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徳島県上勝町ゼロ・ウェイスト・センター HOTEL WHY?で考えた。

高槻ー上勝町

前々から気になっていた上勝町、去年のゼロ・ウェイスト・センター竣工に伴って夫の興味の範疇にも入ったので、家族で行くことにしました。9時半に高槻を出て、淡路島経由で向かう。淡路SAで休憩、徳島市内を抜けて一つ手前の勝山町にある道に駅で休憩、12:30には上勝町に到着。思ったほど遠くない。もう稲刈りしてるの!(新米を美味しくいただきました)

カフェ・ポールスター

ランチの予約をした時に「お手拭きの用意がないのでハンカチを持ってきてください」と伝えられて「あ、それでいいんだよな」と新鮮な思いに。使い捨ての紙おしぼりは提供したくない、さりとて布おしぼりを出すコストや管理も大変。多くの人は持っているであろうハンカチに念押しすることで、お店の思いが押し付けがましくなく、スッと伝わって気持ちが良い。

そしてなによりお料理が美味しい。ほとんどが地元の食材、特に突飛なレシピでもなさそう、でもこりゃあ他にないな!と思わしむるのが見事でした。「上勝でこういうコーヒーが飲めたらいいなと思って」みたいな紹介も、お店が目指したいものがクリアでとても良かった。ランチにスイーツにコーヒーまでフルコース。子はおもちゃで遊んだりしてすっかり長居してしまった。

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上勝町ゼロ・ウェイストセンター/HOTEL WHY?

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街をうろうろしようかと言っていたのだけど、結局チェックイン開始に合わせてホテルへ。石鹸は必要な分を自分で切り、お茶とコーヒーは欲しい量を申告してガラス瓶と茶筒に入れていただくシステム。「1泊でどれくらい石鹸を使うか」なんてこれまで考えたこともなかったのでちょっと動揺する。そういえば、ホテルから出る石鹸をリサイクルするUnisoapってプロジェクトもあったわね。

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八角形の二辺分、狭いようで必要充分なお部屋は、とてもいごこちがいい。外向きの壁面のほとんどは、町中から集められた廃材の建具で、カーテンもいろんな幅の布を継いだもの。夫はあちこち開けたり閉めたり測ったりしながら唸り声をあげていた。子は階段下収納を自分の部屋を定めたよう(戸を閉めたら「くらくてこわい」と苦情が出た)

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ゼロ・ウェイストセンターツアー

宿泊者向けのツアーに参加させていただく。そもそものきっかけは野焼き&無法状態だったところから、決死の思いで建設した小型焼却炉がダイオキシン規制法によってたったの2年で負債を残したまま稼働中止したことから、と聞いて驚いた。切実すぎん、それ。

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人口1500人の町は自前で焼却処理施設を持つことができない。資源になるものは資金源だし、燃やせないものに関しても、どう分けたらより処理費がかさまないか、全国のどこの業者に引き取ってもらえるかを考えるうちに45分別に。そしてさらに、そもそもゴミに出さない経済の回し方を考えられないか…。「未来志向で意識の高い取り組み」だと思っていたゼロ・ウェイスト宣言が、過疎に向かう小さな町が直面している現実に、真正面から立ち向かう、地に足がついた戦略である、ということを知りました。

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ガイドをしてくださったお兄さんは、エコロジーとか環境負荷とかサスティナビリティとか、そういう耳馴染みの良い言葉を全く使っていなかったように思うし、それぞれの分別パネルには1kgあたりいくらお金が入るか/出ていくかが明記されていて、誰もが納得してゴミを分別し、自分の町を保っているという印象を受けました。

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例えばプラごみ、プラマークがついている綺麗なものは製鉄時の還元材やリサイクルプラスチックとして使えるので1キロあたり0.51円支払えば引き取ってくれる。一方、ラップとかバランとか、素材の明記がないものは固形燃料にするしかないので1キロあたり53.8円支払って引き取られる。この差たるや!

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たとえば衛生用品や素材ごとにバラバラにできない靴や鞄などは「どうしても燃やさなければならないもの」。この分類名の苦渋っぷりがすごい。ざっと見た中で一番処理に費用がかかるのは乾電池と蛍光灯。水銀を含むゴミの処理施設は、北海道にしかないんだとか。

「分ければ資源・混ぜればゴミ」とはよく言うけれど、「資源を分けるのはお金になり、ゴミを混ぜれば金食い虫」というレベルでした。トータルではもちろんマイナスで、ごみ処理費用が発生しているのだけど、一般的な自治体では年間市民一人当たり20,000円ほどゴミ処理に使っているところ、上勝はその半分程度におさまっているそう。

受付に併設された、自分はいらないけどまだ捨てるのは惜しいものを集めた「くるくるショップ」も魅力的だった。無償で持ち帰れるので運営自体で利益を生むわけではないのだけど、意識づけにはとてもよい。チェックアウトの時に、なかなか乾かないこどものくつのおかわりをいただいてきました。靴下もセットで。

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45分別体験

夕食のRISE&WIN BREWINGのすばらしさ&朝食キットのスマートはまた別項にするとして、チェックアウト時に、お部屋で出たゴミを上勝ルールで分別する体験をさせてもらう。ゴミ出しするだけなのに緊張する!通常、町民のみなさんがゴミを出す時間は来訪者立ち入り禁止なんだけど、宿泊者パスを首にかけていざ。

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ハナかんだティッシュ、お菓子の包み紙、道の駅で買ったぶどうのプラトレイ、鮎ずしのトレイとラップとバラン、缶コーヒー、番茶の出涸らし。お部屋の6分類では同じ「紙」だったものの、cafe polesterで買ったスコーンを包んでもらったクラフトの紙袋は「雑紙」、ppコートをしてある包紙は「雑誌」のところへ。ボトル缶コーヒーも本体は「アルミ」、パッキンのついた蓋は「金属キャップ」ああ、この解像度の違いよ…!

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前日のツアーで、ゼロ・ウェイスト宣言をしたものの実際のリサイクル率は80%程度で高止まりしていると聞いた。消費者の立場ではおそらくこのあたりが限界で、あとは社会の仕組みを変えていかないと難しいとのこと。我々が出したゴミの多くも隣町で買った商品の包装だった。

上勝でどうしても減らないのは、その高齢化率もあって大人用の紙おむつ。赤ちゃん用のおむつは、町が布おむつサポーターなる制度を作って応援しているらしい。ただ、それとおなじ要求を介護現場にもできるか、というとまたそれは違う困難さがある。

花王の詰め替えパウチのみを集めて、ブロックに再生するという試みもサイクルしはじめているらしい。うっすらいい匂いのするブロック。これどんなプラでもできればいいのにね、と訊いたら、コスト面と衛生上の問題でなかなか難しいらしい。消費者がやれることを突き詰めた結果、今度は社会システムを変えるべく、企業との協働が生まれるというのは面白い。(頭でっかちだと、後者が先に来がちだよね)

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で、わたしはどうするか。

「ゼロ・ウェイスト・アクションホテル」と冠しているだけあって、さてこの経験をしたわたしはこれからどうするのだろう、と考える。普段暮らしている高槻市は、資源以外は気前よく燃やすタイプの自治体なので、45分別などはしようがない。そうなると、ゴミになる前の段階を減ずるしかないと思いはするのだけど、近所のスーパーはレジ袋は有料な割にどこも野菜をあらかじめPPパックで包んでいるし、たとえば計り売りしてくれる京都のお店まで電車に乗っていくのはどうなんだろうとため息をついたりする。

となると、余ったごはんをラップ包むよりタッパーに詰めるとか、ウエットティッシュじゃなくて立って水道で手を洗ってタオルで拭くとか、資源ごみをはじめとした、リサイクルルートが身近に確立されているものに関してはきちんとルートに乗せるというのを意識するしかないんだな。高槻は上勝にはならないし、なる必要もない(いまのところきっと)。

翌朝はわりと早く出てしまい正味20時間くらいの滞在だったので、今度はもっと奥の方行ったり日比野克彦の作品見たりお店で買い物したい。事前にそれなりに記事とか読んで行ったのだけど、現地の印象がカラッとしてとても良かったので、ぜひ一度足を運ぶことをおすすめします!

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