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ずっと好きだよ、どうぞ嘘つきと呼んで。

先週、とあるライブに行った。
とあるアイドルゲームのライブだ。

たかがゲームのライブと侮らないでほしい。
本当に本当にクオリティが高くて、愛の詰まったライブなのだ。
今年が2回目の開催なのだけど、私は昨年の1stライブにも参戦していて、ライブ後1週間ぐらいロスに落ち込むくらい、本当に本当に素晴らしくてよいライブだったんだ。
どれくらい感動したかは、去年の私が書いている。

ライブのあと、私はもう胸どころか体中がいっぱいになってしまって、何かせずにはいられなくてこれを書いた。
私はその作品が大好きで、絶対素晴らしいものを見せてくれるって全幅の信頼を置いて、それで今年のライブのチケットも当然のように応募した。約半年前のことだ。

そして、今年の2ndライブも、当然のように素晴らしかった。
去年の実績があるからハードルは上がってるだろうに、それを鮮やかに超えて見せた。
完全にパワーアップしてた。改めて、その作品、ライブが好きだって思った。来年も絶対行きたいって思った。

でもね。
ライブを観ながら、一方で私はこうも思ってた。
私、いつまでこんなに好きでいられるんだろう

――いや。違う。ごめん。嘘ついた。
本当は気づいてた。去年ほどの熱量がもう自分の中にないこと。
去年はライブの一週間前からそのライブのことしか考えられなかった。仕事しながらずっと、ライブに何着てこう、爪の色何色にしようってそればっかりだった。
ライブの後一週間、ああ終わっちゃった、次何を楽しみに生きていけばいいんだって沈んでた。

でも今年の私は、一緒に行く友達に「再来週ライブだよ」って言われるまで忘れてた。ライブの後数日は友達と散々感想を送りあってたけど、それも数日で落ち着いてしまった。
ライブの最中、サイリウムを振りながら頭の片隅では、今一番好きな、別の人のライブのことを考えてた。

思い返せば今まで、いつだって何かものすごく好きなものを追いかけながら生きてきた。
それは何かのキャラだったり、音楽だったり、漫画だったり、片思いの人だったり、アイドルだったり、普通に付き合ってる相手だったりした。
好きになるとそのことしか考えられなくなるタイプだ。大好きな何かを見つけるたびに本気で思った。

“なんでこんなにもこの人が好きなんだろう”
“こんなにも私好みのものになんでもっと早く出会えなかったんだ”
“これより好きなものにはこの先出会える気がしない”
“一生この人を追いかけていたい”

本気でそう思って、本気で好きで、夢中になって。
それでいつしか熱が冷めて飽きては、新しい好きなものに出会って。
何度も何度も、「好きなもの」を「好きだったもの」に変えて、置き去りにしてきた。

――嘘を。
嘘をつきたいわけじゃないんだよ。
いつだってその瞬間、心から好きだって思ってるんだよ。
ずっと好きでいたいって思ってるんだよ。
でも心はあっけなく移り変わって、何度だって自分の言葉を嘘にしてきた。

心が移り変わるのは当たり前のことだ。誰だってある。
そんなことわかってる。
それでも好きでい続けられなかった自分に、自分で傷つく。
何かを好きだと思う気持ちが強くなるたびに、のちに負うことになる罪が重くなっていく気がする。

今、ものすごく好きで、ハマっていて、推している人がいる。
例によって私は「こんなに何かを好きになることある!?」と思いながら日々その人のことを追いかけている。四六時中その人のことを考え、常にその人の歌を聴いている。
その人の存在を知ったのは今年に入ってからだ。どっぷり浸かった状態に陥ってから、そろそろ半年が経とうとしている。

そして、そろそろ怖くなり始めている。

飽きっぽい私の流行りは、早ければ1か月、長くたって1年くらいしか続かない。
生身の彼氏とだって、いつも、半年くらいしか続かなかった。
そんな私は今、「いつこの人のこと好きじゃなくなるんだろう」って怯えながら、その人のこと応援してる。
「これはもう聴かなくてもいいか」「この人のライブよりこっちに行きたい」って、いつ思うようになるんだろうってびくびくしてる。
その影は、私の感情の温度変化を敏感に察知して、背後から忍び寄ってきて囁くのだ。

“もうそんなに好きじゃないんでしょ?”

これまで何度も何度も私の前に現れた、なじみ深い黒い影。
私は、いつか来るそれに怯えてる。

「いつか好きじゃなくなるんだろうな」と思いながら何かを想い続けることは、苦しい。
苦しいから、その人を追いかける一方で、こんなことさえ思ってしまう。

――早く失望させて。早く飽きさせてくれ。
あなたから関心を失う、いつか来る自分を見たくないよ。
とっとと終わらせてくれよ。
どうせこんな気持ち、いつか終わるんだから。

画面の向こうの、ステージの上の、まばゆい姿を眺めながら、その眩しさが苦しくてたまらなくなる。
一瞬も見逃したくないのに、目をつむってしまいたくなる。
その輝きが、いっときの蜃気楼みたいなものでしかないのかもしれないから。
「なんであんなものに夢中になってたんだろう」って思いたくないから。

飽きっぽい私は、やっぱりあなたにいつか飽きてしまうのかもしれない。
飽きずとも、今みたいな熱狂的な気持ちがずっと持続するとは思えない。
その時にはあの黒い影がやってきて、「ほら見たことか」って言うのかもしれない。

それでも、私は追いかけずにはいられない。手を伸ばさずにはいられない。
いつか嘘になるとしても、今この瞬間は、間違いなく本当だから。
影を振り切って、眩しいものを追いかけて走りたい。
いつか振り返る時のことなんか考えずに、全力で、全速力で、曇りなく、好きなものに向かいたい。
「どうだ見たか」と私からいってやりたい。

だからこれは、告白ではなく決意なのだ。
決意で、そして祈りなのだ。

ずっとずっと好きでいるよ。

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