千津の進んできた道』
著者:江口絵理
定価:1,500円+税=1,650円
出版社:さ・え・ら書房
刊行:2023年6月下旬

基本情報、最新情報はこちら(↓)から!


この記事が参加している募集

ライターの仕事

読んで面白かったら、左上のハートマークをぽちっとクリックしていってください。すごく励みになります。noteに登録してなくても押せます!