わたしが絵画講師になるまで 補足☆グリザイユ編

その6のお話は絵画講師をするにあたって作り始めたマニュアルの内容についてでしたが、今回はその内容にあったグリザイユについて少し補足説明をしたいと思います。

マニュアルにて初心者用の最初のカリキュラムとしてよく使用しているグリザイユ画法。今回はその画法がどんなものなのかを簡単に説明したい。

グリザイユとは、フランス語でモノクロで描かれた絵のことを指す。
その画法で描かれたのちに職人の手によって有彩色の壁画や装飾絵画が描かれたという。工程としては原画から拡大してモノクロで描かれ、その上から有彩色での仕上げを行う。
グリザイユは彩色を行う上でのナビゲーションであり、完成度を上げるためのものであったのだと考える。

水彩画におけるグリザイユ画法が実際どのような状態かを説明する。

上の絵は鉛筆でのデッサン(軽め)、下は輪郭を描いたのちに水彩絵具でグリザイユを施したものである。

この二つの絵にレモンイエローをたった一回だけ上塗りすると、

このように立体感を伴ったレモンが描けるのである。
レモンの立体感だけを注意した描き方ならば、鉛筆デッサンで描かれたものに着彩した上の絵でも良いと思う。

しかし、水彩画として描くとした場合は鉛筆の痕が残ると水彩絵具を用いた特長が霞んでしまう。
全てを水彩絵具で描いていれば、水彩画としての雰囲気を保ちつつ陰影の書き込みがしてあるので完成度が高く見える。

作者も立体感をまずあらかた描き出したのちに、本体の色を塗るという2段階の作業となるので、シンプルに考えやすい。

このような行程をいつも意識していくと結果的に陰影の洞察と着彩のアプローチがしやすくなる、と、私は考えている。

陰影が理解でき、のちにしっかりと実践し続ければ、どんなモチーフにおいても陰影自体の認識がしやすくなる。
認識ができやすくなれば、鉛筆デッサンでもその感覚を使えるようになると考えられる。

普通に考えたら順番としては逆だと思う。
デッサンでの陰影の洞察からグリザイユに移行した方が常套的な行程であろう。

しかし、私の講座ではあくまでも分かりやすさの観点から逆行して教えている。

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