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山岳遭難の発見者になった時の話

最後の有給を使用し、最近失われた体力をアップするためにソロで登山をしていました。
山頂までは複数の登山道があり、私は静かに登りたいので人が少ない道を選んで歩いていました。

あと10分〜15分で山頂かな?というところで
「たすけてくださーい!誰か助けてくださーい!!!」
と女性の声が聞こえてきました。
耳を澄ますと登山道から外れただいぶ下のほうから聞こえてきますが姿が全く見えません。

え!?なに!?どうしよう・・・

山岳遭難に限らず110番などの手順はそんなに変わらないと思うので参考に書き記します。


状況の確認

私が声のする方角を確認している時に後方から6名の若者グループがやってきました。

私が助けてという女性の声が聞こえることをグループの人たちに伝え、一緒に声のする方向に大声で話しかけると、
・登山道を歩いていたが道に迷ってしまった
・滑落したわけではない
・怪我はしていない
・夫と一緒に来たが夫はすでに山頂のほうにいる
ということがわかりました。

ただ姿が見えなかったのと、登山道を外れて下へおりるのは滑落等の二次災害が発生すると思われたので、私が110番をかけました。
が!!!何度やっても私のスマホからなぜか110番へかからず・・・
焦りすぎ?格安スマホだからは関係ないですよね?(人生で初めてかけたし、今かけ直すこともできないので、どうしてかからなかったかの検証もできず。)

繋がらないのでグループの方に警察への連絡をお願いしました。若い子が前に110番にかけて怒られたことがあると言っていたので、これは絶対に怒られない案件だから大丈夫と言いました。

山岳遭難だと伝える

まず110番をかけて「山岳遭難」だとわかるように伝えないといけません。
(もし負傷者がその場にいる場合だったとしたら意識や呼吸、負傷状況の確認や安全確保を分担して同時進行でやる必要もありますね)

これを1人で通報するとなると通報する側もかなり慌てるし不安だと思いました。相手は怪我をしていなかったのと大声が出せる元気があったのでその場にいる全員がそこまで慌てずにすみました。

遭難者の状況を伝える

どのような状況なのか
怪我をしているかどうか
遭難者のいる場所が安全かどうか
110番の相手先から詳しく聞かれます。

きちんと伝えることで救助に来る人数や救急隊がくるかどうかも変わってくるのだと思います。見たものを言葉にして伝える力はどんな時でも必要ですね。

できるだけ詳細に場所を教える

町中であったらグーグルマップを見て大体の場所がいえる気がするのですが、山の中の情報を的確に伝えるのは難しいと思いました。

今、冷静に考えればわかりやすい伝え方があったとわかるのですが、その時はどのように場所を伝えたら伝わるのかがわかりませんでした。
みんな地図を見ながらあれこれ言い出し、結果誰か1名がしゃべるように指示されました。確かにみんなでごちゃごちゃ言ったら伝わらないですね・・・。

指示に従う

わかっていましたが通報した人はその場に残るように言われます。私ではなく電話をかけてくれたグループの女性が残らねばならなくなりました。

遭難者の体力が奪われないよう本人になるべく大声を出させないようにする
また救助を呼んでいることを本人に伝え安心させる
遭難者はその場を動かないようすること
これが大切だとわかりました。みんなでかわるがわる大きな声で伝えました。

旦那さん登場

来るはずの奥さんが来ないので電話をかけたら遭難していたことに気づいた旦那さんがやってきました。
とてもよく登る山で登山道もわかりやすいから大丈夫だと思い、体力に差があり登るスピードが違うから山頂で会う約束をして最初から一緒に登っていなかったとのこと。
どこに迷うポイントがあったのだろうか?ととても驚いていました。
おそらく途中から分岐を間違え登山道をはずれたことに気づかずどんどん登ってしまったのではないかと勝手に推測しました。

山岳救助隊到着

何十分も待ってレスキューの方がやってきました。これでも人気の山でほぼ山頂まで車が登れるので来たのが早い方だと思います。

登山道にいたグループの人や後から駆け付けた遭難者の旦那さん、私から状況を確認しました。
発生時間を聞かれたのですが、そういえばこういう時は時間を確認しなければいけなかったと思い出しました。110番をかけた時間より5分くらい前かな?という感じです。

人の記憶や感覚は曖昧なものなので、余裕があれば都度時間を見ておいた方がいいと思いました。特に負傷者だった場合、時間は大切かもしれません。

レスキュー隊の方は遭難者のいるだろう方向へもうすぐ救助する旨を伝え、足場が安定しているところなのかを確認し、(上から降りるので)石などが落ちるかもしれないから木にしがみつくように伝えていました。
また話しながら声のする方向を確認しだいたいの場所を特定していました。「これは30メートルくらい下だね」と言ってました。
そして無線で本部へ状況を連絡。通報したグループの方へはもう登山を再開していいよと伝えていました。私は第一発見者なので少し待つように言われました。

しばらくどこから降りるか探していると後方からもう一人のレスキューの方が到着。1名が木にロープを結びつけ、急勾配の山を救助に下りて行きました。
私は登山道に残っているレスキューの方に見つけた当時の状況と連絡先を聞かれ、「もう旦那さんもいるし救助が来ていて大丈夫だから立ち去っていい」と言われたので下山することにしました。
→後ほど無事救助され怪我もないとの連絡をいただきました。

振り返り

このようなことは何の前触れもなく突然起こるので、状況判断能力も必要だし、知識があるかないかというのはパニックを防ぐうえでも大切だなと感じました。

私ができたのは救助隊が来る前に「助けに行けるかも」と言い出した人を止めることと、後から来た人が「緩やかそうな斜面が見えるからあそこから自力で登ったら登山道に出れると教えてあげたらいいのでは?」と無責任にいったのを「こちらからは状況が見えないから遭難者は動かないほうがいいです」と伝えることくらいでした。

前に白馬岳の帰り道の小蓮華岳で足首を骨折し動けなくなった人がまさに救助要請の電話をしている現場に通りかかったこともありますが、ヘリコプターが来たのはその電話から1時間後くらいでした。吹きさらしの山の稜線で1時間待つのは体温が奪われるのでこんな時にもエマージェンシーシートが活躍するんだなと学びになり、シートを持ってない山友達にプレゼントしたことがあります。

自分が遭難した場合にどうするか
また見つけた相手が怪我人だったらどうするか

大地震がきたらどうするか?を時々見直すみたいに、山に限らず日常で起きるかもしれないトラブルをイメージすることや、知識を蓄積しておくことは突然のトラブルが起きた時に最適な解決方法を判断する力になると思いました。


思い出したので追加で書きます。

登山家の花谷さん(木下斉さんのVoicyで対談されたことがあります)のnoteの記事は以前に読んだのですが、やはり登山をする上で自然を相手にするということの心構えみたいなものも大切にしたいと思います。

↓日本の山岳ビジネスについて語っていて、登山の話も木下さんが考えるとビジネス視点になるんだなととても面白い放送でした。


防げるはずの遭難事故が減るように情報の共有と自己管理もあらためてしていきたいです。

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