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産業医ではない医師向け 労働衛生コンサルタント試験対策【全文無料】

更新記録

2023/12/28 内容を一部改稿しました
2023/10/22 口述試験の予想質問に関する部分を追記しました

読者ターゲット

産業医資格のない医師で労働衛生コンサルタント試験を受験する予定の者。

この記事を読むと達成できること

医師の皆さんを対象に、以下を学ぶことができます。
①労働衛生コンサルタントの申し込み方法
②労働衛生コンサルタント(保健衛生)の筆記試験対策について
③労働衛生コンサルタント(保健衛生)の口述試験対策について

執筆動機

・私自身もTwitterで知り合った先生にご指導いただいたおかげで、合格することが出来たので、同じように皆さんのためにアドバイスしたいと思ったから。
・不十分な試験対策でお金を取ろうとする者が散見されるため、そのような所にお金を払う者が出るくらいなら私が無償で執筆しようと思ったから。
・勉強していて産業衛生という分野がとても魅力的だと感じ、皆さんにも興味をもってほしいと思ったから。

執筆者の紹介

私は「Shin@救急医」という名前で主にTwitterで活動しております。
専門は救急医療と集中治療で、産業医の資格は持っていませんでしたし、産業衛生の経験も特別ありませんでした。

受験に関する質問や相談について

下記を満たし方に関してはTwitterのDMにて無償で質問に答えます。
・私のTwitterアカウントをフォローしている
・この記事をTwitterで紹介している

1.労働衛生コンサルタントの受験資格

医師である皆さんはすでに受験資格を満たしています。

2.労働衛生コンサルタントの申し込み方法

申し込み日程は毎年7月頭~8月頭までです。

①受験申請書の請求を行う
安全衛生技術試験協会のサイトに手順が書いてあります。
以下のページの下の方に労働衛生コンサルタントの受験申請書請求のご案内が記載されていますので、ご参照ください。

②受験申請書を作成する
まず、以下の4つを行う必要があります。
・試験手数料の支払いを払込票で行う
・証明写真を撮影する
・申請書を記入する
 試験区分→保健衛生
 科目免除→労働衛生一般、健康管理
・医師免許のコピー 原本証明を受ける
※受験資格と科目免除のために、医師免許のコピーの提出が求められますが、これには「原本証明」が必要です。これが非常に面倒で、医師免許の原本とコピーを持参し、「安全衛生技術試験協会本部」、「各安全衛生技術センター」、「都道府県労働局」、「労働基準監督署」のいずれかに赴いて原本証明を受ける必要があります。
 東京在住の方は郵送での受験申し込みではなく、医師免許原本をもって協会本部に直接行って、受験申し込みをした方が手間が少なくて済みます。

③受験申請書の提出
・郵送の場合
簡易書留での送付となります。
・持参の場合
東京都千代田区にある「安全衛生技術試験協会」の本部に提出
申請と医師免許の原本証明を同時にできますので、都内在住の方は直接提出をお勧めします。

上記でご不明点がある場合は協会のHPをご参考ください。

3.筆記試験の科目免除

試験区分「保健衛生」の筆記試験は以下の三つで構成されています。
・労働衛生一般(択一式)
・健康管理(記述式)
・労働衛生関係法令(択一式)

産業医講習会を受けていない医師である皆さんは、労働衛生一般と健康管理の2科目を免除可能です。
筆記試験での勉強範囲を極力狭めるために、私は2科目免除をオススメするのですが、別の意見もあるので説明します。

筆記試験は受験科目の問題数のうち6割正解すると合格できると言われています。「労働衛生関係法令」は15問あるため、皆さんは9問正解すれば合格できるわけです。
しかしながら、産業衛生の経験がない人にとって「労働衛生関係法令」の問題は難しいため、敢えて難易度が低い「労働衛生一般」も一緒に受験することで、労働衛生関係法令の得点率が低くても筆記試験に合格できるようにしようという考えがあるようなのです。

しかし、私は2つの理由から2科目免除お勧めします。
・勉強範囲は少ない方が良い
医師である皆さんはなかなか勉強時間が取れないことと思います。
したがって、いたずらに出題範囲を増やすようなマネはお勧めできません。
2科目免除なら必要とする勉強時間は非常に少なくなります。
・労働衛生関係法令はとても大事
法令の理解は口述試験の対策をするにあたって非常に大事です。
筆記試験でやり込んでおいた方が、後々楽だと考えます。

4.筆記試験の勉強法

私が試験勉強をするにあたりまして、pho先生の筆記試験対策の記事を大変参考にしております。
pho先生に感謝申し上げます。まことにありがとうございます。
参考にしたnote記事を貼らせていただきます(許可はいただいております)


筆記試験の勉強をフェイズで分けると以下の通りです
①労働衛生に対する大まかな理解を深める
②出題範囲である労働衛生関係法令の勉強をする
③まとめノートを作成しながら過去問を解く

①労働衛生に対する大まかな理解を深める
実務経験のない皆さんは、労働衛生に対する理解が全くない状態だと思います。
まずは大まかな基礎知識を付けてから勉強を始めた方が効率が良いです。

以下の書籍をお勧めします。
・公衆衛生がみえる
読むのは産業保健の章だけでOKです。
暗記の必要はありません。流し読みをして大まかな全体像をつかみましょう。

・衛生管理 上 第1種用
「公衆衛生がみえる」だけでも十分ですが、完璧主義者の方はこちらをお勧めします。暗記の必要はないので、大まかな全体像をつかむだけでよいです。
本を読むのが好きな私でも通読には2,3日かかったので、文字が苦手な方は読まない方が良いかもしれません。書籍自体は口述試験の対策にも使えます。

こちらの書籍は毎年3月下旬に最新版が出ています。
Amazonでは割高になっていたり、品切れになっていることも多いので、中央労働災害防止協会のホームページで買うのが良いかもしれません。
もし買うのであれば間違えることなく「第1種用」を購入しましょう。

②出題範囲である労働衛生関係法令の勉強をする
ここから先は実際に出題範囲の知識を勉強します。

・わかるわかる! 第一種衛生管理者試験(改訂2版)
第1~12章まで通読してください。
衛生管理者試験のテキストですが、労コン対策のために書いたといっても過言ではないような内容となっています。

内容はテキスト+章末問題で構成されています。
余裕がある方はテキストだけでなく、章末問題も解いていくのが理想ですが、暗記を促すような作題になっていないため、やや効率が悪いです。
煩わしいと感じたら章末問題は飛ばしても良いと思います。私も当時は読んでませんでした。

・図表でわかる衛生管理者の合格知識
こちらの書籍も衛生管理者試験のテキストですが、労コン対策に非常に有用です。
前項で紹介した「わかるわかる!第一種衛生管理者試験」が教科書だとするならば、こちらの書籍はまとめノートみたいなものです。
出題範囲になっている章は以下の通りです。
パート1 1種・2種共通対策
第1章 関係法令のⅠ労働安全衛生法 Ⅱ事務所衛生基準規則
パート2 有害業務対策
第4章 関係法令(有害業務に係るもの)
第5章 労働衛生(有害業務に係るもの)

章末にまとめノートが付録されているので、こちらも上手く使うとよりgoodです。

衛生管理 下 第1種用
こちらは辞書的に用いる書籍です。
通読は不要ですので、何か調べたい時に使用するのをお勧めします。
私は過去問題を解きながら、法令を調べたい時はこちらの書籍を参考にしておりました。

③まとめノートを作成しながら過去問を解く
まず最初に過去問題集を買いましょう!と言いたいところですが・・・。
実はわたしは過去問題集を購入しておりません。

柳川 行雄先生という個人がやってらっしゃる「実務家のための労働安全衛生のサイト」というページがあるのですが、そちらに10年分の過去問題と解説が掲載されています。

非常にわかりやすいサイトであり、まとめノートや実務を交えた解説記事などコンテンツが豊富です。試験が終わった今でも勉強させていただいております。
リンクフリーとの記載がございましたので、ご紹介させていただきます。

まとめノートにつきましては、「図表でわかる衛生管理者の合格知識」や「柳川 行雄先生のサイト」にはなかった内容について、自分で作成していくのが効率良いと思います。
まとめノートを作成したり、過去問題の調べ物をする際は、「衛生管理 下 第1種用」または「e-Gov法令検索」を用いて、調べるのがよろしいと考えます。e-Gov法令検索の方がもちろん網羅性が高いのですが、法令そのままなので少し読みづらいかもしれません。

過去問題は最低10年分はやりましょう。
理由は下記の2つです。
・一定数の受験生が柳川先生のサイトの存在を知っており、それをもとに勉強していると推定されるから。
・過去問題に類似した問題がよく出題されるから。

5.筆記試験の実際

①筆記試験の場所・日時
毎年、10月の第3火曜日が試験日になっているようです。
令和5年度の東京会場はベルサール渋谷ファーストでした。
労働衛生関係法令の受験時刻は、毎年午後13時~14時なので、当日は比較的ゆっくりできると思います。
20分前には着席するように受験票には書かれていますが、前の試験が12時で終わるため、会場自体には12時から入場可能でした。

解答について
正式な解答は11月の上旬に「安全衛生試験技術協会」のホームページで公開されます。
先ほどご紹介した柳川先生の「実務家のための労働安全衛生のサイト」では、会員限定ページで柳川先生が作成された回答が10月中に公開されていることが多いようです(来年度以降はもちろん不明です)。
受験問題の情報・選んだ選択肢などを入力すると会員ページを利用できるようになっており、私も利用させていただきました。

合格発表について
12月第3週の月曜日に厚生労働省のホームページで発表されます。
同日に口述試験の受験表も発送されるのですが、このハガキが届いてやっと口述試験の日程を知ることが出来ます。

6.口述試験の勉強法

口述試験対策のポイントは以下の2点です
①出題される質問を的確に予想すること
②予想していた質問に対し、正しい回答を「自分の言葉」で用意すること

①出題される質問を的確に予想すること
大事な順に解説していきます。

労働安全衛生コンサルタント会が毎年12月の初旬に行っている「労働衛生コンサルタント( 保健衛生)口述試験受験準備講習会」への参加はマストです。講習会で配布される資料の中に「予想質問集」を作ってくださっている講師の先生がいらっしゃいます。
この講師の先生が作った予想質問を網羅すれば、まず間違いなく合格するといっても過言ではないほど素晴らしい内容です。
実際に私が口述試験で聞かれた質問内容もその範囲内のものでした。

次に参考になったのは、先ほどご紹介しました柳川先生のページの会員専用掲示板です。こちらの中身につきましては、会員専用ですから内容への言及は避けますが大変有用でした。

私は上記2つをもとにして、366個の予想質問とその回答を作成して、試験に臨んでいます。

②予想していた質問に対し、正しい回答を「自分の言葉」で用意すること

私は「労働衛生コンサルタント( 保健衛生)口述試験受験準備講習会」「柳川先生の会員専用掲示板」を踏まえ、予想質問を400個弱作成しました。
その上で、下記資料を用いて自分の言葉で予想回答集を作成しました。
①「労働衛生のしおり」
②衛生管理 上 第1種用
③労働衛生コンサルタント( 保健衛生)口述試験受験準備講習会の資料
④厚生労働省ホームページ、リーフレット

口述試験の受験をするにあたり面接の練習は一切しておりません。
自分で作成した予想質問集と回答を単語帳アプリに入力して、ひたすら暗記しました。これだけで十分に合格できると思います。

私が当時作成した口述試験の予想質問集回答の作り方については、note記事を別に作成しました。良かったら参考にしてください。

7.口述試験の実際

①口述試験の場所・日時
口述試験は大阪と東京の2会場に分けて開催されます。
令和5年度は以下の日程となっておりました。
大阪:令和6年1月16日(火)~1月17日(水)のあらかじめ指定する日時
東京:令和6年1月30日(火)~2月1日(木)のあらかじめ指定する日時

受験生側が日時を選択することはできず、前項で説明した口述試験の受験表が届くまで、何日の何時から試験なのかわからないようになっています。

令和5年度の東京会場は東京国際フォーラムの会議室でした。
指定された時間の30分前までに受付しなければならず、受付をすると控室に通されます。控室は比較的広く、勉強もできるよう机と椅子が並んでいました。
自分の順番が回ってくると、呼び出しがかかり移動をすることになります。
ちなみに私が出会った受験生の中で、スーツじゃない人はいませんでした。

②口述試験の内容
3人の試験官と約10~15分の口頭試問になります。
3人の試験官の立場は具体的にどのような人たちか明かされていませんが、3人のうち1人は行政からの人員だと噂では言われています。

私の場合は、正面にいる試験官→右側の試験官→左側の試験官の順に5分弱ずつ質問を受けました。それぞれの試験官の質問は約5問程度で、質問に答える→関連した質問を更に聞かれるという構図でした。
質問された内容は全て想定範囲内であり、予期せぬ質問は特にありませんでした。

③口述試験の合格発表
3月第3週の月曜日に厚生労働省のホームページで発表されます。
同日に合格証も発送されるようで、同日または翌日あたりに以下のものが届きます。
・合格証
・日本労働衛生コンサルタント会のご案内
・合格者への労働衛生コンサルタント登録申請案内
・登録申請書
・払込取扱票

最後に

ここまでお読みくださいまして、まことにありがとうございました。
労働衛生コンサルタントの勉強はとても楽しくて、臨床医としての自分にも良いフィードバックがかかりました。
救命救急と有害業務の関係は意外に深いんだなぁ・・・とか、病院での業務にも危険はたくさんあるんだなぁ・・・とか、勉強すればするほど、皆さんも楽しくなってくると思います。

受験に関する質問や相談については、序盤にも書きましたように以下を満たした方は無償で質問に答えます。
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