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【ペット】犬は調味料

僕は移動中、良くない事ですが、かなりスマホに依存しています。歩きながらでも操作するのが普通になっています。

特に躍起やっきになってスマホをいじくるのが、通勤と仕事の移動時です。理由は簡単で、仕事という名のストレスから少しでも早く、または、少しの間だけでも距離を置きたいから。

行きは、この一週間をどうまとめるか、今日一日をどうまとめるかを、考えつつ、目が覚めるような動画を探します。時には未解決事件を聞いて「あぁ、やっぱり一番怖いのは人間だ。言葉を鵜呑みにするのは気をつけよう」と恐怖の力で連休の寝そべった気分を起こし、時には格闘技の名勝負を観て「いや、まじで、カッコイイ。チームメイトは選手が誇らしいだろうな」とめっちゃ勇気をもらって、半ば選手みたいな気持ちで出勤します。

帰りは、仕事モードを持ち帰りたくないので、ゆっくり歩きながら、疲労感をため息で放出できないかなぁと何度も試みつつ、気分転換を図ります。時には未解決事件を聞いて「あぁ、やっぱり人間のやる事で解明されない事が一番怖いな」と恐怖しながらも今日を平穏無事に終われることを感謝し、時には格闘技の名勝負を観て「うわ、やっぱかっこいい。試合の後はノーサイドが素敵だよな」と試合もしてませんが、対戦したばかりの選手と試合後に健闘を讃えて肩を叩き合うような意気揚々とした気持ちで自宅のドアに鍵を差し込みます。

このように、現実と脳内を大きく乖離かいりさせる事で、オンとオフの切り替えをしています。

そんな毎日に激変が起こりました。

皆さんご存知か分かりかねますが、四つん這いで尻尾がついてる、人間の中では毛深めな僕よりもは遥かに毛むくじゃらな生き物で、その名をいぬという動物がいまして、その生物が我が家にやってきたのです。

ものを動かす単位に馬力ばりきという表現がありますが、馬に負けず劣らずなかなかな出力を保有していて、革製品を噛みちぎり、百均の専用おもちゃは一時間も立たず全壊。女子供は、さながら運動会なら決勝かなといった具合で綱の引き合いを繰り広げていました。

日本では大型に分類されていることもあり、力も食欲も、もちろん排泄ももはや人並みで、出勤前、朝一の排泄物は毎日に追われ時間と余裕のない僕を人生で五本指に入るくらい追い詰めました。

もちろん、人の言葉を一部理解する知的さは兼ね備えているようでしたが、よそ様の痕跡を嗅ぎ倒し、あわよくば味見をし、水溜りがあれば″あれ?ブルドーザーと散歩してたっけな″と思うほど雨水を掻き分け、完璧に僕の日常は崩れ去りました。

一時は自分史上最高にベロベロに弱っていましたが、ただ、そんな日々も成長と共に食費と排泄の量以外は苦労も減っていきました。

我が家に来た犬もいつからか、僕の憤怒がどこの犬よりも感情剥き出しに気違い染みていること、上機嫌であればおやつの量が増えることに気がついたようで、それこそ平穏無事な関係性が構築され始めました。

すると、これまで分からなかった犬という生物のことも分かってきました。

犬という生物は、ほぼ毎日散歩をする必要があり、それは雨の日でも最高気温の日でも変わりません。その他、出来る限りトイレをするならココと決めていたり、散歩の時間に敏感で、スーツでは散歩に行かないけどジーンズを履くと散歩の確度が高まりソワソワするなどかなり規則正しい生き物のようでした。

その反面、散歩に出ると規則正しさは嘘のように毎回何かしらをやらかすのです。

我が家の大型犬は、どちらかというと寒さに強いようで、寒いと湘南乃風しょうなんのかぜファンかなと見間違うほど尻尾をグルングルン振り回して意気揚々としていますし、暑い日には「いや、違うんですよ、違うんです、ちょっとね、ちょっとアレなんですよ」という顔をして木陰に寝そべります。
春にはたんぽぽをビュッフェのように食べ、春が過ぎるとやはりたんぽぽの綿毛を隙あらばバイキングしようとし、調子が良かった時には道端の花は全て食べられます。
よくロープ周りを足で掻くのですが、寒い時期には早く帰りたい気持ちと相まってかなり鬱陶しいですし、暑い時期にもやはり早く帰りたいのにと鬱陶しいです。首を掻いている間は、やることもないので、夜であれば意外と星が出ているので見上げてみたり、日中であれば田んぼに水が張られる様や畑に蒔かれた種のパッケージで何ヶ月後には実ができるのかと感心したりしています。

とにかく、意外と毎回何かしら違うタイミングでしてくれるため、目が離せないのです。

散歩中に犬と出会うと「ちょっと、遊ぼうよ」とシャドーボクシングするヤンキーみたいに威嚇、もしくは、ダンスバトルみたいなフットワークマウントが始まるので、犬が見えると避けて違う道を進む事が多いのですが、その日はいつもと別の道、駅へ向かう道を選びました。

我が家の大型犬は、急な出力を制御するために胴ではなく首に紐を巻いているため、それが気になるらしくよく首を掻くのです。

先程から、記載の通り、気が済むまで三十キロの肉の塊のようになって掻き続けなかなか動かない為、かなり暇になります。

周りを見渡すとそこには、知らない花が咲いていて、幼少期どこかで話題や記憶にある気がして、スマホで調べようとしましたが、変なものを食べないか目を離せない為、ほぼ使用しないことも多く、その日はスマホを置き去りに散歩に出てきたため、その場で調べる事ができませんでした。戻って調べるとその花は彼岸花ヒガンバナと言い、九月ごろに一斉に咲く、大きめの一輪花でした。

もう九月になるのかと、温度だけでは季節感も曖昧だなと感じました。

そして、土日明けの月曜日、味気ない通勤路を歩くとそこには昨日我が家の犬と見た彼岸花がそこにはありました。

電車で出勤をする僕は、駅に向かいます。

動画から検索画面に移ると、未解決事件動画から聞こえる音声は止まりました。

歩きながら彼岸花を調べると球根には強い毒性があるそうで、この球根で毒物事件が起きたりしたこともやっぱりあるのかななどと思いを馳せました。

そこで、僕はふと気がつきました。

いつも歩く味気ない通勤路にも意外知らないことがあるんだな、と。

花なんて一日で花まで咲くわけではないので、これまでも芽が出て茎が伸びついぞ蕾が出来ていたことでしょう。しかし、それに気がつかないほど、現実から逃避し、何も見ていなかったのです。いつもとおんなじで味気ないものとして捉えていた通勤路も、いつも同じではないと教えてくれたのは我が家の犬でした。

よくよく考えると、散歩をし始めてから散歩時はスマホを置いてくることも多くなりました。

少し前までは、家の周りに何があるかなど気にしたこともありませんでしたし、何をするにしても片手にスマホ。もはや呪われた装備で解除出来ないレベルの所持率でした。

それが今では、どこにザクロの木があるとか、家と家の立つ間隔が離れていて風が強く吹く場所があるとか、この時期は雑草の種が犬の体について後が大変だから、この時期はこの道を避けよう、など最近になって覚えた事がたくさんあります。

そして、近隣の変化に気がついた時、僕はよく犬の話しかけます。

あぁ、もう春も終わりだね。
あぁ、もう夏が始まるね。

その時何となく深呼吸をして、気温感や季節感を味わっている自分がいることに、最近気がつきました。

スマホはものすごいスピードで強制的に現実逃避をさせてくれる即効性のあるアイテムですが、それとは異なり、現実から逃げるのではなく、現実が思ってるよりも良いものだよと気がつかせてくれる持続性と健全性を持つのが犬という生き物のようです。

通勤路なんて感覚でいえば、噛みすぎて飲み込むタイミングがわからなくなった味のしない旨味の抜けた肉のようなものでしたが、犬に引き摺られる事で意外な面白さがあると気がつくことができました。

最初は膨大な排泄と圧倒的な破壊のパワーに手こずりましたが、今ではそんなこともあったなとノーサイドとしています。

これからも、色々な気づきをくれると想像すると良い意味で、犬と過ごす事のメリットに末恐ろしくなります。料理の味付けで仕上がりが変わるように、それぞれのシーズンで、しっかり暑さや寒さ、草木や日照などの味付けをして、日々を素敵なものにしてくれている犬は、毎日が味気ない人におすすめの家族かなと思います。

P.S.
ちなみに、我が家には他にもいろんな動物がるので今後ご紹介したいなと思いますが、他のペットと比較してもワンちゃんのいいところ表情の豊かさかなと思います。

動画などでもイタズラをしてジトーっと「し、し、し、知りませんけど」と目を合わせない犬の動画よく見ますが、あれは高確率で見れます。怒られるから、吠えたいけど吠えたくてぐぬぅと言ってみたり、散歩ですよねぇっ!と喜んでみたり、とても愛嬌があり、これは他の哺乳類よりも顕著ですね。

ただ、散歩やトイレ、餌などからワンワンを置いて外泊とかは難しいですし、小型ならまだしも大型犬も可となると、宿泊じゃなくても利用も出来る施設も限られるため、そこら辺は慎重に考えていただけると幸いです。

ただ、僕は今や大型犬の方が好きです。

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