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ほんの些細なわがままなのに。

「このサングラス、すぐズレる!イヤ!」

寝室から二女の声が聞こえる。
また始まった・・・
どうしようもないことに怒っている。
時間は午後6時。
夕飯の準備中だった。

少し前から「サングラスがほしい」と言っていた二女。
たぶん、何かになりきって一人遊びをしたいのだろう。
「今度100均に行ったら買おうね」と言っていたけど、私も二女もすっかり忘れていた。
急にサングラスのことを思いだした彼女は、大昔に買ったサングラスをみつけだしてかけてみたらしい。
しかしフィットせずにすぐに落ちてしまい、冒頭のセリフにつながる。

二女は言い出したら聞かない。
気に入らないことがあれば、それが解決されるまで泣き喚く。
たとえそれがどうしようもないことでも。
昔買ったサングラスは彼女の顔のサイズには合わなくて、サイズ調節は無理。
夕飯の準備の途中だったから、今からサングラスが売ってそうなお店に行くのも無理。
もうあの時の彼女には「ズレるサングラスで遊ぶ」という選択肢しか残されていなかったのだ。

それでも泣き喚く。
こちらが何を言おうと聞く耳を持たない。

「もうこれしかない・・・」

私は二女を無理やり抱きかかえ玄関に行き、こう言い放った。
「そんな、どうにもならないことばっかり言うなら出て行って!」

「嫌だ!もう言わないから!」と必死に抵抗する二女。
恐怖におびえて泣く顔泣くがそこにあった。
私は、彼女がこんな反応をするのがわかっていたから、外に出すフリをした。

『怒鳴ったり暴力で黙らせようとするのは、向き合うことが面倒くさいからだ』

最近読んだ本に書いてあった。
まさにその通りだ。
最初はなだめるように、諭すように説得していたけど、それでも泣き続ける二女に向き合うのが面倒くさくなったのだ。

言ってもダメなら怖い思いをさせればいい。
後になって思い返してみると、自分のことが恐ろしくなる。
今まで幾度となく使ってきた手。
こんなことでいうことを聞いてくれるはずはない。
なんのメリットもないのにどうして繰り返してしまうのだろう。
いつまでたっても成長しない自分に嫌気がさした。

少し冷静になって、部屋に戻って娘に話した。
「今サングラスを使いたくて、それができなくてイライラするのはわかる。でもあなたがギャーギャー言ったところで状況は変わらないよ」

「・・・・・・」

何も答えなかったが、しばらくするとまたブツブツ文句を言い始めた。

そして私の中でまたイライラが始まる。

もう勘弁して。
もういい加減にして!
もう黙って!!

いろんな思いがぐるぐるする。
もういっそ、夕飯の支度を中断して、サングラス買いに行った方が娘も私も平和なのかな?
でも、「泣き喚き続ければ誰かがなんとかしてくれる」って思っちゃわないかな?

二女と向き合うときは、いつも葛藤する。
何が正解なのか、わからなくなる。
自分の嫌な面が見えて、辛くなる。

結局、この日は「今日はどうしようもできない」で押し切った。
ご飯を食べたら癇癪は収まって、いつもの娘に戻った。
おなかが空いていたのかな。眠たかったのかな。

こうして文章にしてみると、ほんのささいなわがまま。
まるっと受け入れられる寛容さ、わがままに向き合い続ける忍耐力が今の私には足りていないようだ。



いつか読み返したとき、
「こんなこともあったなぁ」
って笑えるように、日々のキロクをゆるゆると残していこうと思います。

最後までお読みいただきありがとうございました。


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