万物はあまねく常ならぬが世の習い。

気心の知れた友人でもいつ仲違いするか分からないし、いくら健康を心掛けても病に襲われる可能性は残り、どれだけ注意しても仕事や学習に失敗はつきもの。

全ての物事はランダムに移ろい、どんな秩序もほどなく崩壊する。

そのため人間の脳には、変化を嫌う心理が備わった。

変化から得られるメリットがよほど大きくない限り、私達の脳は不安や恐怖を発生させて好奇心を押さえつけ、同じ状態を保とうとする。

そうは言っても、未知の情報を受け入れずに見知らぬ他人におびえてばかりでは、成長が止まってしまう。

現実が常に変わり続ける中で、ずっと同じ地点にとどまり続ければ現状維持すらおぼつかない。

その点で無我の精神は、自分の変化を恐れぬメンタリティを与えてくれる。

無我に至るプロセスで育んだ降伏のスキルが、世の中の不確実性、複雑性、曖昧さを心から受け入れさせ、眼前の変化は本当に避けるべきかを塾考する余裕を呼び起こしてくれるからである。

限りない受容力を見つければ、変化に伴って起きる不安・恐れ・怒りにはただ降伏の態度で臨み、ネガティブな感情を放置しながらも複数の経験を積み、さらに多彩な他者と交わりを持つことができる。

そして、世界の変化は、可能性の源泉に変わるのである。