イベントレポート@本屋B&B「フェミの主戦場」『エトセトラ』創刊記念 田房永子✕エトセトラブックス トークイベント②

5月22日下北沢の本屋B&Bにて行われた、雑誌『エトセトラ』創刊記念トークイベントレポート第2回です。特集「コンビニからエロ本がなくなる日まで」につて、熱いトークが続きます! 
(構成:「エトセトラ」編集部・竹花帯子)


幻想の「怖いフェミニスト」を体現する

松尾 今回、この号ではコンビニ各社にアンケートをとったんですけど、実際なんで販売中止するのかっていう理由は曖昧でしたね。「成人向け雑誌」が全商品の売り上げの1%に落ち込んでいたっていう回答もあった。

田房 だいたい売れてなかったという。

松尾 とはいえ1%って、だいたい3万部くらいなんですって。それだけの売り上げと天秤にかけても撤退するメリットがあるってことなんですけど。

田房 オリンピックだけが理由じゃないことはわかりましたよね。

松尾 1月に販売中止を発表した時点では、「オリンピック開催のため」という理由が主だったけど、批判があったんじゃないでしょうか。私たちが3月にとったアンケートで、オリンピックを理由に挙げたコンビニは1社のみでした。女性と子どものためという解答が多かった。

田房 へえ、って感じでしたよね。

松尾 あと、アンケートをお願いするときに、各社に「私どもは、フェミニズムの専門誌で……」って説明すると、電話の向こうで広報担当の方がブルブル震えてるのがわかるんです(笑)。上司に代わります! とかね。でもさ、よく一般に言われるような「恐いフェミニスト」って幻想じゃないですか。

田房 「キーッ!」となって青筋立てて、叱ってるイメージですよね。

松尾 そんなフェミニストって、実際にはそんなにいないから(笑)。でもコンビニ各社の対応を見たら、そういうイメージで恐れられてるんだなって。それはぜんぜん悪いことじゃなくて、文句を言う存在としてのフェミニストって必要だと思ったんです。

田房 うん、コンビニにずっとエロ本が置かれてたってことは、それが嫌だと思う人たちの声がぜんぜん反映されてこなかったってことじゃないですか。撤退するのだって、別にフェミニストの意見を受け入れたからじゃないんだよ。だからこそ私は喜びを表現したくて。

松尾 なるほど。

田房 なにも「私たちの勝ちだ」って言いたいわけじゃないんです。実際、勝ってないし。コンビニからエロ本がなくなる現実がとにかくうれしいだけだから。なくなることで起こる心配事を語る人もいますけど、それはまだ早いんじゃないかと思う。とりあえずいまこの瞬間を存分に喜びましょうよ。そこに「今まで平気だったわけじゃねーぞ!」っていう思いを込めて、この本を作ったんです。

松尾 最初に成人誌の販売中止を決定したのはミニストップですが、そもそも他のコンビニより、もしかして苦情が出やすかったんじゃないかという指摘をしてくれた女性がいて。イートインコーナーが中心にあるから、子どもたちがご飯食べたりするスペースから、エロ本が見えてたわけなんです。

田房 ああ、そうだね。

松尾 でもね、ミニストップはもう販売中止しちゃってるから、そういうのも確かめようがないんですよ。この特集号を作らなければ、あやうくすべてがそうなるところでした。気づいたときにはなくなっていて、ないならいいじゃんってことにされてしまう。

田房 だから本っていう形で残したいですよね。最近、性暴力への不当な判決が問題になってるじゃないですか。レイプに遭ったとき、被害者がどれだけ抵抗したかが要件になるという法律の問題、あれ明治時代の姦通罪の名残なんです。

松尾 ほうほう。

田房 家父長制の中で女は旦那の子を産む道具だった。夫以外の男性とセックスしたらそれだけで重罪だったんです。強姦の場合は夫のために純潔を守ったかどうかがポイントになって、だからどれだけ抵抗したかが問われるんだと。それを聞いたとき、すごく衝撃を受けて。そういう話って学校で教えてくれなかったじゃないですか。

松尾 うん、習わない。

田房 明治はとんかつが流行ったとかそういうことは習ったけど、女性がどんな目にあってたかなんて教科書にも載ってない。だから、歴史を知らないといけないっていう思いがあって。この「エトセトラ」は、未来のフェミニストのために本という形で記録したいって思ったんです。

両論併記で浮かび上がる意見。私たちは怒ってるし、喜んでる!

松尾 こういう構成にしようと思ったのはなぜかっていう話をしましょうか。先日ふたりで、「従軍慰安婦」問題を扱った『主戦場』っていう映画を観たんですよね。

田房 『エトセトラ』をすでに作り終わったときに観て、「なにこれ同じじゃん!」って思ったんです。いや、同じじゃないんだけど、同じなんですよ(笑)。

松尾 この映画は、両極の意見を取り入れて、しかし監督の立場ははっきりわかるんです。今回の「エトセトラ」もコンビニのエロ本撤退について両論併記しています。私はですね、実は両論併記には疑問があったんですよ。

田房 あ、そうだよね。

松尾 これまでフェミニストの言説は、バランスをとろうとする……って言えば聞こえはいいけど、声をつぶそうとする逆の言説に消されてきた歴史がありますよね。たとえば今なら、当事者が痴漢の被害を訴えると、すぐに冤罪っていう札を出してくる人たちがいる。

田房 うんうん。

松尾 だから、田房さんは始めから一般の方の意見を募集して、どういう意見でも載せるって決めてたけど、私は「なくなってうれしい」って声だけでいいんじゃないかって、実は思ってたんですね。でも、全部で120通くらい届いた投稿を読むうちに、田房さんの意図がクリアにわかってきた。販売中止に疑問的な意見も載せないとコンビニにエロ本があったことの意味がわからないなと。

田房 120通のうち、半分は販売中止に嬉しいって意見で、残りは様々でしたね。実は、販売中止に完全に反対してる人っていなかったですよね。「コンビニにエロ本を残してくれ」ってはっきり言う人はいなくて、「あったほうがいいでしょう」っていうニュアンスだったり「ない方がいいと思うけど、どうなんですかね」っていうテンションだったり。

松尾 そうでした。

田房 だって、そもそも、販売中止のニュースが出た当時ですら、ネットでさえ2日ぐらいしか騒がれなかったんですよね。

松尾 あっけなかったですよね。

田房 「なんだよ、みんなどうでもよかったんじゃん! なくなっても困らないんじゃん!」って思いました。なくなることはめちゃくちゃうれしいけど、問題は、それなのになんでずっと置いてあったのか、なんで私たちはこんなに辛い思いをさせられてきたのかってことなんです。ネットだと「じゃあ生理用品も置くな」みたいなことを言い出す人もいたじゃないですか。

松尾 エロ本をなくすんだったら、生理用品もなくせ、っていうあのよくわからないいちゃもん(笑)。

田房 「生理用品は目のやり場に困る」とかさ。そういうやり取りを記録したかったんです。単純におもしろいなって思うし。生理用品って言われてもさあ(笑)。

どんな意見も載せる、操作はしない

松尾 さすがに「生理用品なくせ」っていう類の投稿はこなかったですね。「あのブースは神社のようなものだったのに」とかはあったけど。

田房 しびれましたよね。「これだ! これが読みたかった!」みたいな。フェミマガジンですって言ってるから否定的な意見はこないかもと思ったけど、色んな意見がきてほんとにうれしかったです。

松尾 ただやっぱり頭に血が上る瞬間はしばしばあって。

田房 まあ、ありましたよね(笑)。

松尾 海外からのプレッシャーでなされたエロ本発売中止を喜ぶなら、同じように海外から圧力のある「捕鯨や人質司法などについても同様の活動をした上で言ってもらいたい」とか(笑)。

田房 フェミに対しての、そういう「それを言うなら、諸悪の根源を成敗する人間になれ」みたいなメッセージって、すごい多いじゃないですか。「森羅万象の悪を成敗せよ」みたいな。そういう私たちが日々受けている叱咤を、「捕鯨」という見事な言葉で残せることができて本当にありがたいです。

松尾 そうですね、感謝ですね。

田房 両論併記しているけど私たちの意見ははっきりしてるんです。だから神社とか捕鯨とか言われて「はっ?」て思う気持ちはあるし。

松尾 そりゃありますよ。

田房 あと、未来のフェミニストがこれを読んだときに、私たちが怒ってないと思われたらいやだなと思って。こういう意見が来てるって強調するために、クジラや神社の写真やイラストを載せるっていうアイディアもあったんですよね。

松尾 「クジラの写真いれたろか!」ってね(笑)。思いとどまりましたけど。こんな意見もあるんだって知ったときのショックをそのまま伝えたほうが、読んだ人が考えるきっかけにもなるので。

田房 私の感想を入れるって案もありました。「怒りマーク」で表現するとか。でも、そこで販売中止に賛成の人がホッとするような操作を入れると、今度は逆にコンビニのエロ本に怒ってる人たちの意見がウソくさくなっちゃう。だから何もせずフラットに載せることにしたんです。

松尾 編集側の主張ははっきりしてるけど、それをどう表すかということですよね。『エトセトラ』は毎号編集長が変わるので、次号は見せ方も変わってくると思います。次は田嶋陽子さんリスペクト号で、作家の山内マリコさんと柚木麻子さんが責任編集を担当します。ご期待ください。

ここからは、豪華執筆陣もかわるがわる登壇して、さらなる盛り上がりを見せました! 「エトセトラ」VOL.1どうぞお手にとってみてください。


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