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人を裏切るということ

数ヶ月ほど前、人に裏切られて深く傷ついている人と話す機会があった。しかも、1人でなく複数人と。

それから数ヶ月経ち、彼らと話した。すると興味深いことに「あのときはこう思ったけど、自分もよくないところがあった」「相手には相手の都合があった」と清々しい顔をしている人がいる一方で、いまだに深く傷ついたままの人がいた。

深く傷ついた人のその傷は、記憶の中で薄れてはいくだろうけど、おそらくこの先も消えることはないのだろう。相手に対する悪感情も、きっと消えることはないのだろうと思う。

前者と後者は何が違ったのだろうか?

多くの「裏切り」は受け手側の勝手な思い込み

そもそも「裏切り」とはなんなのか、考えたことがある。まだ会社の経営を始めたばかりの駆け出し社長の頃だ。

ずっと一緒に頑張ってくれると信じていた従業員が仲間を引き連れて仕事を辞めてしまったり、信じていた人が嘘をついて同業他社に転職してしまったり、その他にもいろいろと社長の私からすれば「裏切りだ」と思うことはあった。

ただ、これも冷静に考えてみれば、こちらが勝手に「まさかこんなことはしないだろう」と思い込んでいただけで、雇用関係なのだからそこまでの縛りはないはずなのである。昨日までは雇われていた関係上私にいい顔をしていても、今日はもう別の人についていっている。人間は基本的に自分の利に忠実な生き物なので、なんの不思議もない話だ。

そう考えるようになってから、他人が予想もしないような行動に出てもとくに傷つかなくなったし、自分のマネージメントが甘かったのだなと思うようになった。と同時に、自分が人を裏切る(と相手に思わせてしまう)ことに対しても、前ほどの罪悪感を抱かなくもなった。

人を裏切るときはタイミングが重要

ただ、自分の都合を優先して人の期待を裏切ってしまうときも、私はタイミングだけは見ている。

たとえば、ご両親や配偶者を亡くしてひどく落ち込んでいる人や経営している会社が倒産寸前の大ピンチに陥っている人、重い病気になってしまった人など、相手が窮地に陥っているときは、たとえどんなに条件の良い引き合いがあってもそちらは選ばない。なぜなら、弱っているときに人に裏切られると、本当に立ち直れなくなるからだ。

同じ強さのパンチでも、健康でピンピンしているときに食らうのと、すでに何発かパンチを食らった後では「効き方」がぜんぜん違う。下手すれば死んでしまうことだってある。

私自身、何度か窮地に陥ったときに、裏切られたと感じる出来事に遭遇した。今思えば「なぜ?」と思うが、そのときは本当に死のうかと思った。そのくらい精神的な痛手が大きかった。

その痛手を乗り越えてからは、自分が人を裏切る(と相手に思わせてしまう)ときは、なるべく相手が元気そうなタイミングを見計らうようにしてきた。会社であれば業績が良いとき、個人であれば健康で人生が充実しているとき。そのタイミングで離れていく分については、一時的に関係が悪化しても、尾を引くことはほぼなかった。

相手を裏切らなかったことで得られるもの

とはいえ、人を傷つけないように、人を裏切らないようにということばかりに気をとられると、自分自身の幸福を逃してしまうこともある。

たとえば、自分が長年勤めてきた会社が何らかのアクシデントで倒産しそうになって、お世話になった社長が窮地に立たされている中で、自分にとてもいい条件の転職話が転がり込んできたらどうするのか。

私はここで「我先に沈みかけた船から逃げ出す人」と「会社の行く末を最後まで見届ける人」の両方のタイプを見てきた。一見したところ、危ないと思ったらすぐに逃げたほうが得策のように思える。

ところが、実際は違っていた。長期スパンで見ると、圧倒的にそこで船を降りなかった人のほうが社会的に成功しているのだ(わかりやすい例でいうと、ライブドア事件後に残った人たちなどが顕著な例だ)。

これがなぜなのかは、私自身が窮地に陥るという経験をしたことではっきりとわかった。そのときに連絡をくれた人、励ましてくれた人、食事に連れていってくれた人、お金を貸してくれた人を、私はいまも大切な人だと思っている。彼らがもし同じように困ることがあったら、喜んで手を差し伸べるだろう。彼らは私からの「信用」というお金では買えない財産を、一瞬で手に入れたのだ。

その事実に気づいてからというもの、私は「自分のために」窮地に陥った人に手を差し伸べるようになった。もちろんすぐに見返りがあるとも思っていないし、見返りがない場合の方が多いということは承知している。それでも有り余るほどの利がある。

「情けは人のためならず」とはよく言ったものだと思う。

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えとみほ(江藤美帆)

サッカークラブではたらいています。Snapmartのというアプリの開発者です。

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