見出し画像

なぜ彼は、シャッターを切るのか


2020年8月17日に書いた記事ですが、謎に半年間温めたので、もうそろそろええかと思い、このタイミングで公開します。時間はその時で止まっているので、時間軸がおかしいところも多々です。



大学生だった時、文字に関わる仕事がしてみたいという想いで、あるメディアを運営する会社のインターンを始めた。


金沢に新しくオフィスを構えるということで、ありがたいことにお声をかけていただき、その会社に学生インターンとしてジョインさせていただくことになったのだ。

働き始めて数ヶ月後、新しく学生インターン生が増えたという話を聞き、
ある日に出社した日に出会ったのが、だーまつとの初めての出会いだった。

第一印象は「違う畑のヒト」。
明るくて人懐っこくて、私の方が長く働いていたのに、私より場に馴染んでいる気がして、純粋に「いいな」と思った。

私は人事アシスタント兼ライターというポジションでインターンを始めた傍、彼の肩書きは「カメラマン」。私にはないものをたくさん持っている気がして、全体的に羨ましかった。

初めて会った時はそんなにたくさん喋るわけでもなく、私はいつものように様子を伺っていた。次に会うのが私たちの退社日になるとは、お互い思っていなかっただろう。

その初対面から2ヶ月ほど経ってから、薄々感じていたことがあった。

お互い出社日がズレていたのはあるが、なぜか、なぜか全く会わない。。

違う畑の人とはいえ、北海道と沖縄くらいに遠くの畑におるんちゃうか、と思うくらいに、彼と物理的に会わない。

かといって、「だーまつって辞めたんですか?」と他の社員の人に聞くのも、なんだか安易に聞けず、5ヶ月ほどが経った。

だーまつと会うことはなく、夏が終わり、もうすぐ冬がやってくるという頃、突然人事担当から、辞令のお達しが告げられた。

「実は金沢オフィスを撤退することになって、残念だけど今日付けで退社してもらうことになった。。」と、インターン生活は突然に終わりを迎えることになったのだ。


結局自分の書いた記事そんなに出せなかったな、残念やったな、というか今日付けで退社宣告って、なかなかないよな、リストラってこんな感じなんかな、などなど、申し訳なさそうにしていた人事の前で、一人のほほんとしていた最中、遥か遠くの沖縄の畑にいたあの彼が、突然に姿を見せたのだ。


「わ、久しぶり!辞めてなかったんや!!!!!!!」と声をかけて、突然の最終出社日を退勤したその夜、初めてちゃんとまともに話した。


ちゃんと話してわかったことは、彼は私が大好きなあのLOVE GRAPHで写真を撮っていて、本当に写真が好きなこと、そして温厚な気候の畑の人であること。

意外にも、畑は遠いけど、この人もしかしたら自分と同じ野菜育ててんのかなと、ちょっとした親近感や共通点を感じた。


そして、ちょうど新しいプロフィール写真を撮ってもらいたいと思っていたタイミングが合い重なって、彼にお願いすることにし、後日とっても素敵な写真を撮ってもらった。


そのあとに会ったのは、大学の卒業式。(無くなったからみんなで袴着て集まっただけやけど)

彼は県内各大学の卒業式をを駆け回り、みんなの晴れ姿のシャッターを切っていた。

北陸の三月、控えめに言って鬼寒い。大学によっては同じ日程で被ってしまっているところもあったが、そんなのはもちろん御構い無しに、彼は機材とともに駆けずり回っていた。


みんなが友達とわちゃわちゃしている中、カメラを持って良さげなタイミングを見計らって、要望に応えながら写真を撮っていくのって、間違いなく大変なこと。

彼が人の写真を撮ることが多いのは知っていたけど、別にお金を撮るわけでもなく、言ってしまえばサービス精神で、どうしてここまでできるのだろう、そんなことを思い、改めて聞いてみた。

結論、彼が人を撮る理由は、幸せの連鎖が生まれるからだそう。

被写体が人なら、撮ってもらった人が喜んでくれ、それをみた自分も嬉しくなり、幸せの二乗が生まれる。

根本的に「みんなに幸せになってほしい」という思いがあり、自分が撮った写真を本人に見せるとその人の幸せ指数が上がるのが見てわかる。それを見て自分の幸せ指数も爆上がりする、その「自分も含まれている幸せの連鎖」がたまらなく好きだという。

自分が撮った写真を見て喜んでいる人の姿を見るのが好きで、誰かを喜ばせたくて、彼はシャッターを切るのだそうだ。


写真が好きな同士として、素敵やなあと思った。

今月で、社会人になって丸っと4ヶ月が経つ。学生の頃に比べて、写真を撮る機会も減ったし、「幸せの連鎖を生み出したい」というようなことを考えるエネルギーすらなくなってしまった。

せっかく自分の生活している大半の時間を使う「仕事」に対して、やるからにはエネルギー満ち溢れた仕事がしたい。この4ヶ月でまだそれが感じられないのも事実だ。

誰かのために頑張った結果、自分もハッピーになるなんて、なんて素敵な循環だろうと、つくづく思う。今日で4日間という人生最短の夏休みが終わるのだけど、明日から自分も、「誰かのために頑張りたい」と思える仕事がしたいなあ。

にしても、大学4年間2ヶ月も夏休みやってんのに、社会人になったら急に4日になっちゃうなんて、世の中まだまだ甘くないんだね。。

松田亘平 / まつだこうへい
Instagram : @koooohei0906

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?