【好きなもの】古舘春一『ハイキュー!!』

 こんにちは。エトナです。
 小説や映画だけでなく漫画やアニメなどサブカルチャー的物体なら割と何でも好きなんですけど、何にでも手を出しすぎて最近は読む漫画の数が減ってきてしまっていることに一抹の不安を覚えています。読みたい漫画はまだまだあるんですけどね。
 そんな私が欠かさず単行本を買い続けている漫画がいくつかあって、その中で今、特に推しているのが『ハイキュー!!』です。

 週刊少年ジャンプで連載中の、古舘春一さんの描くバレーボール漫画『ハイキュー!!』。2012年から連載しており、現在7周年、既刊は38巻です。
 私はこの『ハイキュー!!』が本当に好きで、いろんな人に、事あるごとに勧めています。本当に面白いので、読んだことがない人はこの記事を読む前にまず読んでみてほしい。
 では早速、作品の魅力に関して話していきます。

「キャラクターが魅力的であること」

 これは外せません。どうやったって外れない。『ハイキュー!!』はバレーボール漫画というよりは「バレ―ボールを通じて少年少女が成長していく漫画」なので、各キャラクターの成長具合がしっかりと見て取れるよう、キャラクターが魅力に満ちています。ビジュアルはもちろんのこと、キャラクターの性格に関しても良いところばかりではなく、青少年にありがちな悩みとか後ろ向きな感情にもしっかり向き合っている点が何より素晴らしいところです。
 基本的に「少年ジャンプの漫画」は男性キャラクターが魅力的です。二次創作の畑でいうなら「BL」に寄る。『ハイキュー!!』もその例にもれません。登場キャラクターのほとんどは男性ですしね。だがそれでも、私は敢えて「ハイキュー!!女子キャラ」の魅力を推しています。登場してくる女子キャラが、全員素敵なんです。マネージャーや選手やOG、タイプの違う女の子が色々出てくるんですけど、みんな美しかったり可愛かったりかっこよかったり頑張ってたりと本当に魅力が詰まってる。「古舘春一」という漫画家はいろんなタイプの女の子を、多くは無い出番で魅力的に描くのが上手いな! と毎度毎度感心しきりです。本当に凄い。イチ推しは天内叶歌ちゃんなんですけど、正直な話他のどのキャラも魅力的過ぎてほぼ全員同一ラインに並んでいるレベル。『ハイキュー!!』のキャラクターの魅力を語るときは、男性キャラだけではなく、ぜひ女性キャラにも焦点を当てて語っていただきたい。ちなみに男性での推しキャラは木兎さんです。38巻は最高だった。

「物語の展開の仕方」

 バレーボールという競技はその性質上、勝利の前に必ず「マッチポイント」になります。なので、どちらが勝つか判らない状態からいきなり決着がつくことはありませんし、逆転ホームランやブザービーターもありません。『ハイキュー!!』は物語もそういう風に組み立てられています。もちろん、試合の前からどちらが勝つか判るということはありませんし、試合中もどっちに勝利が転ぶか判らない展開や描写を上手く使って読者をハラハラさせます。特に1ラリーにおける「引っ掛け」の精度は非常に高く、その腕前は本当に「秀逸」の一言。物語作りにおいて「古舘春一」というストーリーテラーはその才能を疑わせません。
 物語の展開として『ハイキュー!!』が素晴らしいのは「結果にはそれになり得るだけの理由がある」ということを描いている点です。特に「勝利」に対するそれには徹底しています。努力に関してはしっかり積み上げられているし、その上に選手たちの成長があり、試合中の様々な作戦や思惑があり、運の要素や根性があったりして最終的にどちらかだけが勝利を手にします(作中で「根性とは何か」に関しても語られます。この話は特に必読)。
 そういう、勝利だとか成長だとか、何かの結果に対する理由付けを、言い換えれば「伏線」を、一つ一つ欠かさず地道にやっているのが『ハイキュー!!』なんです。ここでこれだけのことをやっているのが、後のとあるところでの結果につながっているんだ。そういう気付きがあるのが『ハイキュー!!』の物語の面白いところ。劇的な勝利に見えてもその理由は必ずある。どんな強敵を相手にしても「奇蹟はいらねえんスよ」と言い切りながら、地道に積み重ねた実力で戦っていく。それが『ハイキュー!!』です。
 本当に『ハイキュー!!』の伏線の貼り方は見事で。まず、「あのシーンがここにつながるのか!」っていうのが本当に多い。青城の松川くんとか。で、それだけでなくて、「ここが後につながったら劇的になるだろうな」って判るシーンもあるんですよ。そういうシーンでは読者の期待を絶対に逃さず超えてくる。「そうだよね! そうですよね! アツい!」ってなる。ほんとに。

「文学的ですらある描写の数々」

 ここで言う「文学的」とは文章が上手いとか、絶妙な比喩を使うとかではなく、「人の感情を文章や絵に込めるのが上手い」という意味です。
 漫画というのは総合芸術です(『荒木飛呂彦の漫画術』より)。文章だけでなく絵も使える。それらを使って登場人物の感情を描くのが、「古舘春一」という作家は本当に上手いんです。セリフに込め、地の文に込め、表情に込め、背景に込め、擬音に込める。そのページにある様々なものを使って、キャラクター一人一人の感情、何を思い何を考えているかを如実に表現する。それが上手いんです。『ハイキュー!!』という作品には、それを感じるんです。それを最も強く感じたのは単行本32巻です。この巻は、本当にそれが多い。セリフに、地の文に、句点のあるなしに、表情に、背景に、擬音に、掌に、ボールに、感情が込められているのを感じ取れるんです。特に好きなのは各校の横断幕を使ってるシーンですよ。特に稲荷崎。あれは本当に最高のシーンだ。
 その感情というのも数多です。スポーツということで努力や勝利に関することが多いですが(多分「負けねぇ!」が一番多い)、勝利だけがスポーツではないし、楽しめなければいけないわけではないし、努力に対しての向き合い方もそれぞれだし、人間関係を複雑に考えることもある。スポーツを通して考えられる感情であればなんでもその対象にする『ハイキュー!!』は主人公たちのチームよろしく貪欲だなぁと感じます。
 先ほど「文学的とは絶妙な比喩を使うとかではない」とは言いましたが、『ハイキュー!!』の比喩、絶妙なんですよね。特に「飯・食事」に関する比喩がたびたび登場します。その最高のシーンも32巻にあると思っていて、私がこの記事を書こうと思ったのも32巻を読んだからです。ちなみに刊行は2018年8月。一年前ですね。
 あと、これはネタバレになりかねないので言うかどうか迷ったんですけど、どうしても言っておきたいシーンが一つだけあって。「バレーのスパイクが告白の返事になる、なんて誰が想像できるんだ」です。言葉だけ聞くと「なんだそれ」ですけど、ここ本当にいいシーンで、今のところ作中で一番好きなシーンだといっても過言ではないくらいなんですよね。読んでほしい。本当に。

おわりに

 ちなみに、私は原作以外のほとんどを未履修です。アニメも見ていないし、ノベライズやファンブック等も読んでいません。なのでここに書いてあることのほとんどが見当違いである可能性もあります。それでも私は『ハイキュー!!』が好きです。単なるスポーツ漫画ではない。試合の勝敗以上に、物語以上に、私が描きたいのは登場人物たちの感情である。そういう作者の想いが込められているような、この作品が、私は大好きです。

 以上です。


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