私の夢

「この服をつくってくれた人に御礼が言いたい」

初めてそう思ったのは2016年春。
ブランドをスタートさせてすぐのことでした。

名もなき私の、名もなき店が、
名のある企業・名高い場所にデビューして、
名前のついた服”が並び、名前も知らない誰かに選ばれる。

「私の商品が売れてる…
本当にそんなことがあるの……?」

こんなすごいことの主人公が私自身だということが信じられなくて、信じようとすればするほどこの奇跡のような現象に恐縮しきり、常時涙目でいるような日々。私の心は感謝の念を通り越し、この世の全てを拝み倒したいと思うほど、何かに頭を下げたいような感覚で溢れかえっていました。

私に店を持たせてくれた石川康晴社長、事業部のメンバー、店頭スタッフ、お客様、関わってくださる全ての人に、チャンスがある度ありったけの感謝を伝えていた私は、ふと、鏡に映る赤いワンピースを見て思いました。

「この服をつくってくれた人に御礼が言いたい。
誰がどうつくっているのか知らないけど、売っている私たちの前に、服の形にしてくれた誰かがいるはず。会いたい。ものすごく会ってみたい。会って、話して、私の気持ちをたっぷり伝えて、この服を一緒に着たい!」

これは私にとって、服屋としての人生を与えてもらった自分が辿り着くべき未来だと、強く思いました。

他人から見たらどうでも良いことかもしれない。
生産背景を知らなくても毎日服は生まれるし、毎日服は売れていく。それに世界中のほとんどの人は、そんなことに興味が無い。

アパレル従事者だって、ファッション業界人だって、多くの人がそんなことに見向きもしないのは知っている。

それでも私は、自分の人生において一番しっくりくるテーマを見つけたという気持ちでした。

これは私が、私こそが自分自身で叶えるべき。

それから私は、服の生産背景に強い興味を抱くようになりました。

さっそく私は石川康晴社長「生産現場に行きたい。私たちの服が縫われているのを、この目で見たい。実費でも何でも良いから絶対行く!」と宣言。さぁ場所を教えてくれ、と迫りました。

石川さんはいつものようにふふっと笑い、「いいね。ぜひ行ってきて。えるのために必ずなるよ。」と一言。生産に関わる担当部署や責任者を繋げてくださいました。

しかしながら私は本当に学の無い人間で…
服は“人が縫っている”ということすら知らず…
ベルトコンベアー式に勝手に自動でミシンで縫われていって完成するものだと思っていました。(本当に顔から火が出そうなほど恥ずかしいのですが、どう作られているかなんて興味を持ったことすらなかった…)

そんな私にとって、“服の生産背景を識る”ということは、人生を全く別の方向に変えてしまうことでした。まさか人間が一枚一枚縫っているなんて!



弊社の製品は基本的にMade in China。
もちろん私のブランドも例外ではありません。

何も知らない素人の私にとっては正直、「中国はもしかしたら酷い環境かも?賃金が安すぎたり、衛生的に良くなかったり、子どもが働かされていたりするのかも…?」という不安もありました。

いつかどこかで目にしたテレビやネットの情報しかない私は、根拠も証拠も特にない「中国の工場はやばい感じがする」という感覚に支配され、良いイメージを持つ余白すら持ち合わせていなかったのです。

妄想は悪い方向に膨らむばかり。

「私たちの服をつくってくれている人が不幸で良いわけがない。私がこんなに素晴らしい体験をさせてもらっているのに、チームの仲間が心地よく働けるように環境を整えてもらっているのに、裏側の人たちが苦しんでいるのは絶対に良くない。
私たちの服はそんなことのためにあるんじゃない。だから、そうじゃないってことをこの目で見たい。資料じゃなくて、現場を見たい。私は彼らに御礼がしたい。

あなたのおかげで私がいて、あなたのおかげで私たちがいるよって、ただそのことを直接伝えたい。

言葉がうまく通じなくても、気持ちを通わせるために、私たちの裏側にいる人たちと出会いたい。そもそも裏も表もない!裏とされてしまっていることと、表できちんと会話がしたい。」  

そういうことを、時間をかけて社内担当者に伝えました。

しかし、現実はそんなに容易ではありませんでした。

事実として、私たちの生産背景への配慮はきちんとされている=劣悪な環境ではない、ということを私は様々な資料や組織を通して知ることができました。大企業なりにできることをこんなにコツコツやっているのだと感激すらしたほどです。(どこまで書いて良いかわからないのでここでは割愛しますが、私はとても納得する点が多かったです)

しかし、私たちのブランド「LEBECCA boutique」は古着中心の業態。同じ会社の他ブランドに比べて、オリジナルアイテムのロット数(生産枚数)が極めて少ないのが現状です。

そのため私の「縫っている現場をこの目で見たい」というリクエストに応えるのは非常に難しいことでした。

結論としては、「大量に生産していればいつ現場にお邪魔しても自ブランドのものが縫われている状態かもしれないけれど、今の私たちのアイテムは“合間の時間に一瞬で”縫われているはず。売上規模の小さいブランドのリクエストに応えるためだけに工場を指定したり、タイミングをわざわざ合わせてもらったり、時間を割いてもらったりすることは自社工場でもないので困難。」とのこと。

できないことはない。
でも今のブランド規模では難しい。

私に私の希望があるように、相手には相手のそれがある。お互いに仕事だし、それぞれにルールもあるし、思いや考えも各々あって、生活も別々にある。私だけの正義を振りかざしてはいけない。

じゃあ、売上を上げれば希望が通るのか。
そのためにはロット数を上げれば良いのか。
でも、私は過多に服をつくって売上を上げる考えは無い。それは信念に反している。


「今じゃない。でも、安全だから、安心して。」

たくさん考えて、たくさん相談して、たくさん人を困らせて、たくさん泣いて、たくさんたくさん心で想って、私は今すぐに叶えることをそっと諦めました。

もちろん今すぐということを諦めたのであって、完全に断念したわけではありません。今でも掲げ続けている目標であり夢であり、私自身の理念でもあります。思っていることも考えていることも、ずっと変わってません。むしろ深まるばかりです。

セミナーや勉強会に行ってみたり、友人のツテで生産工場に行ってみたり、世界の現状を知ろうと調べたり。職人の仕事に感激することもあれば、遠い国のむごたらしい現状に眠れなくなったり、今も日々その繰り返しの中で服屋としての人生をゆっくりゆっくり進めています。

でも、知識を蓄えることが目的ではないのです。

私は、自分が納得するモノづくりがしたい。ただそれだけです。

私はこのチームが大好きです。そしてこの仕事を心から愛しています。今のLEBECCA boutiqueでのモノづくりは、私が最大限納得する形でやらせていただいています。

でもそれは最大限。最上級ではありません。

私にはもっとできることがあると思っていますし、私には大きな夢も、希望も理想も強くここにあります。自分のそれを叶える方法は、このブランドを諦めなくても辞めなくても必ずある、そう信じています。

私はLEBECCA boutiqueやストライプインターナショナル社のやり方に不満があるわけでも、壊してしまいたいわけでもなんでもありません。繰り返しますが、ここでは今の自分が最大限納得する形でやらせていただいています。

服に名前をつけて販売すること、服をつくりすぎないように配慮してもらっていること、私のSNSでの発信を自由にしてもらっていること、私をフリーランスのままにしてもらっていること、私の思いや言葉が伝わるスタッフだけで運営させてもらっていること、、、その形は挙げ始めたらキリがありません。私が最大限納得して続けている仕事は、たくさんの人に支えられて今日も叶っています。

でもそれとは別に、今すぐにこの環境では難しいことではあるけれど、それはわかっているけれど、私にはもう一段階叶えたいことがある。叶えるべきことのようにも思える。私は、自分が納得するモノづくりがしたい!ただただその夢を実現させたいのです。

私は必ず叶えます。絶対に叶えてみせる!

このnoteは、そのことを追い求める私のことを、少しでも文字にできたらと思って書いています。

こんな私に何が起きているのか。何を考え、何を思い、どう今の仕事をしているのか。有名人でも権力者でもなんでもない、一歩ずつしか進めないちっぽけな人間が、目の当たりにしたりぶち当たったりしていることを、未熟者ながら少しずつ書けたら。そう考えています。

ここは服屋としての記録であり報告書であり、お悩み掲示板のような場所と思っています。まだまだ下手くそなので読みづらさはあると思いますが、精進します。あたたかい目で見ていただけたら幸いです。

LEBECCA boutique
ブランド総合ディレクター
赤澤える


PHOTO:ABE AKIHITO
(ブランドタグの写真のみ私が撮影)

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赤澤える

服と服屋のこと

服のこと、服屋としての自分のこと、全力で向き合う日々。私の思いや考えを書きます。
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