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おっさんずラブという輝くプリズム

おっさんずラブが帰ってきましたね。2016年の単発ドラマから始まったこの人気シリーズ。私は、2018年に不動産編をたまたま目にした日から、この作品のもつ強烈な引力に惹かれ沼堕ちし、人生が変わったと言っても過言ではない人間のひとりです。大袈裟じゃなくて。その後、2019年の劇場版、冬期の連ドラのインザスカイ編といろいろあって(いろいろの内容は割愛)、私は主演俳優の田中圭さんの大ファンというスタンスに今は落ち着いております。昨年、不動産編のリターンズの知らせがあったときは、正直、過去のファンの炎上などの記憶がチラつき、不安が大きすぎて素直に楽しみだと思えなかったのですが、いざ始まってみたらとても面白く、毎週 夢中で視聴しています。

見終わった後に、SNSの感想を巡るのも楽しみなのですが、この作品ほどみた人々の感想がバラけるドラマも珍しいです。先週末に放送された5話でも、私は武川さんの三点倒立や宴会場での大乱闘など数々の場面で何度も声を出して笑って、強烈な爆笑回だったと思ったのですが、私の感想とは違って、ろくろゴーストなどをメインにした至高のロマンチック回だったという意見もあって。同じドラマだけれども、見る人によって注目する所が変わるものだなと改めて感じたところです。

今思えば2018年のときもそうでした。『おっさんずラブ』をドタバタ爆笑ラブコメディと認識する人もいれば、切ない純愛ラブストーリーと熱く語る人もいました。そしてどちらも正解なのが『おっさんずラブ』なのです。

『おっさんずラブ』というドラマは、特殊な多面構造をしていると思います。一見まじり合うはずのない要素が、不思議なバランスで繋ぎ止められいるのです。たくさんの面を持つこの『おっさんずラブ』という多面体は、クルクルと楽しげに回転し、ときに思いもよらない方向に光を反射させ、見た事のないプリズムを形成していて、その様があまりにも魅力的なので、たくさんのファンを惹きつける作品になっているのだと思うのです。

賛否両論の声の中には、この作品の一つの面を深く愛し過ぎてしまったがために、他の面を『要らぬもの』と感じているような意見も見受けられます。また、本来なら混じり合わぬ要素をつなぐ事で発生してしまう矛盾点を指摘したい気持ちでいっぱいになっている人も。

私個人としては、こういった色々な要素と面と矛盾も全てひっくるめて繋ぎ合わせ、エネルギー全開で跳ね回ることで輝くのが『おっさんずラブ』の最大の魅力だと思っているので、要らないところや矛盾点をあげ連ねるのはちょっと野暮な行為だなと思っています。どうしてもツッコミたくなってしまう時もありますけれどね。

最近とても痛ましい出来事がありました。とある漫画原作のドラマ化で起こってしまった悲しい事です。あの件を巡ってSNSではさまざまな人が発信をしておりますが、ほぼ全員一致の意見は、ゼロから一を創り上げる原作者の意見は尊重されるべき、というものです。私も心からそう思います。ゼロから何かを創り出す事が、どれほど才能を求められる特別でリスペクトに値することであるか。原作者の意図や気持ちは最大の敬意を払って、常に尊重されるべきだと強く思います。

さて。オリジナル作品である『おっさんずラブ』はどうでしょうか?『おっさんずラブ』の原作者は、このドラマのプロデューサー・脚本家・監督・役者・全てのスタッフだと思います。この作品をゼロから産んで、現在進行形で命を削るようにして作りあげている制作チームです。

画面のこちら側で、出来上がった作品を観る私たちが、さまざまな感想をいうのは自由だと思います。良い感想も悪い感想も、褒める事も懸念する事も、意見を発信する事は大いに結構だと思います。作品に対しての反応が多い事は、注目度や人気のバロメーターにもなりますから。

しかし、ただの視聴者であると言う立場を忘れ、一線を踏み越えたような進言まがいの発信をする事は、制作サイドに対しての甚だしい侮辱行為であるということを、私たちはもっと自覚した方が良いと思います。

自分の目からみたら、要らないものや許容しきれない矛盾に溢れているかもしれません。でも、創作者側は、そのことも全て含めて、オリジナル作品として自分たちの名前をのせて、覚悟を決めて世に出しているのですから。また、あなたが要らないと感じる部分にも、心を動かされ笑ったり泣いたり楽しんでいる人もいるのだという事を忘れてはいけません。

繰り返しになりますが、視聴者としての感想はおおいに発信すべきだと思っています。好きでも嫌いでも、良かったでも悪かったでも。ただし、どんな言葉でも発信する前に、みんなが最低限の配慮とマナーをもうちょっと考えられたら良いなと思っています。

『おっさんずラブ リターンズ』も、折り返し地点を過ぎ、残すところ4話となりました。この先の展開でこの作品が、一体どんな面をみせてくれて、如何なる予測不能の乱反射を喰らわしてくれるのか、どんな眩しい輝きをみせてくれるのか、凄く楽しみにしています。

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