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日本語教師日記vol.2「やんちゃな学生だけではないカンニングの実態」


留学生はカンニングの感覚が全く日本人と異なる!?

日本語教師をしている先生にとって、カンニングをしない学生をみたことがない先生はいないと言っても過言ではないでしょう。カンニング、英語では「ずるい」という意味らしいですが、日本語の定義は「テスト中にとなりの人の答えを見る」又は「持ち込みを禁止されている資料等を見る」ことであります。
「テストします」と言っていても、留学生はバンバン隣の学生の答えを見ます。自分が優秀だと思っている学生は、出来上がった答案を提出前にこっそりと友だちに回します。漢字テストの時など、しっかり教科書の対象範囲を机の下に仕込んで、満点が取れる体制を取ります。

言い訳は「少ししか見てない、先生」

罪悪感などはありません。友だちのを見てはだめです!と叱ると、「見てない先生。」見ているのを先生は見ていました!と攻め込むと、「少ししか見てないからいい先生」と、言い訳、言い逃れします。言い訳するので多少悪気があるかといえば、まったくやめようとしません。

友だちを見てもよしとする「ワーク」と、見てはいけない「試験」を切り分ける

日本の学校の感覚からすると、「テスト」は、自分の力だけで解かなければなりません。自分で解くのが「テスト」だということをしっかりと導入できていなければ、ただ完成を目指す「ワーク」と同じ感覚でやってしまうのかもしれません。
しかし、性善説は怪我の元。定期テスト、期末テストにあっても、彼らはカンニングをやめません。叱って、叱って、叱っても、やめません。解答用紙を取り上げると逆ギレする始末。やんちゃな学生とは1年以上このやりとりを繰り返して、ようやく「躾」ができてくるというのが現実です。とにかく「テスト」は自分の力でやるのだと言い続けるしかありません。

私が教える「カンニングをしてはいけない理由」

教師の立場では言ってはいけないことですが、JLPTなどの本番の試験で、合否が少なからず人生に関わる場面ならば、カンニングをしたくなる、してしまうのも人間だと思います。受験料を払って、合格という結果を得るか、不合格という紙くずを得るかは、おカネでしか考えない人にとっては大きな分かれ道です。
しかし、不合格だからといって、全てが無駄であるはずがありません。合格に向けて勉強したプロセス、そして何を自分がわかっていなかったかということが、おカネに代えがたい価値です。「試験」とは、スポーツでいえば「試合」のようなもので、自分ができないことを知るチャンスなのです。
カンニングとは、自分が知らないことが何かを知るチャンスを自ら失う行為です。実際、普段からカンニングの癖が抜けない学生は、2年間日本語学校に在籍しても、結局N4にも受かりません。アルバイトでどれだけ会話を鍛えられたかはしりませんが、N4も受からず日本語学校を卒業するなんて、教師からしたら恥ずかしくてたまりません。
過去カンニングの癖がなかったわけではないが、先生の指導をキチンと受け止めて、自分の力で一つ一つこなそうと頑張った学生がいました。非漢字圏出身ながら、彼はみるみるうちに力をつけて、N3にはラクラク合格し、N2までもう少しというところまで迫りました。専門学校に進学しましたが、このペースで自律的に学習するれば、1年位内にN2に合格するでしょう。
やんちゃな留学生に大して、ルールや倫理を説いても通用しません。私は、金を説きます。おカネを払って日本語学校に来ているのは、ビザを得て、アルバイトをするためだろう。しかし、せっかく金も時間も投資しているのだから、リターンを得なければならない。家ではどうせ勉強しないんだ。だから、学校にいる間は、ガチでカンニングなしの「試合」をして、自分の不出来をチェックするのだ。できないのが恥ずかしいからカンニングしたくなる気持ちもわかるが、みーんな最初はできないのだから、とにかく自分でチャレンジをする癖をつけなさい。わかりましたか?
「はい!先生!」

結論:何をどうやっても改善しない

翌週の授業、漢字テスト、小テストと行いましたが、監視していないふりをしているとすぐにカンニング開始。先週の今週なので、私も超大きな声で、「おいこらぁぁ」と叫び、学生がちびるほど鼓膜を震えさせました。手は出せませんからね。どうして先生が怒ったかわかるか?君たちが、自分でおカネを捨てようとしているから怒ったのだ。
すると、先生、「すぐ国に帰るから漢字いらない。」あーそうかよ、じゃあ今から帰れよ。というのが、一般の人間の考え方ですが、日本語教師とは不思議なもので、いつかは考えが変わって、卒業式で泣いて謝るのを知っているから、ぐっとこらえて授業を続けるのです。
こらえるけど、声を出しまくりますよ。カンニングでイラッとした日は、リピート練習、コーラス練習は、スラムダンク期のバスケ部のような地獄を味あわせます。しんどかったろう?へへへと聞いたら、「楽しかった先生。」日本語教育ってスポーツなんですね。

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