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ゼロから音楽メディアを立ち上げて100万PVに至るまでとこれから

2017年の10月にスタートし、自身が編集長兼デザイナーを務める「DIGLE MAGAZINE」が19年5月の月間PVで100万に到達しました。ここがゴールではないですが、1つのステップを上がれたので、ここに至るまでの感謝も含めてどういった流れで今に至ったのかを残しておこうと思います。

プレイリストの面白さを広めるためにスタート

16年の秋頃にSpotifyが上陸。弊社代表の西村からの相談を受け、プレイリストがつくる未来に可能性を感じたので、プレイリストシェアサービス「DIGLE」を構想・設計して2月にリリースした。ただ当時はプレイリストはおろか、Spotifyひいてはストリーミングがほとんど世にまだ理解されてない状態で、プレイリストの重要性を説くよりも、まず先にストリーミングサービスが何たるかを説明しなければならないような時期だった。

このままずっと口頭で説明しながらサービスを開発してたら正直いろいろキツイなー…ってことでプレイリストの価値(ストリーミングの有用性)や楽しさを広めれるようなメディアを作ったら良いんじゃないか、という発想から生まれたのが「DIGLE MAGAZINE」。

メディアをスタートするにあたって自分にFestival Lifeの経験が多少あるとはいえ、メディアの編集部で本格的に働いたことなんてないし、当時4人(俺、社長、エンジニア2人)でDIGLEの開発をしながらメディアなんてできるのか?という感じだったが、幸いなことにFacebookや人づてでボランティアで良いからメディアを作ってみたいという人が何人か来てくれた。そんなところからのスタートだった。

「音楽メディア」としての形を作るために、できることを模索

自分たちの特色としてメディアとストリーミングが密接につながるように、記事から直接アプリへの楽曲の保存やプレイリストのフォローが出来るようにメディアの設計も新しい要素をデザインしながら、どういったコンセプトでコンテンツを作るか考えていった。

※公開当時のデザイン

音楽プレイリストを扱う限り音楽メディアということになるが、音楽メディアであればプレイリスト紹介記事だけじゃなく、やはりインタビューは必要だと思っていた。とはいえよくある作品に紐付くようなインタビューを、ほぼほぼ素人である自分たちが、既存メディアと同じようにやったところで正直意味があるのかが疑問だった。

プレイリストの価値は音楽へ様々な文脈を付けれるところだ。

ならばインタビューする人の文脈(=人生)に沿った音楽をプレイリストと共に知ってそれをすぐ聴けたら面白いんじゃないか。そんな発想から音楽ライフをディグる(=掘る)マガジンとした。

そしていざメディアをスタートするにあたって、守ろうと思った点が2つある。

・プレイリストに紐づくコンテンツ意外は基本出さない。
・記事を含めた全体のビジュアルをないがしろにしない。

プレイリストに紐づくコンテンツのみ扱うことは、リソースの集中とブランディングのため。(一般的な音楽ニュースは当時扱わなかった)そしてビジュアルにこだわったのは「ダサい」メディアにしないため。

前述した通り「音楽作品」をメインに情報を紹介するメディアではなく「人」に寄ったコンテンツ展開をする場合、当然掲載されることに抵抗を感じるような場にしてしまっては終わり。特にクリエイターと接するなら、なおのこと「ダサい」と思われないように注意しなければならない。無名というハンデを埋めるのは強いクリエイティブしかないと思っていたので、初期の頃はメインビジュアルのフォーマット決めはかなり悩んだし、インタビューのカメラマン確保は相当気を揉んだ。(最初は頑張って俺も撮ったりしたけど限界あるので)

そして始まった最初は、レーベルにもアーティストのつながりも中々なく、メンバーの知り合い伝いにこの人が良さそうと思う人に一人一人声をかけていき、周囲の助けを借りながら少しずつ記事を作りためていった。

これが記念すべき1本目に公開したインタビュー、YonYon。最初はアーティストに依らずいろいろな人に声を掛けてきたが、PDCAを回す中でネクストブレイクなアーティストをピックアップしてった方が、メディアの色として立つんじゃないかということで、そっちの方針にシフトしていった。(ここの転換ではたくさんご迷惑をおかけしました…)

幸い、自分も編集部のメンバーもそういった嗅覚はすごく優れていて、まず一番ハマったのはあっこゴリラのインタビュー。

メディア初期の数値はこの記事が殆どと言って差し支えない程、読まれた。当時彼女の面白い半生を辿った記事はなかったし、さらにこの記事の公開から程なくしてSpotifyの年末年始のCM曲への大抜擢が発表され、自分たちのメディアの内容も相まって、そんな偶然あるかと皆で笑ったのもいい思い出。(しかも彼女はその年明け一発目のDIGLE主催のイベントにも出演が決まってた。まじで感謝です。)

その後もあっこゴリラだけではなく、様々な新人アーティストをインタビューさせてもらうことができて、ウチが初インタビューといったアーティストも多かった。今見るとたった1年半とちょっとでも、かなりいいアーティストの方々を紹介することができたんじゃないかなと思う。

音楽メディアとしての形ができ、数字の積み上げに

半年かけてインタビューも積み上がり、いわゆる「音楽メディア」としての形が出来はじめ、メディアとしてのカラーも徐々に出来てきたものの、PVとしてはやはり厳しかった。月間にして数千レベル。インタビューだとやはりアーティストのファンは見てもその一瞬で終わってしまって、リピートも積み上がりもあまりない…。

その時ちょうど社長の西村の頑張りもあって会社へ外部からの投資が決まった。自分も今まで勤めてた会社を辞め(DIGLEとDIGLE MAGAZINEの立ち上げは、当時別会社に勤めながらボランティアで並行しながらやってた)、自分がフルコミット出来る環境になり、いろいろと考える時間も増えたので一旦整理を行い目標を100万PVに定めた。(当時の7月のPVは12000程度)会社としても総合的に考えて、次期の投資獲得材料としてMAGAZINEの成長にシフトした。達成の足がかりにまず定期的にしっかり記事が出るように、担当を振り分けてメンバー各人がこのプレイリスト記事企画をいつまでに上げるといったことを明確にして、徐々に記事本数やコンテンツの幅を増やしていった。

それに加えSEOの強化も始めた。サイトの内部構造を見直し、記事コンテンツとしては周囲からSpotifyの使い方がわからないといった声が多かったので、使い方を解説するHowtoコンテンツの制作をスタート。SEOの専門家もパートナーとして迎え、改良を重ねていった。

メディアのコンセプトもプレイリストの第一人者集団として外部へのアピールも考慮して「プレイリスト専門メディア」とした。プレイリストの紹介もより多くし、他企業もチラホラと始めたプレイリスト企画などもあらかた全部さらって、場合によってはメディア内の定期更新企画に入ってもらった(Fred PerryやP-VINE、アーティストによるプレイリスト連載企画など)。

メディアのデザインも根性で再設計し直し、フルリニューアルをかけ、よりプレイリストの専門性が高く見えるように国内外様々なプレイリストが一覧で見えるプレイリストアーカイブコンテンツなども作っていった。ココらへんのスピード感はすぐ横にエンジニアと相談できたのがでかいと思う。そんな見せ方が効いてきたのかこの頃からレーベルからのプレイリストの相談や、商業施設のプレイリスト作成の依頼なども来るようになってきた。

そして12月、以前から手伝ってくれていたメンバーを副編集長として迎え、更に更新ペースや内容も充実させて、やっと少し効果が出て10万PVを超えた。しかし目標は4月で100万PV。全くの無理ゲー。ココらへんが一番先が見えなくて苦しかった気がする。とにかくSEOで天井が見えてきたSpotify関連のワード以外で柱を建てないといけない。

Spotifyの使い方でノウハウが溜まったのでApple Musicと年末始まったばかりでライバルが少なかったYouTube Musicの使い方について記事を横展開をしていった。それでも目標には足りる気はしなかった。では音楽メディアとしての対面を保って(〇〇の本名、彼氏は?的なゴシップ的なSEO記事などではなく)、数字を上げるにはどうしたらいいかを考えた結果、アーティスト人気曲ランキング記事を展開することに決めた。

初めて多くの外部ライターと連携し、検索ボリュームが多そうなアーティストから着手。幸いSpotifyにはアーティストごとにTOP10のチャートが表示されているのでそれに沿ってひたすらに記事を上げ続けた。

月に上げる記事本数は300本前後となり、Googleのサイト評価も上がったのか、まず効果が表れたのは使い方記事だった。Spotify、Apple Music、YouTube Musicなどストリーミングサービスそのもののワードで公式サイトの次にランクイン。その他派生ワードも続々とトップ3にランクインし始めた。そしてニュース記事に関してもAMP対応などシステム的な改良も功を奏して優先表示枠に入りやすくなるなどいい影響が出始めた。アーティスト人気曲記事もあいみょんを筆頭に徐々に数値を作り始め、3月〜5月は倍々ゲームで数値が加算されていった。

そして更にそれを後押しするがごとく強力な仲間も増え、今まであまり触ってこなかったベテランアーティストのインタビュー記事も増加。SNSの反応も増えていき、ほんの少し前までは全く夢のまた夢であったデイリーで3万オーバーのPVを叩き出すまでに成長することができた。そして目標より1ヶ月遅れながらも無事5月に月次100万PVという目標を乗り越えられた。かなり色々端折った部分もあるが大体の流れは書いたような流れだったと思う。

ゼロからの立ち上げで、ボランティア時代から手伝ってくれたメンバー、常に横で一緒に戦ってきた編集部スタッフ、そして協力してくれた友人、ひいては未熟故に迷惑を掛けた人たちを含め、全ての人のおかげでここまでこれた。これは間違いない。本当にありがとうございました。

次のステップは脱音楽専門。音楽から広がる日々の面白さを伝えるメディアに

100万PVが達成され、既存の音楽メディア程ではないにせよ、一定の認知は進んで来た感触はある。ただこのままSEO路線を拡大してPVを稼ぐことを主とするのは違う。かといって音楽の紹介、インタビュー数を強化して音楽メディアとしての専門性を高めるのも1つではるけども、それもちょっと違うと思っている。

音楽が売れないと言われて数年、いろんな原因があるけどシンプルに音楽との関わり方・聴き方の硬直化にあると思ってる。主流だったCDが約2~3000円もする時点で、他にも楽しいことはたくさんある現代において多くの人が新しい音楽にチャレンジすることを意識的にも無意識的にも辞めてきたと思う。さらに多様な音楽に対して気軽に触れる機会が今まではものすごく限られていて、興味はあっても何聞けばいいかわからないという人は実際かなりいる。そしてもし知れたとしても、その先に楽しいイベントだったり色々な出会い・繋がりがあることにたどり着ける人は本当に少数派だ。

ストリーミングが普及することでここの根っこの部分は少しでも変わるはずだとは思っている。料金的な面、情報のアクセスの簡易化、そしてプレイリストによる「シーン」聴きの登場、スマートスピーカーなどの視聴環境の変化などポジティブな要素はたくさんでてきている。

話を戻すとより以前より「音楽を聴く」といった行為のハードルが低くなってる。ただ知らない人に「聴く」までの行動につなぐための動線は未だに充実してるとは言い難い。今は以前よりこの音楽が流行ってるんだぜ!かっこいいんだぜ!的なアプローチ(ずいぶん乱暴な表現だが)では音楽ファンになってもらうにはあまり効果的ではない世の中になったと思う。

今は個々人が生活の中で音楽が紐付いた形で感動的な体験に遭遇することが音楽ファンの形成に重要だと思ってる。それはきっと音楽そのものをただ紹介するだけでは成し得えなく、別の様々な要素と紐付いたときに発揮されることだ。自分も思い返して見れば音楽に強烈に引き込まれたのはゲームのBGMに使われていた曲がきっかけだ。(クレイジータクシーってタクシーが街を爆走するゲームで使われてたThe OffspringのAll I Wantが始まり)

そういった〇〇+音楽をもって興味のフックを色々なところに仕掛けて広めていくことが本質的に音楽を世に浸透させることだと思う。(もちろん音楽そのものを掘り下げたコンテンツも必要だが)そしてフックに引っかかったら今はすぐ音楽にたどり着ける世の中になった。これが数年前とは段違いに違う。スターウォーズを見たあとにサントラにすぐアクセスできるなんてちょっと前だったら無かったし、そもそも聴こうとも思わないだろう。

長くなったがそういった音楽とつながる楽しみを紹介することが重要だと思っている。だからこそ4月からプレイリスト&カルチャーメディアを名乗ることにした。今後DIGLE MAGAZINEはストリーミング、プレイリストをベースとしながら、様々なカルチャーと紐付いた形で音楽の裾野を広げる動きを強化していこうと思う。

自分が別で運営しているFestival Lifeも多様な音楽と体験を紐付けられるフェスを紹介することで音楽ファンを増やす一助になってると思うが、DIGLE MAGAZINEではより非日常のなかではなく、日常の中で音楽ファンを増やせるメディアになりたい。そのためにこれからも闇雲に、冷静に、世の中を読み解きながら、あるいは無視しながら突き進んで行けたらと思っている。

あとがきと求人

長々とめったに取らない筆をとって書いてみましたが、楽しいもんですね。あんまり自分の文章は書かないので読みづらかったり意味分かんないことは本人に聞いてみて下さい(笑)。今回はDIGLE MAGAZINEでしたがDIGLEとして今後狙っていく世界観やPARA-についてもどっかで書けたらいいなと思ってます。

ここまで読んでくれて何か一緒にやりたいとピンときた方はぜひ連絡していただけたら!特に各カルチャーに精通したエディター、ライター職はめっちゃ募集してます。インターンも若干名いい人がいたら下記までぜひ。デザイナーももし自分の下で鍛えられたい人いたらどうぞ。笑

info@digle.tokyo

自分もそろそろずっと止めているDIGLE本体、マガジンも含めた全体の事業設計への再着手&PARA-プロジェクトの拡大を考えないと行けないのでメディア任せろって人もいたらぜひ宜しく(笑)。ではまた。

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