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ゲイカルチャーをムーブメントにして世界の偏見を変えた80年代のアーティスト達

LGBTQという言葉を様々なところで聞くようになり多様性を意味するダイバーシティーに対する意識が急激に高まっています。国籍や性別、年齢などの違いから身体的な特徴や性的指向まで世界規模で既成概念を破らなければならない時代になっています。しかし、実際には多様性を受け入れ、それぞれの価値観や発想を活かすことは言うほど簡単ではありません。正論をいくら聞いて頭だけで理解していても偏見は取り除かれません。


80年代を中心に音楽の表現を通してLGBTQの偏見に大きな変化を与えたアーティストが登場しました。今日は、そんな偉大な、そして勇敢なアーティストをご紹介します。

アメリカにおけるゲイのイメージアップに貢献したヴィレッジ・ピープル

80年代に突入する直前1977年、フランス人音楽プロデューサーのジャック・モラリがニューヨークのグリニッジ・ヴィレッジにあるゲイ・ディスコを訪れた際に、インディアンの衣装を身に着けたダンサー、フェリペ・ローズに出会い”ゲイの象徴的音楽グループ”と思いつきヴィレッジ・ピープルを結成しました。

ただ、当初、ターゲットとしていたゲイから、ゲイをパロディ化し馬鹿にしていると批判されてしまいました。そこで一般の人をターゲットに音楽性もポップ路線へと変更することで世界的スターとして大成功を収めたのです。 ヴィレッジ・ピープルは、ポップス史上、ゲイ・イメージを表面に出して音楽活動を行った最初のグループといわています。ヒット曲には "Y.M.C.A."(1978年)、ピンクレディーもカバーした "In The Navy" (1979年)、ペットショップボーイズがカバーした"Go West" (1979年)があります。

外見への差別を訴えたカルチャークラブ

カルチャークラブは、奇抜な女装ファッションで注目を浴びたボーイ・ジョージを中心に1981年に結成されました。奇抜なファッションに話題が行きがちですが音楽的にも優れた楽曲とボーイ・ジョージのソウルフルな高い歌唱力の素晴らしいアーティストです。最近のライブ映像でも、その素晴らしい歌唱力を披露してくれています。年齢を重ねさらに魅力的になりました。

1982年には『Do You Really Want To Hurt Me』が全英1位となり、女装したボーイ・ジョージが偏見の目に晒され連行され裁判にかけられるという衝撃的なPVは、差別に対して真正面から戦いを挑んだ歴史的な作品と言えるでしょう。映像の中では有色人種への差別に対する抗議の強いメッセージも込められています。

"Do you really want to hurt me 
Do you really want to make me cry 
Precious kisses, words that burn me 
Lovers never ask you why"
"僕を本当に傷つけたいの?
僕を本当に泣かせたいの?
大切なキスや言葉が僕の心に火を灯すんだよ
君が恋人なら、それがどうして?なんて聞かないよね"

ゲイであることは原罪なのか?心の叫びを表現したペットショップボーイズ


1981年に結成されたペットショップボーイズ。West End Girlsの大ヒットでスターダムに上がります。ペットショップボーイズの特徴は、ポップな曲調の背景に潜む深い社会への風刺的メッセージを込めるところにあります。ボーカルのニール・テナントは1994年にゲイであることをカミングアウトしていいますが、カミングアウト前の1987年にヒットした“It's a Sin”からゲイであることへの罪の意識を感じるのは僕だけでしょうか?

"Everything I’ve ever done
Everything I ever do
Every place I’ve ever been
Everywhere I’m going to
It’s a sin
At school they taught me how to be
So pure in thought and word and deed
They didn’t quite succeed"
"僕が今までやらかしてしまった全ての事、これからする全ての事
僕が存在していた全ての場所、これから行く全ての場所
それは罪なんだ
学校では教わった事
あまりに純粋に考え、言葉、行動する
それじゃうまくなんかいかないんだ"

ゲイカルチャーの美を追求したデッドオアアライブ

1980年に結成されたデッドオアアライブは。ボーイジョージとは一味違う独特な妖艶美で僕らを魅了したピート・バーンズをリーダーに結成されました。音楽的にはストック・エイトキン・ウォーターマンのプロデュースでユーロビートと呼ばれるダンス・ミュージックの代表的バンドとして人気を不動のものに。1984年には”You Spin Me Round”が全米チャートに入るヒット。PVに登場するピート・バーンズのユニセックスな不思議な魅力にファンは魅了されました。

ピート・バーンズは57歳の若さで2016年に死去。あの美しかったピートが整形依存症で300回以上にのぼる整形手術を繰り返してきたことを公表しました。奇しくも”You Spin Me Round”の大ヒットは自分の外見からと思い込み、偏執的なまでに自分の顔にこだわるようになってしまったといわれています。異常な整形手術の繰り返しで破産し、無理な手術が命を奪ったとも報じられています。改めて”You Spin Me Round”のPVを観てみると、ピートの美しさとその闇を感じてしまいます。

音楽はカルチャーを創り出します。最初は奇抜なキャラを売りにしたヴィレッジ・ピープルから始まりましたが、その影響はゲイカルチャーを一般の人にしらしめることになりました。ボーイ・ジョージは外見の差別とそれに傷つく人におことを訴え、ペットショップボーイズは楽曲のなかにゲイであることの苦しみを込めました。ボーイ・ジョージのファッションはミュージシャンに大きな影響を与え、ニューロマンティックと呼ばれる音楽ではデュラン・デュランやスパンダー・バレエのような男性が化粧をすることがカッコいいというカルチャーを生み出しました。

偏見を恐れず自分を堂々と表現することで時代を変えた勇気あるアーティストの作品をお楽しみ下さい。どんな素晴らしい演説より音楽には革命を起こす力があるのです。

Peace out,

Eric

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