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太陽

その子は風のように現れた。
揺れ動く花びらを顔に散りばめている。
彼女の表情は、水中を泳ぐ金魚のように美しかった。水の中で結ばれる二匹の魚の愛の印のような、彼女の顔に映る儚さと豊かさを遠くから見ていた。

私はそれからどんどん近づいてしまった。
焼き焦がされてしまうような暑い砂漠に、ひっそりと置かれたオアシスみたいだった。
私の光が容赦なく燃えても、揺れ動く彼女の表情は美しいままで、沢山の花びらが舞い上がる。
尽きることのない泉が、暑い大地の中を川のように流れていった。

それを見るたびに、私はどんどん強く燃えた。
尽きるはずはないと思っていた。
止まることの無かった美しい創造の水を前に、私は落ちようとしていた。

灼熱が大地に広がると、やがて砂漠の中の川は消えた。
世界に近づき過ぎていたのだ。

彼女は暗闇の中で、光に背を向け始めたように見えた。

私は遠い未来、ベールを羽織って暗闇の中に入った。
すっかり暗闇に溶けた彼女は、それでも、頭に涸れた泉のような青緑色の花を残していた。溶け切らない萎んだ花びらが見える。
彼女の頭に残された花は、岩のように固く、動かなかった。
私は青緑色の花に、羽織っていたベールをかける。
柔らかな花びらの感触を想像していた。

いつか二匹の魚が泳いでいた泉を思い出し、彼女に問いかける。

それからというもの、私は、青緑色の花が漂う暗闇の中でいつまでも燃え続けていた。