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パリ1日1話

18
パリのはしっこ18区の、ふつうの毎日を書き綴ります。
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【パリ1日1話】18 在仏コロナ休暇雑感 29日目、そしてあと1ヶ月

【パリ1日1話】18 在仏コロナ休暇雑感 29日目、そしてあと1ヶ月

もうすぐ1ヶ月が経とうとしている外出禁止生活。なにも変わらず、淡々としている。日にちの感覚は、仕事の締め切りでしかつかめず、それさえないときは、きょうが何日か、何曜日だったかも忘れてしまう。

朝起きて窓を開けると、空気がおいしい。そして、鳥の声が高らかに聴こえる。パリの街中でだ。野鳥は周囲の騒音が少なくなると自らの声を大きくする、と最近ニュース記事で読んだ。パリの鳥たちも、これまでにない大きさで

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【パリ1日1話】17 ロックダウンは怖くない

【パリ1日1話】17 ロックダウンは怖くない

フランスの外出禁止が2週間延長され、最低でも4月15日までになった。

前話にも書いた通り、わが家では平和な毎日を送っている。朝起きて、ごはんを食べて、仕事して、散歩に行って、お昼ごはんたべて、おやつを食べて、夕方にちょっとヨガをして、ビール飲んで、夕ごはんを食べて、寝る。

タイトルにもある通り、少なくともいま自分が、2週間のロックダウンの中に暮らした限りは、ロックダウン自体に恐怖を覚える必要は

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【パリ1日1話】 16 在仏コロナ休暇雑感

【パリ1日1話】 16 在仏コロナ休暇雑感

フランス全土での外出禁止が発令されてから、きょうで5日目。毎日が驚くほど早く過ぎていく。

わたしは、もともと在宅で仕事をしているのでそれほど変化はないが、夫は勤務先のレストランに閉鎖命令が出て、いきなり1ヶ月の休暇となった。

一緒に暮らしはじめて3年の間、夫は朝から深夜まで働き、まとまった休日さえとれない日々。世間的には疫病を広めないための外出禁止だが、降って湧いたような「無条件の休暇」に、い

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【パリ1日1話】15 おっさんピンクとバラ色の日々

【パリ1日1話】15 おっさんピンクとバラ色の日々

パリの人っておしゃれなんでしょう?

と、たまに日本のひとに聞かれるけど、なんというか、それは「人による」としか言えない。

おしゃれとはなんぞや、という定義の問題にもなるが、もし「流行に敏感でていねいに着飾ること」がおしゃれならば、日本のひとのほうがよほどおしゃれだ。

パリで、「流行に敏感でていねいに着飾っている」ひとは、人口比で考えると非常に少ないと思う。ファッション関係や編集者なんかの、そ

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【パリ一日一話】14 冬とコロナとパリのアジア人

【パリ一日一話】14 冬とコロナとパリのアジア人

お昼ごはんを食べながらつけっぱなしのテレビを眺めていると、13区の中華街にあるドラッグストアでマスクが売り切れて、住民が不安を抱いているといっていた。数週間前のこと。

フランス人は、冬でもマスクをしない。コロナウィルスが世間を賑わせはじめた頃、マスクをしないフランス人が、マスクを買い始めた。

ひょっとすると、祖国でのマスク不足を予感した在仏中華系人が、買い占めて中国まで送っていたのかもしれない

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【パリ1日1話】13 ガレット・デ・ロワ、或いは上のおっちゃんの話

【パリ1日1話】13 ガレット・デ・ロワ、或いは上のおっちゃんの話

いつの頃からか日本でもガレット・デ・ロワをよく見かけるようになったので、説明は不要かもしれない。ざっくりいうと、フランスでは1月5日ごろの日曜日がエピファニー(公現祭)というキリスト教の祝祭日で、その日に食べることになっているのがガレット・デ・ロワだ。

敬虔な信者以外にとっては、ガレットを食べる日である。この時期、フランスでは日常会話においてはわざわざ「ガレット・デ・ロワ」とは呼ばない。なぜなら

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【パリ1日1話】 12 行きつけのカフェの話

【パリ1日1話】 12 行きつけのカフェの話

行きつけのカフェを作ろう。3年前にこの界隈に住みだしたときに決めた。行きつけのカフェがあるって、なんかカッコいい。せっかくパリにいるんだもの、ヘミングウェイがモンパルナスのブラッスリー クロズリー・ド・リラに通ったように、私もテラスで原稿書いてみたりしたい、というミーハーすぎる動機。

行きつけというからには、家の近くがいいだろう。パリにだってサードウェーブの風が吹き抜けていて、イケメンやおしゃれ

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パリ1日1話〜11 パリで音楽を楽しむ、の話〜

パリ1日1話〜11 パリで音楽を楽しむ、の話〜

パリに住んでいると、生演奏の音楽を耳にすることがけっこうあります。日本では騒音に対する規制が厳しいからでしょうか、お祭り的な場面以外では、あまり見かけなかったかな〜と思います。自分があまりそういう場所に出かけてなかっただけかもしれないけど。

街が音楽であふれる日、といえばFête de la musique(音楽の日)。毎年6月21日に世界中の都市で行われているそうです。パリでも夜中まで、街中で

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パリ1日1話〜10 パリでカンヌ映画祭を楽しむ!の話

パリ1日1話〜10 パリでカンヌ映画祭を楽しむ!の話

映画がそこそこ好きで、週に何度かは映画館に足を運んでいます。映画がないと死ぬ!というほどではないけど、けっこう好きな方だと思います。どちらかというと好みがヨーロッパ寄りな私。やはり気になるのはアカデミー賞よりもカンヌ国際映画祭。毎年5月の開催時期になると、仕事そっちのけで現地で取材している記者の方たちの評価をチェックして、ドキドキ、ソワソワ。賞がすべてではないだろうけど、やっぱり好きな監督の作品の

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パリ1日1話〜9 パンはお漬物?の話〜

パリ1日1話〜9 パンはお漬物?の話〜

みなさん、パンは好きですか?わたしもパンは大好きですが、今はあまり食べません。家では一週間に一度食べると多いほう。あとはレストランで食べるくらいです。せっかくパンの美味しい国にいるのになぜ食べないのかというと、美味しすぎて食べ過ぎるからです。そして、パンはバターやジャムなどがセット。なんならヌテラ(フランス人が大好きなヘーゼルナッツとチョコレートのペースト)もセット。カロリーが一気に、こう、バーン

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パリ1日1話〜8 メトロの話〜

パリ1日1話〜8 メトロの話〜

今や東京の地下鉄も「東京メトロ」となったので説明不要だと思いますが、メトロとは地下鉄のこと。でも、クリーンな東京メトロとは似ても似つかないのがパリのメトロです。

わたしが一番驚くのは、どの駅にもコンドームの販売機があること。すべての駅かどうかは確認していませんが、小さな駅にもだいたいあります。壁に取り付けタイプで小さいので目立ちませんが、でも、ある。そんなに必要とされているのか。でも、いまだに買

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パリ1日1話 7〜マダムとマドモワゼルの話

パリ1日1話 7〜マダムとマドモワゼルの話

 フランス語を学んだことがある方ならご存知かと思いますが、フランス語にも英語のミスター、ミセス、ミスにあたる敬称があります。名前の前につけるあれです。ミスターはムッシュー、ミセスはマダム、ミスはマドモワゼルとなります。マドモワゼルは敬称として機能するのかというほど長いですが、特に略することはしません。英語同様、既婚女性にはマダム、未婚女性にはマドモワゼルです。

 ところで、フランス語の敬称は呼び

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パリ1日1話〜6 猫の話

パリ1日1話〜6 猫の話

 パリでも東京でも、住宅事情が許さず猫を飼ったことがありません。大好きで、いつか飼いたいという野望を持ち続けているのですが、いまのところ叶わずじまい。アポリネールの詩に、「欲しいものは理解のある奥さん、書物の間を歩き回る猫、大事な友人たち」といった内容のものがあるのですが、シンプルにしてこれがすべてで、まさにこんな生活にあこがれています。奥さんはあきらめましょう。でも、猫はいつか飼いたい。

 東

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パリ1日1話〜 5 映画館の話〜

パリ1日1話〜 5 映画館の話〜

 ノスタルジックな話をするときりがないのですが、むかしから映画が好きで、特に学生のときには熱に浮かされたように映画を観ていました。ヌーヴェル・ヴァーグを中心とするフランス映画には、恥ずかしい話、完全にかぶれていたと言っても過言ではありません。文化系の人間にありがちな、悩みがちで、夢見がちで、むずかしいことを考えがちで、無力であることに気づきつつもそれでもなにか革命的なことが起こせるという誤解のもと

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