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雪国の葡萄畑に想う。

なんて雪深いんだろう。

2020年最後に新潟県上越市の岩の原葡萄園を訪れました。12月でこんなに積もるのは久しぶりらしく、既に葡萄の樹々の根元あたりは雪に埋まっていました。

年明けはもっと積もるので、作業は匍匐(ほふく)前進で腹這いになってやるのだそうです。造り手が横棒で示しているくらいまで積もるらしく、本当に大変そうです。

雪が積もると枝が折れてしまうので、枝を交差させることで、折れるのを防いでいるようです。きっとこれまで何度も折れてしまうという苦難の末に見つけた、雪国ならではのブドウ栽培方法なのでしょう。

ちなみに、上の写真の収穫期が下の写真。3か月でこんなに景色が変わるなんて。通常は9-10月の収穫からしばらくは一休みし、年初に剪定などの作業が始まりますが、岩の原葡萄園では雪深くなる前の11-12月中にある程度の剪定作業を終えておく必要があります。雪国の葡萄栽培の大変さ、尋常ではないでしょう。

岩の原葡萄園には、歴史展示室が併設されています。そこには創業者である川上善兵衛が、日本にあう葡萄を生み出したくて調べ尽くし、それを日本に知らせたい思いでつづった書籍や、日本全国の同志たちとの書簡が展示されています。スマホどころか電話もないに等しかった時代に、これだけの情報を集め、同志とのやり取りをしていたこと、どれだけ大変だったかわかりません。

下記は、明治初期にフランスに留学し本場の知識を持ち帰り、日本で本格的なワインづくりを始めたと言われる山梨県の土屋龍憲(まるき葡萄酒創業者)からの書簡。「いくつかの品種をありがとう」というような内容が書いてあるように思えます。今、山梨県でマスカット・ベーリーAがたくさん育てられているきっかけとなったお手紙かもしれないと思うと、先人たちの努力に感謝せずにはいられません。

展示室見学後は、明治31年建造の石蔵を利用した樽貯蔵庫へ。上越市の指定文化財に登録された歴史ある場所でゆっくり熟成され、瓶詰されます。

岩の原には雪国であることを活かした雪室もあり、見ることができます。
見学が終わった後はランチです。レストランではこんな素敵な前菜始め、新潟食材を活かした美味しいお食事をいただくことができておススメです。※岩の原葡萄園ホームページ
https://www.iwanohara.sgn.ne.jp/tour/index.html

善兵衛の生み出したマスカット・ベーリーAという品種は、今や日本で最も育てられ、ワインとなり愛されている品種です。岩の原では近年、有機栽培の取組や醸造方法の工夫などで、さらにその美味しさが進化しています。

岩の原葡萄園が始まって昨年で130年。善兵衛の想いを引き継ぎ、さらに変革と進化をし続けられるのは、そのバトンを受け継いできた「人」がいたからこそ。

なんでこんなところで? 雪に埋もれた葡萄畑を見ると、そう聞きたくなりますが、聞くと、どの社員の方もこういうのです。

「ここまでやり続けてきたことが大事で、自分たちもやり続けて、しっかりと次につなぎたいんです。それ以外の理由はないんですよね」

この言葉と先日noteにも書いた「川崎でワイン」のイベントでお話を聞いた栽培農家の山田さんの言葉が重なりました。

そう、この土地で生まれたのだから、ここでやる。やり尽くす。

シンプルに突き進む情熱に、ワインの発信者、飲み手は感動し、そのワインのファンとなり、美味しくいただき、その感動を人に伝えていくのですね。

だから、今年の目標は、

「情熱」を感じるワインを一つでも多く飲み、感動を表現すること。 

公私で関わる造り手たちの「情熱」を応援し、その情熱がぶどうやワインづくりに活かされるよう、一つでも多く行動を起こすこと。

今年の私は「情熱」を道しるべにして進んでいこうと思います!

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