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mother's memory No.3 夏休みだ、今こそ追い上げの勉強だ。

六月十八日

母、近所の人たちといっしょに金沢へ行った。四時半ぐらいの出発なので私も早くから起きて、ごはんをたいたり、おかずを作ったりした。

朝は兄弟四人でごはんを食べたり、そうじをした。

心の中で、バス転覆したらどうなるかなと思った。ほいたかって、となりの人らご夫婦でなかよく行った。


六月二十六日

学校から帰ったら、新しい勉強部屋ができていた。勉強部屋と言っても、二階のものおきの一部分をかこんで、ござを敷いてその上に机をおいてあるだけだ。

前から、私一人だけの勉強がほしいと思っていた。今までのは、兄と妹と三人の勉強部屋だったので、これから思いどおりになるかと思って、うれしくなってしまった。

妹は、めずらしいらしく、私が上にいくとそうっとのぞきにくる。

二階のガラス一枚わって、おこられた。


六月二十八日

とても、おもしろくなかった

これは、ねちがいして、一日中首が回らなかったからだ。

牧田先生に、美術の時間に「からだ、わるいの」と、聞かれたので「ねちがいしたんです」と、言ったら、笑っていたので、いやになってしまった。


六月二十九日

毎日、このごろ雨が降ると思っていたら、よその地方では大水が出て、水害になっている。テレビでは、何人もの人が死に、けがをして家を流されたのは何百という。水がももたぐらいくる所を自転車をひいてあるいている人もいたが、この水はすごくきたないと思う。なぜかというと、便所の水やどぶの水もまじっているだろうから。

私たち、こんな足なげだして見ているだけでは、いけないと思う。水害に遇って泣いている人もいた。


七月七日

とてもむし暑い。頭がボーッとしているから、今日は大きい兄ちゃんの頭へつけるチックをいじっていて、大失敗をした。

母に、大めだまをくらい、あとで父、兄からも、大めだまをくらうだろう。

なんとなく、今日はおもしろくなかった。


七月十八日

父兄会で母が来た。社会の時間は大分かたくなった。一学期は、ぜんぜん勉強しなかったので、だいぶん点数が悪いと思ったが、そう思い母の帰って来るのが待ちどおしい。

兄ちゃんには、見せんとこうと思ったが、、見られてしまった。音楽は家でめずらしい点数をとっていて、おかしいほどであった。

五科目をもと勉強しなければならないと思った。


七月十九日

家に帰ってから、夏休みの計画表を作った。

兄は、「なんやきれいなの、どうせ三日ぼうずやに、時間がおとましいぞ」と、言ったのではらがたった。

母は、「計画の中に、裁縫と、そろばんを一時間など入れときないね」と、言った。


六時 ――― 食事 ――― 六時半      

六時半 ―― 体育 ――― 七時          

七時 ――― 勉強 ――― 十時       

十時 ――― 工作・集める 十一時

十一時 ―― 手伝い ―― 十二時

十二時 ―― 食事 ――― 一時

一時 ――― 娯楽 ――― 三時

三時 ――― 勉強 ――― 五時

五時 ――― 手伝い ―― 六時

六時 ――― 夕食 ――― 七時  

七時 ――― 娯楽 ――― 八時半

八時半 ―― 日記 ――― 九時

九時 ――― 寝る


七月二十一日

母は、鯖江へ行って、机の前へつるすみどり色のすだれを買ってもらった。

夕方ごろ、母がどこかへ行った時、よその人がきなした。兄がつくえにすわつていて、私が、おかってにいたら、

「芳美、よその人きなしたで出よな」と、言ったので「私もいやわ」とね言って開き戸から飛びたしてしまった。

やがて、「ごめんくだささい」と言う声がした。兄ちゃんは「はい」と、言って出て行ったが、あとから頭をポカンとなぐられたので、はらがたったので、「なんや、ばか」と、言おうとしたら、こっちみたのでしゃくにさわるけど、「なんや、いいこ」と言った。


七月二十二日

この二、三日、兄は歯がいたいらしい。

おいしゃさん、診てもらって写真をとって歯になんかはさめたらしいが、まだなおらない。

そのくせ、お菓子などをわけるときは、飛びついて行く。こんな大きくなってもやっぱり子供だなとつくづく思った。

父、ずっと庭の花なぶり、母は、妹のふくをつくつている。私は、小説をよんでいた。ほんとうに暑い。

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