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ボイコット 地元のKKスーパーマートにも拡大

 昨年10月からパレスチナ攻撃にからみ、マレーシア国内では米国企業を中心にボイコット(不買運動)が続いています。かなり深刻化していますが、今回は地元のKKスーパーマートにも拡大しました。これはパレスチナ紛争とは関係ないのですが、アッラーとアラビア語で書かれた靴下を販売したためでした。


■事件の背景について

 3月13日ごろにソーシャルメディア上で、「アッラー」のアラビア語文字が書かれた白い靴下が販売されていると写真付きで掲載されたことを機に大炎上。その後、全国で42件の警察への通報があり、この問題は大きな問題となってしまったのです。

 この靴下は中国で製造され、マレーシアに輸入。ジョホール州バトゥ・パハの工場で包装されてKKスーパーマートに卸されたとのこと。

 この工場はその後に警察の捜査を受けて、多数のアッラー文字付き靴下が発見されたとのことで、法的措置が取られる見通しです。

 下請けのこの工場の幹部の個人情報はソーシャルメディア上に流れてしまい、幹部は脅迫も受けているとのこと。KKスーパーマート側も遺憾を示しました。社内では店頭に並べる前に厳しい審査があるとのことですが、なぜ流通していまったのかの原因を調査しているとのことです。

■なぜボイコットになるのか

 この問題でマレー人はボイコットをSNS上で呼びかけています。日本人からすると「なぜ?」と思うかもしれませんが、アッラーのアラビア文字はイスラーム教徒にとっては非常に神聖なものなのです。日本人からすると、仏陀や観音像を靴下にプリントして販売するようなもの。そう考えると理解してもらえるかと思いますが、こういった事態にマレー人は非常に敏感に動きます。

 マレーシア国内ではマクドナルドをはじめ、スタバやKFCなどが不買運動で相当な打撃を受けています。今はラマダーンでイスラーム教徒は昼間は何も食べないので、さらに売上が落ち込んでいる始末です。

 今回のKKスーパーマートは全国に650店舗ほどを展開していますが、仮にボイコットが本格化すると経済にもだいぶ大きな影響が出てくるような気がします。この会社は韓国系で、マレーシアには2001年に進出。着々と展開してきたのですが、今回の事態でどこまで影響が出るか。

■華人のイスラームへの無理解が原因

 今回の問題は卸売元がこういった商品を卸して販売したことに原因がありました。KKスーパーマートはイスラーム教徒も多く働いているはずなので、どこかの段階で陳列する前に「まずい」と判断できなかったことも問題ですが、卸売のこの華人系会社に大きな問題があったと言わざるを得ません。

 マレーシアの華人を見ていると、イスラーム教について無知な人が多い気がします。さすがに酒や豚を摂取しないことは知っているものの、ラマダーン月がいつからで、毎日5回の礼拝をしているということを知らない人もいます。年に一回は断食をすることはおぼろげながら知っているようですが、それも1か月全く食べないと思っている人もいたりする。

 華人の間でのイスラームへの無理解により、こういった事態に発展するケースは今に始まったことではありません。ハラール承認ロゴも偽造して勝手につけて販売する業者もときおり摘発されますが、やはり根本的には無知であることが大きな原因です。

 マレーシアは多民族社会でいろんな民族と信者が混合する社会なのですが、特にマレー人と華人との間は問題がさまざまにあります。第三者的な僕からの立場からみると、両者とも互いに無関心で無知であることは否めません。その原因は互いの不信感が根っこにあるのですが、これをどう克服していくのかがマレーシアにとって現在の最大の課題だと思います。

 特に若い世代はマレー人だと英語が話せなかったり、華人だと英語もマレー語も話せない子が多い。つまり、両者ともにコミュニケーションが成り立たない状況があるのです。マレー人も華人も各々のコミュニティー内で生活が完結するので、別に他民族がコミュニティー内に入り込んでくる余地がほとんどない。今の70代の人たちは英語教育を主に受けているので、互いに友達だったしますが、今はマレー系公立学校に行っても10代後半には華人はマレー人の友人を持つことはほとんどありません。これでは互いに理解は無理なんだと思います。

 個々のコミュニティーがある意味でよく機能はしているのですが、国民融和の観点からみると、非常に危うい。シンガポールのように国民融和を団地の中で作り出すような演出もマレーシアにはなく、さて、政府としてはどうしたいのか。国民融和政策については何度か読みましたが、イマイチしっくりこないところもあり、政府もお手上げ状態なのかなという感じもするのです。

 いずれにしても今回の事件は無理解と無知により発生した事件。国民融和が深まらない限り、こういった同様の事件はまた起きるような気がします。

(写真)KKスーパーマートと日本のファミマ。伊藤忠出資のファミマも現在はボイコットの対象となっているもよう。

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