Jリーグクラブの経営にはなぜサポーターの力が必要なのか

Jリーグクラブに転職しておよそ3週間が経った。たった3週間とは思えないほど密度の濃い時間を過ごしており、直接お会いして名刺交換をした方だけでもゆうに150名は超えている。

そんな中で、強く感じたことがある。それは「サッカークラブの経営にはサポーターの力が不可欠である」ということだ。字面にすると「なにをいまさら」というくらい当たり前のことだと思うのだが、私自身長年サポーターをやっていて1つ誤解していることがあった。

それは「サポーターの要望を叶えるのはクラブの仕事である」ということだ。これは、半分合っていて半分は間違っている。結論から言うと、我々運営側(クラブ)にできるのは「サポーターを増やす努力」だけで、サポーターが望むようなクラブを作っていくのは他ならぬサポーター自身なのだ。

現場における不可解な現象はなぜ起こるのか

Jリーグの(あるいは他のスポーツでもいいが)サポーターをしていて、運営面において不可解な現象に直面したことはないだろうか。私は正直しょっちゅうあった。「普通に考えたらこうしたほうがいいはずなのになぜそうなっていないのだろう?」と(実際は運営面だけではなかったが、話がややこしくなるので運営面に話を絞る)。

これについては実際に運営に携わったり他クラブの話を聞いたりしているうちに、なんとなく理由がわかった。大きく分けるとその理由は2つで、1つはリソース不足で対応が後回しにされている場合。正直、これは私も現場で働いているのでよくわかる。とにかくタスクが多すぎるのだ。

もう1つは、それが非合理的だということはわかっていても様々なしがらみによって変えられないケースだ。そのしがらみは、対企業、対行政、対個人、さまざまな場合がある。もちろん通常の企業でもそういったしがらみは往往にしてあるのだが、Jクラブの場合は「地域密着」を信条としている分、通常の企業よりも狭いエリア内の利害関係が複雑に絡んでいる。

誤解のないように断っておくと、これは必ずしも悪い面ばかりではない。それにより救われている部分もある。ただ「客観的に見て合理的な判断」を阻害するケースがないとは言えず、それがしがらみとは無縁なサポーターから見ると「どうしてこうなった」「クラブがちゃんと仕事していないんじゃないか」みたいに見えることは往往にしてあると言う話である。

こうした非合理的な判断を合理的なものに変えていくには、クラブ側の頑張りだけでは限界がある。たとえばそれが「対スポンサー」や「対行政」に対する働きかけが必要だった場合、クラブは「お金をいただいている」あるいは「施設を使わせていただいている」弱い立場であり、要求(お願い)ができない場合があるからだ。

しかし、サポーターは違う。サポーターはスポンサーとも行政とも対等な立場に立てる人たちであり、その数が増えればその声は「民意」になる。たとえば人口20万人の都市に10万人の熱心なサポーターがいたら、間違いなくそのクラブを取り巻く環境は劇的に良い方に変わるだろう。そういった地域では、駅近のアクセスの良い場所に屋根付きの素晴らしいサッカー専用スタジアムを建てることだって夢ではないはずだ。

地域密着型のメディアとしてサッカークラブを捉えると「数は力」である。もっと言うと「数より密度」だと思う。サポーターの数がものを言うのであれば都会のクラブが大きな力を持てることになるが、そうではなく、都市の規模に対するサポーターの割合が重要なのだ。

そういった意味でも、地方の市民クラブというのは大きな可能性を秘めているのではないかと思う。

サポーターの応援は商品価値の一部である

そしてもう1つサポーターの力が発揮されるのは、応援である。

サッカーの試合を「興行」として見た場合、スタジアムの雰囲気は非常に重要であり、その雰囲気を左右するのはサポーターの応援である。そして、その応援の部分は基本的に運営側ではコントロールできない。個人的にもそこは不可侵であるべきだと思う。

しかし、もしもサポーターが前述したような「数の論理」を理解してくれて、初めてスタジアムに足を運んだ人が「楽しい」「すごい」「また来たい」と思えるような応援をしてくれたら、そのクラブは確実にこの人口減少社会でも発展していくと思う。

様々な情報が家に居ながらにして得られるこのデジタル全盛の時代だからこそ「体験」の価値は大きい。おもにそこに大きな価値を感じているのは、デジタルネイティブと呼ばれる10-20代の若者たちだからだ。彼らを取り込めるクラブが衰退するわけがない。

つまりまとめると、

サポーターが増える→スポンサーが増える→行政が動く(環境が整備される)→またサポーターが増える→クラブが強くなる

これが正のサイクルであり、逆に言えば我々のような親会社を持たない市民クラブには、これしか発展する(or 消滅しない)方法がない。

こうして文字にするとびっくりするほど当たり前のことなんだけども、私自身は20年もサポーターをしていてこのことに気づいていなかった。もちろんサポーターを増やすことが重要だということは分かっていたけれども、それはどちらかといえば収益面の話であって(お金が増える→クラブが強くなるくらいの認識で)、サポーターが増えることによりクラブにどんな影響を及ぼすのかまでは理解していなかった。

だけど私はこのことに気づいたとき、なんて夢のある話なんだろうと思った。自分たちの理想のクラブ、理想の環境を自分たちで作っていけるのだ。

もちろんそんな理想が霞むほど市民クラブの現実は厳しいけれども、地方都市において地域の人たちが自分たちが誇れるものを自分たちの力で作り上げていくお手伝いができるというのは、とんでもなくやりがいのある仕事なんじゃないかと思った(ティッシュ配りとか大変だけど)。

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コメント2件

すごくわくわくする話題で面白かったです。端的な言葉だけ読むとたしかに当たり前のように感じられますが、具体的に説明していただけると特に腑に落ちて行動したくなりますね!
ノート、最後までなるほどと思いながら読みました。
私はJリーグの3チームのファンでゴール裏にも立ちます。しかし、年に数試合しかスタジアムに行かないので、(もちろん)自らをサポーターとは認めていません。でも、必死で応援するサポーターの姿が涙が出るくらい、好きでJリーグスピリットが大好きです。
今後も楽しみにしています。
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