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伊達の十役

まさかまさかの発表に動揺している。
伊達の十役と言えば猿之助ファンが熱望してやまない演目。猿之助襲名後に猿翁さんが海老蔵君に勧めて2012年8月に新橋演舞場で興行し猿之助さんは出来ないのかと落胆したのを覚えた演目でもある。

当時海老蔵君が猿翁さんの大切な演目を成田屋が演じるというので話題になったし、仁木弾正が演舞場の客席の上を優雅に消えていく姿の美しさは今でも目に焼き付いている。早替りを観ながら猿之助さんに演じて欲しいとも願った記憶も甦る。

次は2014年5月の明治座だ。私は観劇叶わずだったが当時染五郎君が見事な早替りを見せ話題になった。翌年2月には博多座で大入りだったと記憶している。

今回は三部制の第一部で上演するのでかなり短くするのだろうが

乳母政岡
松ヶ枝節之助
仁木弾正
絹川与右衛門
足利頼兼
三浦屋女房
土手の道哲
高尾太夫の霊
腰元累
細川勝元

この十役を演じ分ける。

中車さんも共演され年の瀬を華やかに締めくくるおもだか屋の心意気だろう。

いつか本興行で観たいと願っていた「伊達の十役」をここに持ってくるとは思わなかった、それこそ想定外だ。いつか猿之助政岡を観たいと願っていたがここで政岡を演じる姿が観られるのは望外の喜びなのだが。

歌舞伎座の客席は十二月に50%なのか80%なのか100%なのか今のところは判らない。
仁左玉以外は50%の客席が満席にならない杞憂は私などより猿之助さん本人が何より感じている所だろう。

ホームグラウンドの春秋座の舞踊公演も賑わったものの満席とまではならず、千穐楽に歌舞伎の危機を訴えた口上のご挨拶は心底不安を感じての事だと思う。

おもだか屋の家の芸を次々と繰りだすのも歌舞伎座へ一人でも多くお客を呼びたいという気概が感じられる。

「加賀見山再岩藤」は当然ながら初日から目いっぱい演じるはずが本人のコロナ陽性と言う不幸。そういえば春秋座の口上で犯人捜しをしても仕方がないと話していたがそれは自分にうつした人がいるはずだが犯人を探しても無駄だし責めていないと言う意味を込めての言葉だが、犯人は他にいるのを暗に示しているのか、図らずも心の声を吐露した形に聞こえた私の耳は意地悪なのかも。ご自身が20日まで舞台に立てなかったツラさなのか心中を察するにあまりある言葉だった。伊達十同様岩藤も待望の演目。一部の座頭としてみっくん(坂東巳之助)に主役を頼み遠隔で演出もつけていたと言う気丈で冷静な猿之助さんだが舞踊公演は9月とあって色々言葉がこぼれたようだ。

10月は「天竺徳兵衛新噺」と言っても徳兵衛は出て来ない小平次外伝。妻である悪女おとわとわと小平次を一人二役で早替りで魅せる芝居。

11月は忠臣蔵物。これも猿翁さんが忠臣蔵を1日で見せると言う工夫の忠臣蔵をアレンジしたものらしい。一人が何役も兼ね忙しい早替りを難なくクリアしていくのだろうと想像する。

十二月歌舞伎座に「伊達の十役」を持ってくる猿之助さんの心意気、コロナ禍だからこそ実現させた演目だと言うのは重々承知である。ファンなら誰でも応えたい。しかし、コロナ禍がそれを阻む。猿之助さん自身の考え方はともかく今から12月の感染状況やワクチン接種後の重症患者数、新しい治療薬などまだまだ不透明な事ばかり。
感染は山が出来て収まる、又山が出来て収まる。その都度山が高く(感染者数)なり不安を覚える。この揺り戻し状態はいつ収まるのだろう。

感染対策をしっかりしていれば遠方への旅行は可能なのだろうか。

伊達の十役を猿之助さんが舞台にかけると言うことはファンも試されていると感じるのは私だけでは無いはずだ。
行くべきか行かざるべきかではなく
行けるのか行けないのか、これは私自身との戦いだ。

命がけで演じる猿之助さんに命がけで応える事が出来ない自分がもどかしいがどうぞ12月が落ち着いた世の中になっています様に

#市川猿之助
#伊達の十役
#十二月歌舞伎座

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