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世界征服進行中―まふまふ、ならびに「歌ってみた」界隈に寄せて

ここふた月近く、ずっと同じアーティストの曲を延々と聴いている。
まじで、全然誇張ではなく、寝てる間以外ずっと、彼らの曲や配信を絶え間なく流している。ご飯作ってる時も通勤の時も事務作業をしてる時も、朝起きてから寝る間際までずっと聴いている。たぶん1日16時間くらい聴いている。
今日はその話をしたい。
したいったらしたい。

でも、まずは何も言わずこれを聴いてほしい。

『命に嫌われている。』

ちゃんと飛ばさずに聴いてくれましたか?
この曲は、カンザキイオリという方がボーカロイド曲として作ったものを、「まふまふ」という人物が歌ったものだ。
まふまふ」が何者かというと、ニコニコ動画に「歌ってみた」動画を上げる、いわゆる「歌い手」として人気を博した人物だ。

この、「命に嫌われている」という曲を聴いてくれた方、どうでしたか。
シンプルに、すごくないですか。
タイトルに劣らぬショッキングな歌詞と、それを歌い上げるハイトーンボイスと、咆哮するみたいなサビと。特徴を挙げればいくらでもあるけど、この感覚を言語化することはきっと野暮だ。
この曲を初めて聴いた時私は、良いとか悪いとかではなく、衝撃を受けた。
こんな曲聴いたことない。
こんな歌声ほかに知らない。
それは善し悪しや好き嫌いなど超えた「未知との遭遇」だった。「唯一無二との出会い」だった。

別にそこまでではなかったな、と思う方ももちろんいるでしょう。でも、再生数見ましたか。
3300万回を超えている。これは、ラッキーや偶然で到達できる回数ではない。仮にあなたには届かなかったとしても、この曲は、3300万回、この世界に響いたということなのだ。
今回書きたいのはそういう話です。

*

もうすこし、「まふまふ」について説明する。
前述の通り、彼はニコニコ動画の「歌ってみた」から活動を始めた人です。男性とは思えぬほどのハイトーンボイスを持ち、その歌声の唯一無二性によって頭角を現しました。

『打ち上げ花火』

(これ、男女ペアなどではなく「まふまふ」一人で歌っています)

『彗星ハネムーン』


既存の曲を歌うだけでなく、曲作りでも才能を開花させ、数百万再生に至る作品を生み出し続けている。

『すーぱーぬこになりたい』

『ロールプレイングゲーム』

『フューリー』

ネタ感の強いハイテンションな曲ばかりかと思えば、EDM調のゴリゴリの曲も作る。子守歌みたいなバラードを作ったりもする。新しい曲を聞くたびに、その音楽性の幅広さに驚かされる。
今やアニメの主題歌や、楽曲提供、別名義でのバンド活動も並行し、ちょっと尋常ではないペースで新曲を作り続けている。
こんな表現は本当に本当にダサいなと思うけど、それでもこう言いたくなってしまう。
まふまふ、天才。

*

以前、『ライトノベルの最高速度』という文章を書いた。
小説というジャンルにおいて、ライトノベルはどうしても浅薄なものとして軽んじられがちだ。
でも中高の頃、私はそれらを貪るように読んでいた。いわゆる文学作品みたいな高尚さはなかったかもしれないけれど、「この先はどうなるんだろう?」というワクワクを与えてくれて、昨日の続きを読むのが毎日楽しみだった。読書体験という側面において、あの頃が人生で一番幸せだったんじゃないかと思う。
そういう体験には「高尚さ」なんてしゃらくさいものを蹴散らすパワーがあって、それはライトノベルの「速度」だ。

……みたい内容だったのだけど、「まふまふ」の楽曲や、あるいはボカロ曲や「歌ってみた」の曲を聴いていると、その時に感じていたことに近いものを感じる。

確かに、彼らの曲に高尚さはないかもしれない。おしゃれでシティでアンニュイなもんではない。過激なワードチョイスとか、ネタ系とか異常に高音とかテンポが速いとか、小手先の飛び道具的な手段で目を引くようなやり口も多い。

だけど、動画サイトを見たらわかる。彼らの投稿した楽曲は、100万再生なんてざらだし、今もその数字は伸び続けている。
その中でも「まふまふ」の音楽は、さっきの話に例えるなら、ジェット機ばりの圧倒的な速度を持っている。高尚だとか質が高いとかおしゃれだとか低俗だとか社会的だとかそんなつまんない議論をねじ伏せる力だ。

たくさんの人が聴いた。

それこそが音楽の価値の、なによりの証明だと思いませんか。

*

今、「まふまふ」の活動は音楽にとどまらない。Youtuberとして姿を出した企画動画投稿も増えているし、yahoo!とコラボした看板番組を持ったりもしている。
ツイッターのフォロワーは150万人を超え、6月にはキャパ3万3千人を誇るメットライムドームでのワンマンを控えている。あのアニメやあのドラマやあの映画の主題歌も担当している。

6月23日、彼が主催するイベントのサブタイトルは「世界征服I@メットライフドーム」だ。

歌い手なんて、ニコ動なんて、と思っている方。
あなたの日常に、もうすでに「まふまふ」が入り込んでいる可能性は大いにある。
彼らの音楽による世界征服は、もうとっくに始まっている。

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