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閑話休題  川

 マレーシアには多くの川があります。マレーシアには20世紀以前、道路がほとんどなく、川が交通経路になっていました。そのほとんどの川の水の色は透明なのですが、東海岸では黄土色の川がよくみられます。

 写真の川はクランタン河。クランタン州南部グア・ムサン郡から流れ出ているこの川の全長は250キロ。透明になることはなく、いつもこのように濁っています。

 これは赤土の色なのでしょう。

 中国の記録によると、かつてこの辺りには「赤土国」がありました。明確な場所は定かではないのですが、この川の色を見てそのような名称がつけられたのかもしれません。

 また、コタバルから南に行くとTanah Merahという街があります。この名称は日本語に訳すと「赤い土地」。いつから、そしてどうしてこの街の名になったかわかりませんが、この川に隣接していることとも関係があるのでしょう。

 この川は土砂降りになると溢れ出します。2014年にはコタバル一帯を呑み込み、この茶色い水が街を覆いました。現在も結構暴れる川ですが、堤防などはほとんどみられません。一般道路の隣に川があるところも多く、水位が上がれば自然と道路に水が流れてきます。そこに人も住んでいます。

 毎年洪水になるところはだいたい決まっているのですが、そこの住人は引っ越しません。引っ越しをすれば被害は受けないのに、毎年水に浸かって嘆いているのです。洪水にあると家財道具一式は使い物にならなくなります。年に2回洪水被害に遭って毎回洗濯機を買っている人もおり、被害額は大きいはずです。引っ越したほうが安上がりだとは思うのですが、どうもそうは考えないようなのです。

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 マレー半島西海岸やボルネオ島の川にはワニが生息していますが、東海岸の川にはいません。そのため、黄土色の川が洪水を起こしたとしてもワニが町中に入ってくることはありません。多くの魚は生息しているようですが、目視はできません。釣りをしている人をよくみかけるので、食べられる魚が釣れるのでしょう。川は人々の生活にとって欠かせないもののようです。

 一方、クランタン州はその昔、この川を隔てて2つの王国が存在していました。これを統一したのが18世紀のロン・ユヌスという王で、それ以降はクランタンは一つの王国として今に至っています。

 ところが、250キロもあるこの川には橋が3本しかかかっていません。川はクランタン州の真中に川が流れています。今でも橋が3本しかないというのは、資金的な側面もあるのでしょうが、もしかすると川を隔てて心理的な距離が両地区の住民にあるのかもしれません。一つの州といっても一枚岩ではなさそうで、文化的な違いの痕跡もいろいろと周ってみると見つけられるかもしれません。

 

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