大嶋えり子

大学のせんせー。読書感想文を投稿。 専門はフランス政治と国際関係論。https://t…

大嶋えり子

大学のせんせー。読書感想文を投稿。 専門はフランス政治と国際関係論。https://twitter.com/erikooshima/ 雷音学術出版共同代表 https://sites.google.com/view/lionpress

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『バイリンガルの世界へようこそ』

フランソワ・グロジャン『バイリンガルの世界へようこそ――複数の言語を話すということ』勁草書房。 読んで興奮しすぎたので、私個人の経験を紹介しながら、以下に思いをまとめてみた。 読んだ動機ある本を読む際にさまざまな動機があるだろう。 ・勧められた ・売れている、話題になっている ・好きなジャンルやもともと興味のあったテーマを取り上げている ・好きな著者が書いた ・たまたま本屋で見かけて、装丁などが気になった など、本を手に取る動機は無数にある。 私の場合、『バイリンガル

    • 『女性のいない民主主義』

      前田健太郎『女性のいない民主主義』岩波書店。 ああ、なるほど、やられた。そう思った。 端的にいえば、「なぜ私がこの本を書いていないのか?」という悔しさでいっぱいだ。そもそも専門が違うからだ、というだけの話ではあるけど、猛烈な悔しさを覚えた。 「女性のいない民主主義」は政治の問題でもあり、政治学の問題でもある日本の政治において女性が排除されてきたのに、なぜ日本が「民主主義」だといえるのか……? この問いに対して著者は次のように述べる。 政治学という学問の性格に関わる問題

      • 『みんなの「わがまま」入門』

        富永京子『みんなの「わがまま」入門』左右社。 社会運動を研究対象としている著者が、不満をいう、権利を主張するといった「わがまま」について中高一貫校で講演したこときっかけに完成した一冊。 本書でいう「わがまま」とは 自分あるいは他の人がよりよく生きるために、その場の制度やそこにいる人の認識を変えていく行動 を指す。もっとわかりやすくいえば「権利や不満を主張する」ことだ。 デモを行う権利はそこまで重要ではない?手前味噌で恐縮だが、42の民主主義国家を対象とした大規模世

        • 『翻訳――訳すことのストラテジー』

          マシュー・レイノルズ『翻訳――訳すことのストラテジー』(秋草俊一郎訳)白水社。 装丁が素晴らしい。装丁が素晴らしい。大事なことなの二回記しておいた。 言語間を往来することはどういう行為なのか、なぜ訳すという行為はあまり理解されないのか、などが気になっていた。特に、このツイートで語った事件のせいで周りの無理解に絶望しそうになった。 「いいね」とリツイートが多かったので、私の立場を共有している人は少なくないのかな、と思い、少しは救われた。 ただ、「訳すのって大変なんだよ

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        『バイリンガルの世界へようこそ』

          『はじめてのジェンダー論』

          加藤秀一『はじめてのジェンダー論』有斐閣。 有斐閣ストゥディアという教科書シリーズの一冊。 政治学系の教科書は数冊持っていて、いつも授業準備でお世話になっている。このたび、授業で一回だけジェンダーを取り上げるということで、読了。教科書だけど教科書じゃない。そんな読み物なので広く読まれてほしい。 なぜジェンダーを考えなければならないのか―労働者としての受難なぜこの本を読んだのか、さらには、なぜ学生にジェンダーについて考えてほしいと思うようになったのかをまずは綴っておきたい

          『はじめてのジェンダー論』

          『未来をはじめる』

          宇野重規『未来をはじめる――「人と一緒にいること」の政治学』東京大学出版会。 高校生に向けた講義の書籍化。 唐突だが、およそ無関係な作品から以下を引用したい。 あなた一人で生きてるんじゃないもん。この世界にあなたは関わってるの。どうしようもなく関わってるのよ。 私の大好きな脚本家・木皿泉の大好きなドラマ『セクシーボイスアンドロボ』に出てくるセリフだ。私たちは嫌でも他者と関わりを持っている。本書はそのことについて語ってくれる。 政治とはなにか?おそらく多くの政治学の入

          『未来をはじめる』

          『外国語を学ぶための言語学の考え方』

          黒田龍之助『外国語を学ぶための言語学の考え方』中央公論新社。 かねてよりこの新書を読みたいと思っていた。 ただ、読むまでこの本のコンセプトをあまりよくわかっていなかったし、読み終えた今になっても説明が難しい。 不思議な本で、「〈〇〇〉ではない」という説明から始めた方が良さそうだ。 典型的な言語学の〈研究書〉や〈入門書〉ではないそもそも新書なので研究書ではないが、中公新書には研究書に匹敵する優れた著作が多数ある。たとえば、小菅信子『戦後和解――日本は〈過去〉から解き放たれ

          『外国語を学ぶための言語学の考え方』