ミツモア×センシンロボティクス×WHILLが語る、急成長ベンチャーのリアルと、ベンチャーキャピタリストの働き方

日々、成長を続けるスタートアップ。勢いよく事業を拡大するスタートアップを、支えているのがベンチャーキャピタリストという仕事です。

急成長ベンチャーの実態や、ベンチャーキャピタリストの仕事は、なかなかイメージしづらいもの。そこで、グローバルVCや、急成長ベンチャーで活躍する5名が集まり、前半はベンチャーキャピタリストのリアルを、後半は急成長中のスタートアップのビジネスを、お話いただきました。

急成長スタートアップからは、ミツモアCEOの石川彩子さん、センシンロボティクスCEOの北村卓也さん、WHILL VPoHuman Relationsの青野真耶人さんをお招きしています。

異業種から転職したベンチャーキャピタリストが語る「起業家に寄り添う」仕事

── まず、鈴木さん、下村さんはどういうきっかけでVCに転職しようと思ったのですか。

鈴木:
わたしは内科医として臨床経験を重ねた後、外資系コンサルティングファームに8年間勤めました。ERVJには、2018年に参画しています。

医師の仕事も、コンサルティングの仕事もやりがいがあったし、好きだったのですが、よりイノベーションに近い仕事をしたいと思って、VCに転職しました。ヘルスケア領域で高いバリューを発揮できると感じたのも、ERVJを選んだ理由の一つです。

鈴木 利衣奈 Liena Suzuki (ヴァイスプレジデント)2018年にEight Roads Ventures Japanへ参画。慶應義塾大学医学部を卒業後、内科医として東京都立大塚病院に勤務。在籍中に公認会計士試験に合格し、ボストンコンサルティンググループに入社。同社ヘルスケアプラクティスエリアのコアメンバーとして、東京オフィスおよびシカゴオフィスで国内外の製薬会社や医療機器メーカー、病院などへの幅広いトピックに関する戦略コンサルティングに従事。製薬企業、医療機器メーカー、病院のビジネスディベロップメント、M&A関連の業務に多数関わる。バイオテックやヘルスケア領域のイノベーションに強いアスピレーションを持つ。


下村:
わたしは投資銀行のリサーチアナリストをした後、エンタメ系事業会社の経営企画責任者や、自分の立ち上げた会社のCFOを兼任してきました。

もともといろんな業界の隆盛を考えたり、企業分析をしたりするのが好きでした。中でも、事業会社に入ってから、起業家やクリエイターと話すうち、彼ら・彼女らが「社会をより良くしていきたい」という想いを持ち、それを実際に成し遂げていくのを見て、もっとそういう人たちと仕事をして、面白い世の中をつくっていきたいと、思うようになったんです。

それでVCに興味を持ったのですが、ERVJはグロースステージを対象としていたこと、グローバルにアセットがあるところに惹かれました。グロースステージは、アートとサイエンスの両方が求められます。その領域で、ハンズオンで支援しつつ、グローバルに展開できるファンドは稀有なのではないかなと、思っています。

下村 紗介 Sasuke Shimomura(アソシエイト)2022年よりEight Roads Ventures Japanに参画。早稲田大学政治経済学部を卒業後、ゴールドマンサックスに入社。リサーチアナリストを4年間務めた後、2020年よりを手掛けるUUUMに経営企画の責任者として入社。そのかたわら、旧友と立ち上げたスタートアップのCFOも務めた。


── VCを志す方からは、「ベンチャーキャピタリストって、実際何をしているの?」とよく聞かれるのですが、仕事内容について解説していただけますか?

鈴木:たしかに業界の外にいると、どんな仕事をしているのかわかりづらいですよね。

ベンチャーキャピタリストの仕事は、大きく3つの柱があります。1つ目は、新しい投資案件を見つけるためのソーシング・ネットワーキングで、もう1つは、投資候補先のデューデリジェンスや、投資決定後の契約業務です。

それから、ERVJの場合、もう1つの柱は、すでにご支援させていただいているスタートアップに対して、ハンズオンでアドバイスする仕事です。投資決定からイクジットまで、投資先企業を最大限サポートすることは、ERVJがとくに力を入れている業務です。

この3つの業務の割合は概ねいつも同じくらいですが、タイミングによって投資先企業のサポートがほとんどになる時期もあります。

下村:僕自身も、ほんの5カ月前までは「VCのしごとって、結局何?」と思っていたので、よくわかります。

この5カ月間のリアルな働き方についてお伝えすると、まず入って数カ月は、新しい投資先のデューデリジェンスの比重が高くて、空いた時間でポートフォリオ企業の理解、ネットワークづくりをしていました。

ここ最近は、投資先企業のサポートも増えてきました。それまでに積み重ねたネットワークの中から、空いた時間でソーシングをしたり、デューデリジェンスに集中したりしています。

VCは思ったよりも自由。好奇心に任せて仕事をデザイン

── 入社してみて、想像と違ったところはありますか?

下村:思った以上に自由だ、ということです。とくにネットワーキングやソーシングは自分の裁量に任されています。ですから、入社してすぐ、「これから自分の時間をどう使い、どうデザインすれば、自分らしいフランチャイズをつくっていけるのだろう」と、考えるようになりました。

── どんな人が、ベンチャーキャピタリストに向いていると思いますか? ハードスキル・ソフトスキルの両面で教えてください。

鈴木:言われたことをやるというよりも、知的好奇心を持って、業務もキャリアも自ら開拓していきたい方が向いていると思います。

私たちはグローバルなファンドですので、常にフィデリティを母体とする、全世界の姉妹ファンドと、密に連携しています。こうしたグローバルのケイパビリティを生かしたいと思っている方も、向いているのではないでしょうか。

下村:入社して感じたのは、アートとサイエンスのバランス感覚が良い方が多いなということでした。

グロースステージへの投資の場合、いろんなフェーズで多様な業務を求められます。投資判断をする際は、大きな規模のリスクマネーを投じるため、イグジットを見据えたシナリオ分析や数値分析など、定量的な数値をベースとしたサイエンス的なアプローチが必要です。

一方で、投資先はスタートアップですから、経営チームや、目指している世界観など、数字だけでは表せないアートな部分があるのも事実です。そうした面をしっかり見抜いて投資する必要があります。アートとサイエンスの両面を、バランスよく見極められることが大切だと思いますね。

日々、投資先をサポートする際も、経営者や投資家のみなさんと細やかにコミュニケーションし、調整していく必要があります。相手の立場や思いを汲み取りながらじっくり関係性をつくり、その中でも自分の色を出していくことが大切ですね。

── VCで働いてみたい方に、伝えたいことはありますか?

鈴木:ベンチャーキャピタリストは、とてもわくわくする仕事です。人こそが、財産です。みなさんが仲間になってくださることを楽しみにしています。

下村:一緒に、面白い世の中をつくっていく仲間を募集していますので、ご興味のある方はぜひ声をかけていただけたらうれしいです。



社会課題をテクノロジーで解決するスタートアップの醍醐味


── では後半は、当社でご支援している投資先企業の中から、社会課題を解決しようと邁進している3社にご登場いただき、大切にしていること、採用ポジションなどについてお話いただきます。ミツモアの代表、石川彩子さん、センシンロボティクスの代表、北村卓也さん、そしてWHILLのVPoHuman Relationsの青野真耶人さんです。まずは、ミツモアの石川さんお願いします。

石川:弊社は2017年創業で、「日本のGDPを増やし、明日はもっといい日になると思える社会に」というミッションを掲げています。人口が減る一方の日本で、適切なIT投資によって労働生産性を上げることを目指しています。

石川彩子氏 Ayako Ishikawa (株式会社ミツモア 代表取締役CEO 創業者) 東京大学 法学部卒。ベイン・アンド・カンパニーでのコンサルタント経験を経て、シリコンバレーのEC企業で開発管理や経営管理業務に従事。帰国後、ミツモアを共同創業。ペンシルバニア大学ウォートン校MBA取得

石川:私たちが提供しているのは、創業時から運営する集客プラットフォーム「ミツモア」と、電気工事やリフォームなどの現場仕事に特化したVertical SaaS「MeetsOne」の2つのプロダクトです。「MeetsOne」が生まれたのは昨年ですが、すでにミツモアとMeetsOneが相互に作用し、現場仕事の事業成長と依頼者満足度を飛躍的に向上させるエコシステムができあがっています。


ドローンなど「日本発」のプロダクトで世の中を変えたい


──センシンロボティクスの北村さん、お願いします。

北村:私たちは2015年に創業し、電力設備、建設、プラント設備、災害など、人間にとってリスクの高い「現場」へ、ロボットやドローン、デジタル技術を用いたソリューションを提供しています。

私自身は、もともと外資系IT企業で長く働いていて、グローバルNo.1企業でエキサイティングな仕事に関わることもありました。その中で、次第にどうしても日本発のプロダクトとサービスで社会に貢献し、世の中を変えていきたいと思うようになったんです。それで、創業することを決めました。

北村 卓也氏 Takuya Kitamura(株式会社センシンロボティクス代表取締役社長)1977年生、学習院大学卒 日本IBMを経て、2008年より日本マイクロソフトでコンサルティングサービスビジネスの立ち上げ及びサービス営業担当部長としてビジネス拡大をリード、2016年より前職SAPジャパンではビジネスアナリティクス部門にて機械学習を中核としたデータアナリティクス事業を推進。2018年10月よりセンシンロボティクスに参画。Design Thinkingファシリテーター、無人航空従事者試験1級。

北村:日本は、労働人口の減少や、老朽化する産業/社会インフラ、災害大国であることなど、課題先進国だと言われています。たとえば2022年だけでも、台風の被害で送電鉄塔が倒れたり、補修されていない橋やトンネルなどが7,000カ所以上あることが明らかになったりしているんです。

センシンロボティクスでは、日本が抱えるこうした社会課題を解決し、その解決方法を諸外国へ輸出していきたいと考えています。ただ、これまでは「アナログ規制」があり、インフラ点検や建設現場の巡視は、人間が現地へ出向いてアナログで目視しなければなりませんでした。最近、9,000にも及ぶこの条項がいよいよ撤廃される機運が高まってきて、定点カメラやドローン、ITツールなどを活用してよいという流れになってきています。

そして、いまや私たちのプラットフォームは、太陽光発電施設や風力発電施設、石油タンクなどの点検で活躍。組織は、11カ国から集まったメンバーによるグローバルチームとなり、中にはロボコンのチャンピオンや、海洋探査ロボット世界2位保持者も在籍しています。

北村:では具体的に、私たちが何を提供しているかというと、全自動ドローンや自動走行ロボットなどのロボティクス(「SENSYN Devices」)から、それらの制御やデータ分析をするクラウドプラットフォーム(「SENSYN CORE」)。そしてデータを活用する業務アプリケーション(「「SENSYN Apps」」)まで、一気通貫でサービスを提供しています。。

中でも特徴的なのは、「SENSYN CORE」というプラットフォームです。いまはまだ、ロボットを操作するにはリテラシーが必要です。ですから、誰もが手軽にロボットを使えるようにするためのエンジンや、ロボットによる取得データの蓄積、AIでの異常検知などの機能が必要です。これらの必要な機能が、ひとつひとつモジュールとして盛り込まれ、必要な機能が出てきたら、どんどん追加で実装できるようになっています。

実際のユーザーは、タブレット端末などにダウンロードされた「SENSYN Apps」を使えば、ほぼワンタッチで点検業務を行えるようになっています。


電動車いすから歩行領域のモビリティカンパニーへ。街とも連携


──最後に、WHILLの青野さん、お願いします。

青野:WHILLで人事責任者をしております、青野と申します。私たちは「すべての人の移動を楽しくスマートにする」というミッションを掲げ、車いす利用者から介護従事者、サービス提供者も含めてすべての人の移動を楽しくしたいと考えています。

世界には、500~600メートルの距離を連続して歩けない歩行困難な方が、約2億人いると言われています。そうした方々に、電動車いすというプロダクトを提供することで、社会課題を解決しようと考えています。

世の中には多様な移動手段がありますが、私たちが手掛けるのは、歩道と施設内を移動する「歩行」の領域です。この領域で、グローバルナンバーワンのモビリティカンパニーになることを目指して、日々事業に邁進しています。現在は、世界6カ国に拠点を構え、20以上の国と地域で製品とサービスを提供しています。


青野 真耶人氏 Mayato Aono (Human Relations室 VP of Human Relations) 電通国際情報サービスで金融系SEに従事した後、ブランドコンサルティングに携わる。その後2017年にWILLへ参画し、営業を経て2019年から人事へ。2020年12月から現職。

青野:WHILLはもともと、電動車いすというハードウェアを開発し、メーカーからスタートしましたが、いまや社内はソフトウェアエンジニアの方が多くなっています。レンタルサービスやシェアリングサービス、機体の一時利用などによるサービス提供の割合も増えてきています。最近では、アメリカの空港などで、WHILLの機体にロボットを搭載し、施設内を自動で動ける施設内自動運転タクシーサービスも提供しています。

北村:当社の強みは、機体の高いデザイン性と、ソフトウェア技術、そして段差の乗り越えや小回りを両立できるハードウェア技術の3つが両立している点です。

こうした先進的で安全なモビリティと、ユーザーのみなさんにとって利便性の高いソフトウェアの両方を活用して、付加価値を高めています。

2012年からこれまで、「近距離モビリティを製造・販売する会社」として事業を展開してきましたが、今後は、エレベーターや公共機関など「街のインフラ」とつながり、革新的な近距離移動を提供する会社として、成長していくつもりです。

── 現在、どのようなポジションを募集していますか。そして、どんな人と働きたいですか?

石川:CFOやCPO(チーフプロダクトオフィサー)、そしてクライアントとのコミュニケーションもお任せできるエンジニア、それからPdMやマーケター、営業、CSといった、あらゆるポジションでジュニアからシニアまで広く募集しています。

北村:当社も同様で、あらゆるポジションで広く募集しています。ちなみに、私たちの会社にフィットするのは、「究極の自分ごと化」ができる人。社会を支えるライフラインに関わっているというプライドを持ち、自分たちが生きていくために避けては通れない課題を解こうと思える方に来ていただけたらうれしいですね。

青野:日本事業をスケールさせる取締役候補や、海外でのBisDevなど幅広いポジションを募集しています。「すべての人の移動を楽しくスマートにする」というミッションに共感していただける、ミッションドリブンな方と働きたいですね。

近距離移動の課題は、今後よりいっそう身近になると思います。その課題に真剣に取り組みたい、グローバルで活躍したいと思う方に来ていただきたいと思っています。


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